生中のおっさん | チョップリン西野恭之介オフィシャルブログ「タバコとアイスコーヒー」Powered by Ameba

生中のおっさん

2年程前の話

単独打ち合わせのためVOLKSに毎日通っていた時

ボロボロの作業着で背中を丸くし、かなり小さな声で「生中」とだけ注文する常連のおっさんがいた

同じ時間、同じ席、同じ注文を繰り返す

既に酔っている感じで頭を垂らし今にもおでこがテーブルにつきそうである

タバコとビールをちびちびちびちびちびちびちびちびちびちび
あてを注文する事はない

独り言をぶつくさぶつくさぶつくさぶつくさぶつくさぶつくさ
高倉健を100回潰したような独特な雰囲気を持つおっさんに僕と小林は興味津々だった

ある日、店が忙しく店員がなかなか注文を聞きに来なかった事があった

テーブルの木目を睨みながら念仏のように生中生中生中生中

まだ店員は来ない

「小林あのおっさんキレそうやで…」

と言った瞬間

ピカチュウよろしく

「ナマチュウー!」
といきなりの雄叫び

VOLKSは静寂に包まれた…
まるで映画セブンでブラピを呼び止めたケビンスペイシーだ

格好いい!この狂気を出せる男は日本にいない!VOLKSではなくハリウッドに行くべきだ!

魅せられた…完全に

慌てて店員が来た時には先程の叫びが嘘かのようにまた小声に戻っていた…悪魔が顔をちらつかせた…僕は常人ではないと判断した

修羅の匂いがする男

元ヤクザ?酒に溺れた日本拳法の達人?土佐闘犬の飼育員?

ん~ただ者ではない

毎日のウォッチングの結果サラダバー前に座る理由がわかった
若い女の子がサラダを入れに来た時答えが出た

また狂気を見せてくれた

おっさんは木目から目の前にある桃尻に目線を移し

ニヤリと含み笑いをし微量の声で

「ェェヶッ、ェェヶッ」

ぐびぐびビールを飲む

「ェェヶッ、ェェヶッ」

ぐびぐび ぐびぐび

こわっ、目こわっ、充血してる
酒のあてはお尻

「ェェヶッ、ェェヶッ」

ぐびぐび

自分が女なら気絶するだろう

常軌を逸脱したおっさん

店員のおばちゃんにあの人の
職業を聞いて更に驚いた

六甲に店を持つガラス細工職人らしい

ガラス細工て……超繊細

修羅の匂いは消え失せた

最近全く見ないあのおっさんは元気にしてるんだろうか


ジョッキグラス1、若尻1