2019年9月13日(金)~ ジョージア トビリシ

 

 何と私はトビリシ市街の中心部で、ハリウッド映画の世界的大ヒットシリーズの最新作ロケ現場に紛れ込んでいたのでした。

 

 お恥ずかしい事に私はこの映画ロケをすっかりインドの、いわゆるボリウッドのものだと今の今まで思い込んでいたのでした。この映画のスタッフに直接、尋ねているにも関わらず・・・。

 

 汗顔の至り、ここに極めりであります。

               2022年5月16日(月)記

 

 それではその経緯を。時間は2019年の9月に遡ります。

 

 今日はまず、宿替えです。

 

 今夜の宿は「Velosipedi Capsule Hostel」でたぶん、トビリシ初のカプセル型宿との事です。ここは、前夜の宿から歩いて3分ほどの所にあり、地下鉄駅やレストラン、銀行や両替所も近くにありながら、路地に少し入った場所なので静かな環境です。ただ、カプセルの作りが華奢で他人の動きが伝わって来る事とトイレ・シャワーが一つしかない事が残念でした。朝食を頼んで一泊1、093円ですが素泊まりだと500円ほどです。(別に朝食は頼むほどのものでもなかった)

 

 荷物を宿に置いてさっそくトビリシ市内を巡ります。

 

 トビリシはトゥクヴァリ川が作った谷間に築かれた町で、その起源は5世紀になるそうです。川を挟んで旧市街と新市街に別れますが高層建築の建物も少なく、どちらにも石畳の路面が見られ、落ち着いた趣のある町で、旧市街には硫黄泉が湧き出し入浴が楽しめます。

 

 私は地下鉄駅に行き、窓口で交通カードに10ラリ(380円)をチャージします。これで地下鉄やバスに一回、2・5ラリで乗り放題です。まず、ふた駅先の街の中心部、自由広場を目指します。

 

♡旧ソ連の地下鉄は核戦争に備えて、核シェルターとしての機能を持たせた、と聞いた事がありますが、やはり深かった。ホームは遥か下。

 

♡ホームでトランペットを吹いて小銭を稼ぐ大道芸人?が。 

 

 最初にトビリシ市街西部のムタツミンダ山(標高727m)に登るケーブルカー駅まで歩いて行き、それで上に行ってみます。

 

 

 

 頂上にはタワーもあったのですが、老朽化のためか立ち入り禁止になっていました。

 

 ひとしきり、景色を眺めた後、下に降りて今度は、トビリシに最初に来た時、見掛けたメヒテ教会目指します。

 

♡この教会は見掛けは地味だが市内を流れる川の切り立った崖の上に建っているので何やら由緒がありそうな教会。もともとこの場所にはイベリア王の要塞と宮殿があった場所で、13世紀のモンゴル来襲後、再建されたものとか。

 

 次にメヒデ教会近くのロープウェイ駅からトビリシ市内を見下ろす山の上にあるナリカラ要塞へ行ってみます。

 

♡ロープウェイ駅前にへんぽんと翻るジョージア国旗。

 

 

♡この要塞の始まりは4世紀のペルシャ時代からで、その後、各時代の支配者によって拡張されてきた。

 

♡ナリカラ要塞跡から見たトビリシ市街。

 

♡遠くにはジョージア最大の教会、ツミンダ・サバメ大聖堂が見える。

 

 私は帰りは遊歩道を歩いて下り、旧市街を抜けて温泉街を見た後、自由広場へと帰ります。

 

♡下から見上げたナリカラ要塞。

 

♡ゴルガサリ広場に面したレストランで。多くの観光客が居た。

 

 

♡温泉施設。この建物の中に浴場が。

 

 私は旧市街の石畳の坂道を、自由広場目指して歩きます。

 

 気になるのは先程から街路樹で姿は見えませんが、ヘリコプターが低く旋回を繰り返している事で、何やら緊張感が伝わって来ます。

 

 そして自由広場に着きました。ところが広場に通じる道路には数多くの警官が配され、交通規制が行われて車輛の通行は禁止のようです。

 

 さらには広場のモニュメント横に、我が陸上自衛隊の軽装甲機動車に似た車輛が辺りの雰囲気に似つかわしくない姿で停車しています。さらにその後方に黒塗りの巨大で異形な車輛が辺りを威圧しています。

 

 いったいこれは何でしょう?まさかクーデターの勃発でしょうか?それともロシア軍の侵攻でしょうか?

 

 ここ自由広場はトビリシ市内の中心にして交通の要衝で、近くには地下鉄駅もあります。私が訝しんでいるとひと際、爆音高くヘリコプターが頭上低く旋回を始めます。

 

 

 私は、今いる所とは反対側の地下鉄駅に行くために広場をぐるっと囲む歩道沿いを歩いていますと、一人の女性が「済みませんが、皆さん、このカフェの中へ入って下さい。すぐ済みますので」と言って誘導されます。

 

 どうやら映画撮影の現場に遭遇したようで、この女性はスタッフのようです。

 

 他の通行人と共に店内に入りますが、どうにも外の様子が気になって店の入り口付近までにじり出て窺っていますと、キューキュルキュルキューとタイヤを軋ませながら車が走って来て広場を一周したかと思うと、その後を装甲車や異形の大型車がゴーと言うエンジン音も高らかに続きます。なかなかの迫力です。

 

 私は、これはこれはと、さらに前に出ようとするとスタッフに押しとどめられます。

 

 それはそうでしょう。莫大な予算を投入して撮影中、緊迫のカーチェイスシーンの画面の一隅に緊張感のかけらもない東洋人の男がチラッとでも映っていたら台無しです。

 

 撮影の合間を見て、私は早く地下鉄駅に行きたい、と女性スタッフに申し出ます。(何故かジョージアの地下鉄駅の出入り口は一か所しかない)

 

 すると、女性スタッフが親切に案内して付いて来てくれます。(それとも、この男を野放しにしておくと勝手に歩き回り、画面に映り込んでピースサインでもしやがると思われたか)

 

 それにしても、なかなか大掛かりな撮影です。広場の周囲にはたくさんのスタッフや警備員、器材が見られます。

 

 私は女性に「これはハリウッド映画の撮影?」と聞きますと、女性は「いいえ、ボリウッドよ」と答えます。(知る人ぞ知る、映画大国インドの撮影だった。映画産業の盛んなボンベイからこう呼ばれる)←お恥ずかしい間違い。私のヒアリング能力の貧困さがうかがい知れる。

 

 それにしても、こうして大々的に海外ロケを敢行するとは大したものです。踊るマハラジャぐらいしか知らなかったのに。

(当たり前である。世界に冠たるハリウッドの超人気シリーズであった)

 

 私はさらに、日本でこの映画を見られる?と女性スタッフに聞きますと、「フィフティー・フィフティーね」との事でした。(五分五分どころか日本でも大ヒットの映画だぞ!)

 

 インド映画史上歴代最高の撮影費を投入し、豪華な出演陣、そして手に汗握るアクションシーン満載、最後は歌と踊りでで締めくくる、今話題の恋あり笑いありの映画「Fast And Fiorius9」は近日公開、乞うご期待!(日本で見れるかは五分五分らしいけど。惹句は私が勝手に考えちゃった)←今考えると赤面の至り。映画の題名はこの女性スタッフがメモに書いてくれたもの。

 

 私は女性と別れる、地下鉄駅まで行きますと、黒山の人だかりです。

 

 見ると、おお!、先程の車輛が道路に待機しています。

 

 私はさっそくカメラを取り出して、近くの警備員に撮影していいか聞いてみますが、ダメとの事でした。しかし、辺りを見回すと多くの人がスマートフォンで撮影していましたので、私も負けじと写すのでした。

 

♡軽装甲車にピックアップトラック改造の車輛。2022年5月に映画をDVDで観ると、確かにこやつ等がトビリシ中心部をぶっ飛ばしていた。

 

♡艶消しブラックの車2台。こやつ等も。

 

♡謎の大型車。核弾頭搭載ミサイル運搬車改造か。こやつ等全てブラック塗装なので絶対、悪党どもの車(たぶん)。←ここだけ私の推測が当たっていた。この巨大車輛は映画ではビーストと呼ばれ重要な役目を果たす。

 

♡何やら昆虫を思わすサンドバギー仕様の撮影車。こうやってカーチェイスを撮影するのか!

 

 撮影した後、見ていると何回か、発進して広場を周っては別の道に入り、また、ここへ戻って来るを繰り返していました。映画の撮影とは本当に手間暇の掛かるものです。

 

 撮影が大掛かりなハズです。この映画は日本でも人気のシリーズ、ワイルドスピード(略してワイスピ)の最新作(2022年時点で)、ジェットブレイク(バン・ディーゼル主演)の撮影だったのですから。

 

 久しぶりにレンタルショップからDVDを借りて来て観ていると映画も終盤、佳境に入った場面でどうも見た事のある・・・、と思っていると見たも何も実際、撮影をこの目で見ていたのでした。残念ながら主演のバン・ディーゼルは居ませんでしたが。また、ひょっとしてどこぞに私が写り込んでいないか目を皿のようにして探しましたが写っていませんでした(私がスタッフに促されて待機していた喫茶店は写っていた)。

 

 こんな何でもないといえば何でもない事ですが、改めて旅行の面白さ(非日常性?)を再確認した事でした。

 

 コロナの流行で自由に海外に行けなくなってこの時から早や2年、徐々に制限も緩やかになって来ています。無性にまた行きたいな、と思う今日この頃であります。

 

※現在地は、再度のトルコ・トラブゾンです。午後には世界8番目の謎と言われるネムルトダーゥへ向けて夜行バスで出発です。