モスクワのクレムリンで。

 

ちょうど、三十年前(1990年)の7月、私(池田大作)はモスクワのクレムリンを訪れ、冷戦終結の立役者であるゴルバチョフ・ソ連大統領との最初の会見に臨んだ。

「きょうは、大統領と”けんか”をしに来ました!火花を散らしながら、何でも率直に語り合いましょう。人類のために!」

開口一番、私がこう切り出すと、「私も率直な対話が好きです。本当に、昔からの友人同士のような気がします」とあの快活な笑顔で応じてくれた。

以来十度に及ぶ語らいで”二十一世紀に待ち構えている最大の危機”として論じあったテーマこそ、「分断」であった。

「まるで中世のペストのように目に見えず蔓延し、ところかまわず猛威を振るう分断」をどう克服していくのか。

ゴルバチョフ氏は、「私たちは『結合』のちからを探し出さなければなりません」と力説された。

私たいの対話の結論の一つは、「楽観主義」の力であった。

いかなる視線も必ず乗り越えてみせるとの信念、人間の精神的な力への無条件の信頼、人類の未来への確信ーここに分断を越え、世界の民衆を結合せしむる力が脈打っている。

 

聖教新聞2020.7.7随筆「人間革命」光あれ 池田大作

より抜粋しました