それは、心を通じさせることだ。

話は、そこから、始まる。

 

若いころ、群馬の桐生に一年間住んでいたことがある。

主人が会社を希望退職して、浪人していた一年だ。

彼には、苦渋に満ちた桐生だったが、私は楽しんでいた。

 

古典の講義に通っていた。

月に一回。若い男性が教えてくれていた。

彼は、当時の桐生で注目される存在だった。

 

で、話はそこではない。

古典の講義のとき、私がふと「皇太子(今の天皇)って、セックス、

上手いんですかねえ?」と聞いた。一瞬にして、その場は凍った。

女性が私を含めて、4人くらいだったが、シーンと静まり返った。

緊張しているのがわかった。

が、彼は、落ち着いて、「ご主人さま、そこはお臍(へそ)でございます」って、

答えた。

彼は、私の破天荒なところを好きだったようだ。

 

ことほど左様に、男女とは、セックスなしでも、面白いもので、

そういうことが記憶に残る。

 

たった一年の桐生だったが、印象的な町であり、彼であった。