「ねぇ、相性ってあるよね・・」
吐息混じりに彼女がつぶやく。
エキゾチックな植物と豪華なシャンデリア、
温室のようなガラス張りの店内。
赤いソファーでご満悦の笑みを浮かべている。
<First pair >
Foie Gras
ハンガリー産のフォアグラのモンブラン
×
Louis Roederer Brut Premire N.V
フランス産のシャンパン
少し深みがあるプレートにぽってりと盛られたクリーム。
美しいゴールドのシャンパンは、繊細だけれども輪郭のはっきりとした泡が踊っている。
一番外側に置かれたスプーンに手を伸ばした時、
サービススタッフに優しく制止された。
シンプルな見た目のクリームに薫り高いトリュフをたっぷり降らせる。
「わぁ・・・いい香り・・・」
マロンクリームは仄かに甘く、
中に隠してあったフォアグラは濃厚な秘宝。
こってり舌に絡みついたかと思うと、
中に忍ばせてあったクルトンが軽やかな歯ごたえを演出する楽しい一皿だ。
これがスッキリとしたシャンパンにあう。
彼女に言わせれば
「カーヴィーなレディーがいたずらっ子のような笑顔でクスクス笑うのに
筋肉質な細身、骨格のしっかりしたジェントルマンが寄り添っている感じ。」
<Second Pair>
Pacific Saury
気仙沼産 新サンマのテリーヌ
×
Peter Malberg Kreutles Gruner Veltliner 12
オーストラリア産の白ワイン
お盆のような少しふちのある平らなプレートに
幾何学模様のように盛り付けられたテリーヌ。
ジャガイモとサンマのミルフィーユは、
食べ進むと急にひんやりとした食感。
生のサンマがトッピングされていることに気がつく。
フランス人シェフの遊び心とジャポニズムが垣間見える一皿。
瑞々しい白ワインはのどを通過するころにホワッと花が咲く。
爽やかで軽やかな飲み口だから、一口はたっぷり楽しむ。
日本の庭園のような一皿。水と岩と木のコンビネーション。
「紅いかんざしに、キリッと黒字の着物、銀色の帯の粋な姐さんと
お肌がピチピチ艶々でほっぺたはほんのりピンク色のちょっと年下の旦那って感じね」
彼女は楽しそうだ。
<3rd Pair>
Hair Crab Avocado Oscietra Caviar
北海道産毛蟹とアボカド、イタリア産オシェトラキャビア添え
×
Chene Bleu Rose 16
シェーヌ ブルー ロゼ
月面のような凹凸の丸いプレート上ではファンタジーが広がる。
「本光る竹ひとすぢありけり。」
筒状に整形されたアボカドの上にはキャビアがつややかに光っている。
「怪しがりて寄りて見るに、筒の中ひかりたり。」
すっとナイフを入れてみる。
「それを見れば、三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。」
毛蟹のほぐし身がほろほろと姿を現す。
これに合わせるのはロゼ。
かぐや姫のイメージにぴたりとはまる。
赤と白のいいとこ取り。
わらわはトキ色が好きじゃ。とかいいそうじゃない?
「奇抜で艶やかなドレスを着た勝気なお嬢様と
洒落者で有名、知的な目元、細めの口ひげをはやした男爵」
ってとこかしら。
素敵な夜は始まったばかり。
メインディッシュへつづく♪