『潮音』2月号の「探照燈」作品より
空一面遮るものは何もなし悠々と見えないものに心を寄せる
*岩崎かほる
伝えつぐあかつきの会の津軽料理昔の出来映え味にほっこり
*齋藤むつ子
留守中の炊事洗濯御手のもの夫はトイレの花まで替へる
後藤真由美
敗戦の夏草のなかに我生まれ御世三代を生き抜きてをり
久能 徹
キリギリス夜の帳が下りる頃今が時ぞといのち懸け鳴く
*森山 正
楽毅論鋼の文字を臨書する光明皇后の一生を思ひつ
畠中幸代
※「鋼」に「はがね」、「一生」に「ひとよ」のルビ
補助輪を外した自転車が走り出す籠から飛び立つ小鳥のように
*岡田晶子
消しゴムを使う度毎丸くなる短歌なかなか出来あがらない
*吉田真一
呆けの皮ちょっと被りて障り無し夕焼空に赤トンボ舞う
*吉野玲子
※「呆」に「ぼ」のルビ
若さとの狭間を思い知らされる三十五歳の健康診断
*長能知香
中秋の名月の日に戻り来よそのままに在る姑の持ち物
岸本きよの
幼き日農繁期には休校なり手伝いをせし二日懐かし
*川上京子
※「作品」は、普通社友の方の作品欄です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は12月号)から、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
*は現代仮名遣い。
(ブログ担当)
