伊シエナ大学の医学生がエラスムス（留学生派遣制度）を利用し、パレスチナ自治区・ガサに留学したドキュメンタリー。

映画は、'20～'21年に撮影されたけれど

撮影された建物や病院が爆撃を受けて全壊

他国の侵略により平和な生活が壊され、
住んでいた人たちが出国する中
故郷の平和な暮らしを取り戻す為、ガザに踏みとどまろうとするパレスチナ人の心境を、
イタリア人留学生リッカルドの目を通して追う。

予告編はこちら、あらすじいってみる。

伊シエナ大学の医学生リッカルド・コラティーニは、ガサ・イスラム大学の医学部に留学。
イタリアから飛行機に乗るまではよかったが

ハマス側の検問で待たされること3時間(汗）。
空港に昼前に付いて、入国は日が落ちる寸前。

ガサを実質上支配する集団・ハマスは、外国人入国に眉をひそめている。
留学生のリッカルドとて例外ではなく、ハマス側の検問と逆の検問からガサに入国する羽目になった。
入国で一悶着あり、くたびれ顔のリッカルド。

入国後、リッカルドは年配の女性コーディネーターのメーリと合い、バスで移動。
学生寮と、ルームメイトを紹介して貰った。

リッカルドのルームメイトは、弁護士のアダム。
おおよそ弁護士に見えない風貌だが、ガサから出て国際弁護士として活躍するのを夢見ている。

学生寮は、漆喰の壁に最低限のものがあるが、

1日10時間の停電は日常茶飯事。

家族への連絡は、電気が通じる僅か30分の間に部屋のwifiを使うので、通じてるかどうか不明。
ガサに来て3日で電気が通じるのはありがたいと思える様になってしまった。

リッカルドは、医学部部長アフマドに案内され、共に学ぶ特別外科の医学生を紹介された。
将来世界に出て働きたいと興味深々に話しかけてきた医学生がサイード。
その日から、リッカルドはサイードと友人になった。

何もかもが母国イタリアと違うガサで、頭をフル回転させて覚えるリッカルド。
医学生としての研修内容だけでなく、文化、紛争、全てが彼にとって卒論の対象だった。

夕暮れ時、国境に向かって人々が唸りをあげ行進するのを見たリッカルドに対し、アダムは『帰還の行進』だと答える。

70年以上もの間、パレスチナ人は、イスラエルに奪われた土地の権利を求め、国境まで行進する。
子どもを抱えて行進する親もいる。
丸腰のままイスラエルの攻撃に晒されるから、脚を切り落とされたり、胸を撃ち抜かれ死ぬものも。
金曜は帰還の行進の犠牲者が街の救急外来を埋め尽くすというのだ。

昼間は美しい海が目の前に広がり、市場では生鮮食品が売っているスーパーやレストランが軒を連ねるガザ市内。
昼間だけ切り取れば、日常の風景は変わらない。

しかし医療現場に入ると、イスラエル軍の犠牲になった何の罪もない若者が目の前にいる。
今日リッカルドが研修の為、健診した男の子は爆撃で片足を失っていた。

自分は、この仕事に向いているのだろうか、自問自答し続けるリッカルドに対し、サイードは医療機関に勤める人ほど強い人はいないよと励ますが、リッカルドは落ち込むばかり。

卒論のテーマは、外傷治療におけるガサ地区と西側諸国の違いだが、ガザのあまりの凄ましさに、リッカルドは言葉がでなかった。

リッカルドが悩んでいる間に、ガザ地区では空爆が激しくなり、外国人は一旦ベツレヘムに退去させられてしまった。
ベツレヘムでは、アラビア語のニュースばかり流れてきて、ガサのリアルな話は、全く伝わってこない。

リッカルドが、ベツレヘムに避難して数週間後、サーディから連絡が入った。

空爆はあったが、自分たちが住んでいる所は爆撃は免れたから無事だという。
リッカルドはガザに戻り、サーディ、アダム、医学生のシャーバンらと再会を喜び、食事をした。

パレスチナより遠い所に住んでいる友人は君だけだ

再会したサーディに喜ばれ、リッカルドも外科医になったらガサに行きたいと約束する。

サーディらパレスチナ人からみれば、イタリアは憧れの国。

ガザは種子島ほどの面積の国土に人口200万人。
人口密度は世界で最も多い部類に入る上、人口は年3%増えている。

外国に確実に脱出できるパスポートを得るのは、宝くじに当たるより難しい

そういうサーディは、恋愛自由なリッカルドとは意見が合わない。
職場恋愛は自由じゃないかというリッカルドに対し、職場で恋だなんて、そんな事で君との友情を壊したくないよ、話はやめようというサーディ。

…サーディと恋愛論でモメた直後、リッカルドは外国ジャーナリストのコーディネーターを目指す女性ジュマーナと出逢う。
これがまた、非の打ちどころのない美人。

ジュマーナの紹介でリッカルドは救急病院の手術室に入ることができた。
その日は、帰還の行進の前日。
リッカルドが病院に配属された翌日、帰還の行進で負傷したパレスチナ人が次々と運ばれてきた。

大人だけでなく、子供も、老人も。
リッカルドは、心を無にして目の前にいる患者の手当をしていくしかなかった。

リッカルドにとって、あっという間の留学期間、3カ月が過ぎようとしていた。
母国イタリアをこれだけ長く離れたことはない。
不思議とガザが居心地がいいというリッカルド。
別れの晩餐を済ませ、翌日昼の便で起つ…

という時に

自分たちが住んでいた学生寮の近くで空爆が始まるのです。

スマホで連絡うけたリッカルド、あろうが事に、学生寮に戻ってしまう。
爆撃受けたら死ぬかもしれないのに。

このドキュメンタリー、スペインの映画会社が撮影してるんすが、カメラマンもリッカルドに同行して戻る…んですよ、どうなってんだと。

夜中の11時に空爆が始まるのに、弁護士のアダムは、落ち着かないと言って電気をつけて床掃除始めるし
建物だけ残った場合考えて、窓ガラス外して、壁固めて、シェルターに逃げろと、逃げる面々。

翌朝、爆撃されたのは、学生寮の三軒先の建物で、学生寮の面々は生き延びています。

爆撃で、がらくただらけになった学生寮で、スピーカーから音楽流して踊りだす、リッカルドたち。

何やってんだと言われたら、余計なお世話だと言ってやる

彼らには哀しむ暇もない、前に進むしかない

爆撃が終わり、ガザを後にするリッカルドの後ろ姿を捉え、映画は終わります。

エンディングテロップで、その後の出演者の消息が描かれます。

リッカルドの卒論のテーマは、留学前と違い、空爆が与える影響に変わっていました。

サイードは、優秀な成績でガザ・イスラム大学を卒業。
教育助手として働いているそうです。

アダムは、奨学金を得て、パスポートを得ましたが、ガザを出られず、国際弁護士として自治区で奮闘中。

ジュマーナは、外国ジャーナリストのコーディネーターとして活躍する中、アダムやリッカルドの友人シャーバンと結婚。

撮影の舞台となった病院も、'23年10月の民族浄化の空爆でなくなったのだそうです。

遠い国の話じゃん、カンケーねーしqqで、済ませるのは簡単、かもしれません。

でも『カンケーねーじゃん』で済ませたツケって、何等かの形で回ってくる、と思うんですよね。

ガサに留学した医学生（Erasmus in GAZA '21年）

ガサに留学した医学生（Erasmus in　GAZA '21年）