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南半球のクロミンククジラと北半球のナミミンククジラ。
生息域がまったく異なる2種のミンククジラの間で雑種
が生まれていたことが最新のDNA分析によって明らか
になった。
どちらも体長11メートル前後にまで達するクロミンク
とナミミンクは、季節回遊する生息海域が重なることは
通常ない。
北半球のナミミンクは春になると北上を始め、夏には
北極氷原の付近にまで達しエサを採る。
そして秋になると赤道付近に南下し、冬を過ごしながら
繁殖する。一方、南半球のクロミンクも春から夏にかけ
ては南極付近で過ごし、秋から冬になると赤道付近まで
移動する。
しかし北半球と南半球は常に季節が反対であるため、
この2種のミンククジラが同時期に赤道付近の海域へ
移動することはない。
したがって接触する機会もないというのが従来の説だった。
ミンククジラは1930年代以降、世界中で乱獲された。
一部の国や地域では現在も捕獲の対象となっている。
ノルウェー
は1993年、それまで一時停止していた商業
捕鯨を再開した直後に、クジラのDNAに関するデータ
ベースを作成した。加工品の生産が合法かどうかを監視
するため、このデータベースを基に捕獲したクジラの
DNA分析を行っていた。
こうした中、大西洋北東部で2007年に捕獲されたクジラ
のDNAを分析したノルウェー 海洋調査研究所の遺伝学者
ケビン・グラバー氏は、遺伝子配列からクロミンクを母親
とする交雑種であることを突き止めた。
さらにグラバー氏は、同僚から興味深い話を耳にする。
それは、15年ほど前に捕鯨船で見慣れないクジラを捕獲
したという専門家の証言だった。「そのクジラは1996年に
北大西洋で捕獲されたが、ナミミンクの特徴である胸ビレ
の白い斑点がなかったそうだ。
同じ交雑種なのではないか」。
そう考えたグラバー氏は、1996年のクジラのDNAを分析
した。
ところが、その個体は何とクロミンクの純血種だった。
当時はまだDNAのデータベースが十分なレベルに達し
ておらず、これまでずっと見落とされていたのだ。
北極に近い海域でクロミンクが捕獲された事実は、同種
がナミミンクの生息海域に移動する場合もあるという強力
な証拠である。
しかも交雑種が発見されたことから、この2種が交配する
ことも明らかになった。
だが遺伝子を巡っては、依然解明されていない疑問も多い。
この交雑種はまったくの偶然から生まれたのか、ミンククジラ
の生態が変化し始めた兆しなのかという問題もその1つである。
結論は出ていないが、グラバー氏の同僚である生物学者ニルス
・オイエン(Nils Oien)氏が興味深い理論を提唱している。
また、南半球のクロミンクの生息数が1980~90年代に
かけて大幅に減少したとする日本 の研究者がいる他、南極
付近の海洋生物にとって格好のエサとなる甲殻類オキアミ
の生息数が同時期に減少したという報告もある。
「オキアミ
などが減少しているとすれば、クジラたちがエサ
を求めて所構わず移動することは十分に考えられる。
途中で北半球の海域に迷い込んでしまう場合もあるだろうし、
中には北極圏にまで到達した個体がいてもおかしくない」
とグラバー氏は話す。
今回の研究結果は、オンラインジャーナル「PLoS ONE」誌
で2010年12月22日に発表された。
Photograph from Oxford Scientific/Photolibrary

