職場の対面にある消防署に、幼稚園児たちが見学に来ていた。
私は仕事用で車に乗り込んだのだが、ちょうどその時、高所作業用消防車のはしごの先についているバスケットに園児一人と消防隊員が乗り込んで、はしごが高く上がり始めた。
はしごはどんどん高く上がっていく。
あまりに高く上がるので、私も車の中から見上げてしまった。
下から子供たちの大歓声が聞こえ、バスケットの中、隊員に抱きかかえられた園児は大いばりで手を振っている。
下にいる子供たちに振っているのだろうが、その高さ故、私に振っているようにも見え、思わず手を振り返してしまった。
バスケットの中にいる子供、園児代表だったんだろうな。
立候補したのかじゃんけんしたのか。中には怖くて辞退する子もいるだろうし。
みんな、今日は家に帰ったら、大興奮して話すんだろうな。
バスケットに乗った子はもちろん。
消防署に行った、訓練を見た、放水を見た、そして友達が高く高く上がったこと、いきいきと話す姿が目に浮かんだ。
それ、家族はちゃんと聞くんだろうか。
スマホに夢中になってスルーしたりしないだろうか。
それよりなにより、私自身、この園児たちのように感動することなんて全然なくなった。
今日だけではない。子供たちは、見ること聞くこと、毎日が感動。
私もそうだった。だけと今は、全然違う。
それもまた、悲哀。
今日を得て 隊員になる 子らもいる
鞠子