2019年9月23日(月)~ 

 

 

 これから、ここクタイシからメスティアへ移動です。

 

 メスティアはジョージア観光のハイライトと言っても良い場所だそうで、ロシアとの国境に近い大コーカサスの山々に抱かれた標高1,500mの高地にあり、クタイシからはマシュルートカ(ミニバス)で北に4時間ほど行った所にあります。

 

 マシュルートカは午前8時と9時出発の便があるとの事なので早い便で行くことにし、前夜、宿の主人にバスターミナルまで送ってくれるよう頼んでいます。(190円)

 

 ところが、出発の準備を整え、待っていても主人が現れませんのでオーナー家族が住んでいる上の階に行ってドアをノックすると主人が寝ぼけまなこで顔を出し、ソーリー、ソーリーとあやまります。なんでも昨夜、飲みに行って度を超してしまったとか。

 

 こんなアクシデントはありましたが、無事、バスターミナルに着き、チケットを買って車に乗り込み、出発を待ちます。(約1,600円)

 

 車内は満席で、私より遅れて男女のパッカーが来ましたがこの便に乗れないという事で次の便に回されていました。

 

 やがて車は出発し、一路、北を目指します。

 

 しばらく走ると山間部に入り、雪山も見えて来ます。

 

♡途中の休憩場所で。水の色が特徴的なミルキーブルー。

 

 さらに進んで行きますと道路を移動する羊の群れにも出会います。

 

 

 天気も景色も良く、おまけに隣の席は可愛いフランス娘と来ては気分が悪かろうはずがありません。

 

 こうして無事、メスティアに到着です。柔らかな日差しに清涼な空気、四方に雪山を頂き、まるでチロルの町に来たようです。(行った事無いけど)

 

♡町中から雪山が。

 

♡目を南に転じても雪山。

 

 

 

 

 さっそく見当をつけて宿を目指します。

 

♡はるばるご苦労様です。中古車として売却され、巡り巡ってジョージアの山深いこの地までやって来たのだろう。まさか、こんな所で漢字を見るとは思ってもみなかった。ミャンマーなどと同じく日本の文字はステータスとして消さないのだろうか。

 

 坂道を登って行きますと道端に実をつけたリンゴの木があったり、牛や羊の糞が落ちていて思わず踏んづけそうになったりと牧歌的雰囲気を漂わせます。

 

 途中、何度か迷いましたが何とか宿に到着し、さっそく町歩きをしてみます。

 

 歩いていてすぐ目に付くのが、あちこちににょきにょきと建っている石作りのコシキと呼ばれる塔です。

 

 

 

♡この塔がメスティアの景観を特徴付け、ジョージアを紹介する観光パンフレットにもよく使われる。

 

 ここで問題なのですが、この塔は何のために建てられているとお思いですか?

1、お宝などを入れる日本の蔵のようなもの。

 

2、敵の侵入に備える物見やぐら兼防御施設。

 

3、一家団欒、山並みを愛でてのお食事用。

 

 実は答えはこの中に無く、この塔は復讐の塔と呼ばれ、家族の緊急避難タワーなのです。

 

 もちろん、津波などから逃げるのではありません。コーカサスには血の掟と呼ばれるのがあって、家族の誰かが危害を加えられると必ず報復しなければならないそうで、思い当たる家族は枕を高くしておちおち眠れたものではありませんので、こんな物を作ったそうです。(ウソみたいだけど本当に本当)

 

 確かに外敵防衛用にしては、重要拠点に建設しているというのでもなく、各塔が連携している様子もなくて、てんでばらばら、各家に一つと言った感じなのです。(すでに崩れたり、取り壊されているのもある)

 

♡塔の真ん中辺りに設けられた唯一の入口に通じる木製通路を使って逃げ込み、通路は壊して立て籠もる。この写真の塔の通路は残っているが、すでに無くなっている塔もたくさんあった。

 

♡内部の床も木製で、もうだめだ、と思えば床を壊して上へ上へと逃げて行く。塔の上部には日本の城のように下方の敵を見下ろす事が出来るように張り出しが有り、ここから石やら何やらを投げ落とすようになっている。

 

 塔は石板で作られ、卵を混ぜたモルタルが塗られていたそうですが今ではどうやってこの塔を建てたか誰も分からないそうです。

 

 それにしてもご近所さんどうしのケンカにこんな物を作らなければならないとは、どれだけ血の気が多い人達だったのでしょう。(もちろん、今、メスティアに住んでいる人達は穏やかで親切な人ばかり)

 

 また、NHKのBSで「美人谷」という番組を見ていると、ここメスティアから遠く離れた中国、四川省の奥地にもこの塔とよく似た塔が建っていました。この塔も各家にあって敵からの防御のためだと解説していました。風景もメスティアとそっくりでそこに住む人達も同じような気質になるのでしょうか。不思議に思った事です。

 

 

 

 辺りの散策を終え、宿に帰ると宿の主人が自家製の酒を取り出して来て、この宿の改装に来ている人達と一緒にふるまってくれました。

 

 主人はリンゴ酒と言いますが、かなり強い酒で私がウオッカ?と聞くと嬉しそうにうなずきました。

 

 ジョージア版乾杯の掛け声と共に皆、一斉に飲み干しますので私も負けじと流し込みますが、胃の腑がカ~と熱くなります。

 

 私が知っている唯一のロシア語でハラショーと言いますと大喜びしてくれます。この辺りはロシアが近いので英語よりもロシア語の方が通用度は高いようです。

 

 この人達は、現在、トルコのプロサッカーリーグに所属している長友の事は知りませんでしたが、ジョージア出身の元関脇、栃の心は知っていました。

 

 私が栃の心、グッド相撲レスラー、ベリーベリーストロング~、と言ってサムズアップしますとさらに喜んでくれてリンゴ酒をグラスに継ぎ足してくれます。

 

 あまり長居すると大変な事になりそうなので、適当なところで切り上げ、部屋に戻ろうと二階に上がりテラスから見ると、早やメスティアの谷の遠近に家々の明かりが灯り、復讐の塔もライトアップされていて、雪を頂いた山々が夜空に白く浮かび上がっていました。

 

 翌日、この宿のある側とは反対斜面に見えているリフトを使って見晴らしの良い場所に行こうと出発します。

 

 いったん、メスティアの町中に下り、両岸が深くえぐれた流れの速い急流に架かる橋を渡ってから博物館前の道を上がり、リフト乗り場まで行きます。

 

 ここはスキー場で、シーズンになれば大勢の客で賑わうのでしょうが今は数えるくらいしか人はいません。

 

 570円でチケットを買い、リフトの椅子に腰かけて斜面を上がります。振り向けばメスティアの町並みが眼下に広がり、左手には飛行場も見えます。トビリシからプロペラ機が就航していて1時間でここまで来れるそうです。

 

 

 やがてリフトは途中駅に着きましたので降りますと、どうやらリフトの運航はここまでのようで、さらに上にあがるリフトは稼働していないようです。

 

 見ると何人かのハイカーが急斜面を登っています。雪が降ると上級者向けのコースになるのでしょう。

 

 もっと上に行きたい、という思いもありましたが、ここでも十分景色が良いので諦めます。

 

♡スキー場正面に見える荒々しい山容の山。

 

 次の日、今度は十字架の丘と呼ばれる、ここメスティアで最もポピュラーなハイキングコースに行こうとしましたが、両足の状態が相変わらずで途中で情けなくも断念してしまいました。

 

 

♡この写真の山の稜線真ん中辺りに十字架が立っているのでこう呼ばれる。

 

 

♡上の写真を拡大したもの。ちなみに約2時間ほどでここへ登れるそうな。

 

 十字架の丘に登れなかったのは残念でしたが、さらにもう一つ、ウシュグリと言う所に行かなかったのも心残りとなりました。

 

 ここに行くには、メスティアから未舗装の道を片道3時間掛かるそうですが、天空の城ラピュタのシータの故郷「ゴンドアの谷」のモデルとなった美しい場所だそうで、標高2,410mはヨーロッパでは人の住む村として最高地点だそうです。(注 上記のモデル説は都市伝説との異論も有り。ただ、どちらにしてもウシュグリが美しい場所と言うのは間違いなさそう)

 

 しかし、十字架の丘に登ろうとした日の午後から天気が崩れ出し、翌日も終日、冷たい雨が降り続き無念にもあきらめたのでした。