信州しおじり本の寺子屋で、文芸評論家・三浦雅士さんが講演したという

記事を読んだ。

興味深かったので、抜粋します。

 

(中略)こうした状況において、三浦さんは、自身と同じ青森県出身の小説家・

石坂洋次郎が、『若い人』から『女そして男』に至る諸作品で示唆している

家族論に注目し、これを今こそ掘り下げて考えるべきと主張。

「石坂の諸作品は、特にマルクス主義の思想と運動、その支柱でもある

エンゲルスの著作『家族・私有財産・国家の起源』への反証にもなっている。

すなわち、父親の財産を誰が相続するのかが家族において最重要なのではない。

家族の根幹とは〈愛着〉であり、特に母親と自己との関係こそ重大だと示している。

これは、文学でもあまり触れたがらない問題だが、人類の歴史を決定してきたような

要素です」と語った。

さらに三浦さんは、「その愛着の核は、母が”◯◯ちゃん、できたねー、えらいねー”

と言えば、子が”うん、◯◯ちゃん、えらーい”と母と同じような口調で応える、

密接なやりとりと触れ合い。

つまり、母をまねて人間は人間となり、自己を形成されていく仕組みなんです。

だから、人間にとって〈相手の身になること〉が最重要。

これは商業行為はじめ全ての社会的営為の根底にもある」と力説。

こうした主題は、石坂の小説の他に宮﨑駿や山田洋次の映画作品にも通底しているとし、特に若い人はこれらに触れ、熟考・研究してほしいと望んだ。