毎日新聞の「読書便り」島本理生より
小説家の島本理生さんは、こう書いている。
教室は騒々しくて、教師が大事という「友達」同士の陰口で溢れていた。静かで安全な場所は本の中だけだった。
と学校時代を振り返っている。
そうかあ。
合点がいった。
私の女子美時代の友人で、今は、ご主人の故郷の山梨に暮らしている佐賀の人がいる。彼女は、近所の人から、「朝鮮人だ」と噂され、今は、勤めている本屋と家以外の場所にはどこにも行かない。
本が大好きな友人だ。
彼女は、この世界の喧騒には耐えられなかったのだろう。
私と会うこともない。
今なら、少しは彼女の話が理解できるかもしれないが。
そして、深い話ができるかもしれない。が。
もう会うことはないだろう。
私は、用心しながら、また、この世界で暮らそうと思っている。
人間関係が一番の贅沢であるというのが、若いころからの信念だ。
その人間関係が何度、危ういことになっただろうか。
生きているというのは、私だけではなく、誰にとっても、難儀なことだ。
だが。道に咲く野の花を見つけるように。
美しいものを探すのもまた、楽しいかもしれない。
この世は美しいか、醜いか。
その答えを出すのは、自分自身なのだろうと思う。