手術から10年の節目を無事に迎えることができた。
この夏は心電図やら心エコーやらで何かと周囲を騒がせたが、
いまのところ、軟骨肉腫の再発・転移の兆候はなく、
おかげさまで元気に過ごさせてもらっている。
無謀にも決行した世界一周旅行の余韻もそろそろうすまってきたので、
いい加減新しい何かをやらなければと思い、本格的に仕事についてみたりした。
旅雑誌片手に、慌ただしい毎日を送っているが、ありがたいことに
毎日が刺激的でとても楽しい。
ここ最近までは、全く先が見えない状態でやみくもに走ってきた感が否めないが、
いまは少しずつだが、先のことを考えつつ動くこともできるようになったと思う。
少なくとも昔のように、1年先を考えることにすら恐怖を覚えるようなこともなくなった。
これが歳をとったということだろうか。
それともがん患者として生きていくことに”慣れた”だけか。
生きていくことに”慣れる”というのは、こういった病気をしていない人にとっては
全く何を言っているか分からないことかもしれない。
それでいいのだと思う。本来はそうあるべきなんだと思う。
ともかく、私のこの10年は決して単なる「おまけの時間」ではなかったし、
足踏みはしたけれども、人と違う角度から楽しみを探してつかみ取っていく
自信が持てた。
そんな感じの話を、10年前のこの時間、ストレッチャーの上でエビのような格好をして
麻酔注射の恐怖におびえていた自分に、こっそりと教えてあげられたら面白いだろうに。
そういえば、最近、主治医の先生が骨腫瘍関係の本を出した。
私の症例もレントゲン映像つきでがっつりと載っているらしい。
自分の骨の写真が全国の書店に並んでいるというのは恥ずかしいが、
難解といわれる骨腫瘍診断の分野で、ほんの少しでも私の病気が誰かの役に立つのなら、
なんだか救われたような気がしてしまうのも事実である。
