歴史に埋もれた事件が、映画によって注目されているという文で始まる。
池上彰さんの「これ聞いていいですか」。
100年前の関東大震災の5日後、千葉県福田村で、行商人15人が朝鮮人だと疑われて、幼児や妊婦を含む9人が殺された「福田村事件」。
今は、歴史に埋もれ、政府も否定、また、加害者も被害者も口を閉ざしたことによって、なかったことになっていた事件を映画監督の森達也さんが映画「福田村事件」
にした。
それを読んで。
ふと、大学時代の友人のことを思い出した。
彼女は、一番、親しかったと思う。
結婚式にも招待された。
彼女は、結婚した男性の故郷の山梨の韮崎に住み、彼と一緒に「とんかつ屋」
を開いていた。
一度だけ、主人と諏訪への道すがら、その店に寄ったことがある。
そのあと、付き合いは途絶えていたのだが、弟から、あまり、よくないんだよと
言うので、どうしたのかと思ったら。
韮崎で、近所の人たちから、彼女は朝鮮人だと噂されるようになり、家に引きこもっていると聞いた。
ひょんなことから、聞いていた電話番号に電話すると、「よく、わかったねえ」と
驚いていた。
今は、家とアルバイト先の本屋しか、行かないそうだ。
「一度、会わない?」と聞いたら、「会わない」とひとこと。
彼女は、佐賀の生まれで朝鮮人ではない。日本人だ。
そして、とても、頭の良い人だった。
朝鮮人を差別する日本人。
今、現代もそんなことが起こっていると思うと、やりきれない。
が、それが日本人だ。
彼女と、なんてことはない話をしたいと思うが、それは叶わないだろう。
もう会うことはないだろうから。