そのあと、老舗の「ニシダ飴」さんに行く。
懐かしく、話に花が咲く。
60歳になったというので、「もう、お孫さんがいるのかしら?」と聞くと、
「三人とも、まだ、結婚していないのよ」と美しい顔を曇らせる。
私が「結婚はしない方がいいよね」と断言すると、ぱっと、顔を輝かせて。
「結婚して、喧嘩して、家に戻ったりしたら、心配だもの」ふふ。
「しないのがいいよ」と。
ニシダ飴の奥さん、「平谷さんは、前も前向きだったけど、今もそうなのね」と言う。
あのころ、私は若かった。
だが、その気質は変わっていないようだ。
現状がどうであろうと、いい方にいい方に考える。
ああ、結婚しなくて、よかったという風に。
慰めではなく、本当にそう思っているから。
結婚ほど、問題の多い行動様式はないと考えている。
賭けの要素が強すぎる。
相手次第なんて、バカバカしい。
ヘンな男と結婚した日にゃ、目も当てられませんから。
反対もしかり。
すっかり、喜んだニシダ飴さんは、気が緩んだらしく、お互いに手のシミの自慢を
始める。私はこんなにスゴイのよ、私のも見てよ、これよと。
が、彼女がハート型のしみがあることを自慢してときは、可愛いなあと思った。
ニシダ飴さんには、ハート型のべっ甲飴がある。
もちろん、土産に買って帰りました。
ドロップとか、いろいろ、手土産を持たしてもらって、店を出る。
あとは、帰るだけ。
切符の時間を早めて、東京回りで。
