アースバッグとは、土嚢袋のことです。
現在チョルモイツアーズは、学生団体にょんにょん様のご協力のもと、このアースバッグ製法で図書館を建設中です。
2014年には、このアースバッグ建設で保育園を建てました。
そこで今日は、アースバッグ製法と絡めながら、カンボジアの学校建設について話していこうと思います。
一般的に、カンボジアで学校建設を行う場合、教育省や群などの行政機関と話し合いを行い、建設場所を決めることになります。
もっとも一般的な建設方法は、レンガを使った建設になりますが、たまに木材を使用した学校もあります。ただ、現在のカンボジアでは、木材の値段が高騰しており、学校に限らず、家を作る時もレンガを使うことが多くなっています。
では、レンガを使って学校建設を行った場合、どのくらい時間がかかり、どのくらいのお金がかかるのかなどを考えていきます。
(三教室の小学校を想定)
▪️建設期間
平均的には、三教室を作るのに約2ヶ月半から3ヶ月半ほどの期間が必要になります。
大工の熟練度、建設に参加するボランティアの数にもよります。
▪️費用
これまでは、備品なども含め、1教室あたり100万円ほどが相場となっていました。
しかし、ここ1,2年の円安の影響で、1教室100万円での建設はなかなか難しい状態です。
3年ちょっと前だと、10,000円が125ドルになっていました。つまり、1,000,000円=12,500ドルでしたが、
2016年1月現在ですと、10,000円が80ドル、1,000,000円=8,000ドル
実に4,500ドルも違うのです。
・2012年 3,000,000円=37,500ドル
・2016年 3,000,000円=24,000ドル
13,500ドルも違うのです。
「300万円を予定していましたが、円安のため、、、、」という団体を多く見かけるのはそのためです。
そこで、我々が注目しているのが、アースバッグ製法です。
元は中東やアフリカなどの難民キャンプで用いられてきたこのアースバッグ製法
我々は、カンボジアで活動している、NGO SEED OF SMILEさんからこの製法を教えていただき、
2014年に、アースバッグハウス1号と、保育園を建設いたしました。
ではなぜこのアースバッグ製法が注目されているか、を考えていきます。
▪️誰でもできる
アースバッグ製法の最も注目するべき点は、その建設の容易さにあります。
本来、建設というのは、大工さんにお願いして作ってもらい、ボランティアの人はサブに徹するものですが、アースバッグ建設の場合、特に専門的な知識は必要なく、誰でも建設ができるというのがポイントです。
土嚢袋に土を詰め、並べ、叩く、この作業の繰り返しです。並べる際の注意点などはありますが、決して難しいものではなく、レンガ建設とは違い、支柱や梁なども必要ありません。
▪️涼しい
アースバッグ製法に使う土嚢袋は、横幅が約40センチほどあります。
幅が10センチほどのレンガとは違い、40センチの土嚢袋をさらにモルタルで覆うため、建物の中がとても涼しくなります。
▪️頑丈
アースバッグ建設で最も心配されるのが、安全面。
「土嚢袋積み上げていくだけ?危なくない?」という意見はよく聞きます。
しかし、アースバッグ建設に参加したことがある方ならわかると思いますが、アースバッグで作った建物を壊すのは非常に難しいです。
先に述べたとおり、レンガで作った10センチの壁より、40センチもある土嚢袋で作った壁を壊すことの方がよっぽど難しいのはわかると思います。
そして、一つの土嚢袋は、20キロ~40キロほどの重さになります。
その土嚢袋が20段以上積み上がった壁を壊すのは、どんな怪力の人でも不可能でしょう。
(ちなみにカンボジアは地震はありません)
▪️費用は?
良いことだらけのアースバッグ製法ですが、費用はどのくらいかかるのでしょうか。
これを大きく左右するのが、ボランティアの人数です。
一般的な学校建設では、どんなにボランティアの人が多くても、大工さんがやっている仕事を代わりに行うことは技術的に無理なので、費用面でのメリットはありません。
しかしながら、専門的な経験や知識のいらないアースバッグ製法では、ボランティアの人が多ければ多いほど、建設がスムーズに進み、人件費を抑える事ができます。
アースバッグハウスは大工さん無しで、ボランティアのみで作ったため、人件費は0でした。
資材は、土嚢袋、土、セメント、砂がメインですので、梁や支柱を必要とするレンガ建設に比べると若干安くなりますが、基礎工事を行った場合、プラス1000ドルほどが想定されます。
(難民キャンプなどでは、基礎工事なしで建設を行っているパターンも見受けられます。簡易の住居などでしたら、基礎工事なしでも問題ないかと思います)
人件費は1平方メートルあたり、40ドル前後が相場なので、現在建設進行中の図書館の大きさ(10m×5m)ですと、2000ドルほどが人件費でかかります。
(カンボジアは2014年ごろから、様々な分野で人件費がひきあげられていっています。プノンペンで賃金引き上げのデモがおこったり、法律の改正があったりなど、少しずつですが上昇しつつあります。)
人件費を抑える事は、カンボジア人の雇用には繋がりませんが、カンボジア人のための建物を建てる、という点で考えると、とても大事な事かと思います。
▪️アースバッグ製法での学校建設
今まで、技術的、安全面の問題などがら、力を持て余していたボランティアの人々が、もっと建設に参加できる仕組みのアースバッグ製法は、今後きっと注目されていくはずです。
仮に、20人の日本人ボランティアが集まれば、
屋根や壁のモルタル塗りなどは大工に任せるとしても、
3教室の学校を200万円以内で作る事も可能だと思います。
全てはボランティアの人数次第。
まだアースバッグ製法での公立学校は認可されておらず(まだ誰もやった事がありません)、この製法が認められるようになるまでまだ時間がかかると思いますが、たくさんの可能性を秘めた製法だと思います。
あきら