カラオケ行こ!
予備知識無く勢いで行きましたがとても楽しかったです。やはり予告編など前情報入れないと楽しい。
普段漫画を読まないので、映画から入ってしまいます。
そしてハマれば原作を購入して映画と見比べる、楽しい。
北極百貨店のコンシェルジュさん同様にサクッと読めて完結してる作品はとても好みです。
本作はヤクザが中学生に歌を教えてもらうというコメディ。想像してるテイストと大分違い、繊細な作品でした。
この設定は漫画だからこそ成立するシュールさがあるんだけど、下手に実写したら白ける可能性が高い。誇張した演技やSE、カット割りは大幅に抑えられていて、実写のバランス感で原作をなぞる構成がお見事でした。これだけで十分素晴らしい。
設定から想像してしまうのは、カラオケを通して音楽の知識や上達方法を深掘りする展開。もしくは奇妙な関係でピンチの時に助けてくれるごくせん的な方向。本作はそれらが一切なく、奇妙な関係をファンタジーに落とし込んでいるのが最大の見所なのである。
時には閉鎖的で悩みも尽きない中学時代が舞台で、外的で刺激のある空気に触れてしまう危うさと尊さ、その絶妙なバランスがたまらない。
2人のやりとりはとても軽快で淡々とした面白さがある。雑に例えるとオシャレコント師のツッコミが控えめのほっこり系のネタを見てる気分。
近年関係性萌え作品が増えてきた気がするが、この2人を眺めるだけで楽しいかもしれない。
お互いに悩みや葛藤を吐露せずに、深掘りしないからこそあざとくもない。
傘のくだり、鮭の皮、後輩くんの嫉妬から連なるワンシーンは、それぞれの愛を示していたりと感情表現をシームレスに映していて芸術的。
細かいシーンに色々な配慮が成されているので思いの外、集中力がいるタイプでもあった。
二回目以降も楽しめるかも知れない。
終始スローで目的も明確に見えてこないが、オシャレコント師の様に後半そういうことか!と一気に加速してくバランスになってるので面白い。
そういった意図的な構成好みです。
なかなか発動しないなぁと思う展開が絶妙なタイミングで発動するの良いよね。
実写にする危惧感を抱きながらも配給や製作陣をしっかり固めた上で、考え抜かれたバランスとなっているので当たり実写を引き当てた気持ちよさを覚えました。
綾野剛の好演は言うまでもなく最高。主人公の男の子はオーディションで選ばれた子らしいが、淡々と言い回しと、冷静さと焦りが入り混じる演技が光ってたなぁ。変声期のキワで抜擢されたのも貴重。
変声期に悩む事を多く語らないからこそ、面白い。期待に応えられなかったり、成長に対する違和感に対してモヤっとしてる中学時代を、台詞に頼らず「大人びた女子生徒」「熱量強い後輩」「なんか軽いけど明るい先生」でバックグランドを成立させるのは凄すぎる。映画オリジナルで「表情だけで見せる映画部」を出す事でより一層実写である必要性も見えてきた。
この子が経験した1ページは壊れたビデオのよう。いや、誰もの人生がそうであるかの様に思えました。
それぞれの多くは語らない何となくの居場所で人生は構成されて支えられているという意味で、この映画はとても最高でした。
極力ネタバレしない様に書いたつもりですが、もちろん二人のストーリーも最高。
予告編など見ずに何の曲が歌われて、何の曲で感動するかワクワクして欲しい。
感想はまとまりませんでしたが、とにかく言語化出来ない懐古的な想いが溢れて止まらなかったです。
無事カラオケ上達するか!無事最後の合唱コンクール上手くいくか!を見所として注目するのではなく、卒業や街の移り変わりが結果として何を残すかがキモとなる素晴らしい一本でした。