『潮音』7月号の「探照燈」琅玕集(前半)より
雲間より光射したり「すべり台だ!」天からすべれすべれ幼子
木村雅子
陽を吸ひて黒といふ色あたたかし腹の色にはあな例ふるな
藤田久美子
卒業アルバムさへも紙など不要らしスマホ動画に見る三年間
脇坂田鶴子
小正月のお粥を吹くとお田植に風が吹くとふゆつくり食べる
竹内和子
富山にて頂く弁当美味ければ「ふ・ふ・ふ」とふ米もとめ帰りぬ
麦田政枝
「夕飯はつまみの柿の種でいい」君がよければ何も言ふまい
森谷勝子
ふつつかな相手の語彙をなぞりつつ夜の鏡に化粧をおとす
伝田幸子
望蜀の思ひに見れば凜然と浮かぶ富士さへ流るるごとし
堀井美鶴
もう乗らぬはずの自転車春の日に翼をひろげスタンバイしてゐる
菊川佐智子
敗戦後の短き青春尽きるなし 春のうれしさ・青のさびしさ
束村昭子
※「琅玕集」は幹部同人とそれに次ぐ方々の欄です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は5月号)から、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
(ブログ担当)