藤堂良は憤っていた。そして心の中で罵倒していた。
ここの生徒も教師も屑ばかり。自らを精錬し、鍛錬し、生き残ろうとする気概を持たない屑ばかり。
それでは駄目だ。負けだ。
今、ここでテロが起きたらどうする?
授業が始まる前の教室。
安穏に過ぎる日々にだって危険分子は存在する。
ニュースに報道されるような気違いが起こす事件の数々。
刃物を学校に持ってきて暴れ回る一種のテロ。
そんな事件はいつだって起こり得る。
今にだって起こり得る。
なのになんだ?
この緊張感の無さ。危機感の無さはなんだ?
興ざめ。興ざめだ。
刺激が無ければ気を張り詰めることもせず、日々をただひたすら漫然と過ごしている生ける屍なんだ。
お前たちは。
誰かが刺激を与えなければ、誰かの行為を受けなければ、行動に移せない衆愚。
愚物。
凡愚。
愚者。
さあ、目覚めさせてあげよう。
藤堂良は立ち上がる。
そして『あいつ』の前に向かう。
教室の後ろの方でくだらないお喋りをし続ける『奴ら』の方に歩み寄る。
ポケットに手を入れる。
黒い柄に抜き身の銀色の刃がついたそれを、右手に持って、あいつと対峙する。
銀色の刃。ナイフ。
きっと『あいつら』もすぐに気付く。
どれほどの愚者であっても察しがつく。
ああ、復讐が始まる、と。
藤堂良はそれをそいつの胸元に突き立てる。
教室内に悲鳴が上がる。
教室中を恐怖が満たす。
刃は、そいつの心臓に潜り込む―――――
―――――かに見えた。
銀色プラスチックの刃は柄の中に引っ込み、微かに突起が触れるだけ。
ギミックナイフ。
――しかしそれでも効果は十分。
藤堂良は言い放つ。
「気をつけろよ。今度は玩具じゃ済まさない」
彼は満足げに、しかし荒々しい態度で、自分の席に着く。
朝のSHRが始まるまでの間、重たい空気が教室中を支配した。
藤堂良は独りごちる。
これで良い。
いつだって革命家は、孤独なのだから。