Da.Tu.Ra

テーマ:

『今、何してるの?』



愛佳からそんなメッセージが送られて来たのが、二時限目の休み時間の時。

授業中に携帯電話を弄るなって、何回も言っているのに、愛佳は懲りない様で、すぐにそんなメッセージを送って来る。

昼休みに入っても、そのメッセージを未読無視していれば、返事がない事が不満なんだろう。
猛ダッシュで、今私の居る屋上までやって来るのだ。



「あ、やっぱり居たっ!!」



少しだけ頭に響く声。

走って来た分、少しだけ息が切れていた。



「そんなに急いでどうしたの?」

「何で返事くれないの?」

「授業中だよ?」



常識的に考えたって、授業中に来たメッセージに返信をするなんて有り得ない。
でも、それは私の中の常識であって、愛佳の中では常識ではないのだろう。

拗ねた様に片頬を膨らませる愛佳。
その頬を突けば、手を掴まれる。

同時に、いきなり真剣な表情をするものだから、少しばかり驚く。



「え、な、何…?」

「今日、何の日か覚えてる?」

「今日…?」



愛佳の突然の問い掛けに、答えを探していれば、小さなため息が聞こえた。

少しばかり呆れた目で見られる。

ただ、そんな目をされたって、一体何の日かなんて分かったものではないから、どうしようもない。



「今日の放課後、空けといて」

「え、今日は委員会の仕事が……」

「待ってるから。その後、空けといて」

「…分かった」



愛佳は納得したのか、私の手を離すと、そのまま屋上を後にした。




























それから、放課後になって、委員会の仕事も終えて、昇降口へと向かえば、愛佳が下駄箱に寄り掛かっていた。



「愛佳、お待たせ」

「お疲れ様。じゃあ、行こっか」

「うん」



ローファーに履き替えて、愛佳の後を付いて行く事になった。


この時期になると、陽が落ちるのも早くなり、空は群青色に染まっていた。



「由依、ほんとに今日何の日か分からない?」

「うん、分からない…。午後の授業も考えてたんだけど、全然思いつかなくて…」



そう答えれば、愛佳はまた小さくため息を吐いた。

呆れた様子ではいるものの、その目はとても優しかった。


















それからしばらく歩いて辿り着いたのは、愛佳の家だった。



「今、家誰も居ないからさ。遠慮しないで」

「…お邪魔します」



遠慮しないでと言われても、人様の家に来て気を遣わないというのは無理な話だ。


愛佳の部屋に案内されて、適当に寛いでいてと言われたので、とりあえず、愛佳のベッドに寄り掛かる様に座る事にした。

部屋を見回していれば、扉の開く音がしてそちらを向いた矢先、部屋の電気が消えて、暗闇に包まれる。



「え、ま、愛佳…?」

「ん?」

「どうして電気消すの?」

「少しだけだから、我慢して」



淡々と話す愛佳に、少しばかりの苛立ちを覚えてしまった。

訳の分からない質問をして来たかと思えば、人を部屋に呼んでおいて、いきなり電気を消して驚かして来るなんて…。

そんな中聞こえて来たのは、又もやため息。

そのため息に、苛立ちが言葉となって口から溢れてしまった。



「昼休みから何なの…?ため息ばっかりで、全然分からないんだけど…」

「由依って、ほんとに疎いね。色々と…」

「は?意味分からないから」

「十月二十三日。これで分かる?」

「十月二十三……あ、もしかして…」



答えが分かったのと同時に、部屋の電気が点いた。


愛佳は部屋の入り口に立ったまま、優しく微笑んでいた。



「由依、もう一回聞くよ。今日は何の日?」

「…私の、誕生日…?」

「正解」



よく出来ましたと言わんばかりに、愛佳は私の頭を優しく撫でてくれた。

それから、愛佳は後ろ手に持っていた淡い色の包みを私に手渡す。



「え、これ…」

「流石に分かるでしょ?誕生日プレゼント」

「開けてもいい?」

「うん、勿論」



可愛らしいリボンを解いて、包みを広げれば、中には白と黒のボーダーのマフラーが入っていた。



「これから寒くなるし、風邪引いて欲しくないからさ」



小っ恥ずかしそうに視線を逸らしながらも、プレゼントの理由を述べてくれる愛佳に、静かに胸がときめいた。

愛佳は、プレゼントにマフラーを送る理由を知っていての事なのか。
それとも、ただ単に、私の体調面を心配してくれての事なのか。



「ありがとう、愛佳」

「言っとくけど、意味、分かってるから」

「え…?」

「ま、マフラーをプレゼントする意味。分かってるから」



聞いてもいないのに、顔を赤くしながらも話してくれる愛佳が、可愛らしく見えた。



「私は、由依の事が好きなんだ。だから、もしよかったら、私と付き合ってください」



未だに顔は赤いけれど、愛佳の真剣な眼差しに、心が惹かれた。



「私でよければ、お願いします」



小さく頭を下げてみれば、愛佳はパッと顔を上げて、嬉しそうに私を見る。

ところで、これってつまり……。



「ありがとう、由依。これから、由依の事幸せに出来る様に頑張るよっ」



愛佳の笑顔に、微笑みを返してから、一番の疑問をぶつける。



「これって……愛佳も誕生日プレゼントって事でいいの?」

「えっ!?はっ!?」



それから、愛佳が慌てふためいたのは、言うまでもない。








いつも自分の誕生日なんて、どうでもよかった。

忘れている事すらある訳だし。


だから、大袈裟だけれど、今日の誕生日は忘れられない日となった。





柄じゃないけど、今日くらいいいよね?



「愛佳、ありがとう。大好きだよ?」

「ハッピーバースデイ、由依。私も、大好きだよ」