それは高2の2学期が始まったばかりの、9月始めのこと。右の下腹、ちょうど盲腸があるあたりに何となく違和感をおぼえ始め、翌日になっても、決して七転八倒するほどの激しい痛みではないものの、けっこう気になる程度の鈍痛になっていた。場所的には間違いなく盲腸だと思うのだが、実際に盲腸炎になった人の話ではその痛みは僕が感じてるようなこんなものではないみたいだし…、ともかくもまずは近所の内科に行き、血液検査をしてもらうと、白血球がかなり増えているという。これはからだのどこかに炎症ができてる証拠なのだそうな──これでますます盲腸炎の疑いは濃厚となる。すぐに、父親の知り合いの放射線科医師から外科を紹介され観てもらうと、何と即手術、入院というではないか…、おいおい、そんな重症だったんかい!? そんな心の準備全然できてないぞ、こっちは── ともあれ、ホントに突然僕は手術台に乗ることになってしまった──最初に腰に局部麻酔を打たれ、次第に下半身の感覚がなくなっていくが、局部麻酔なので意識ははっきりとある。なので頭が完全に起きてる状態で僕の盲腸手術は始まったのだが…、カーテンとかで腹からこっちを仕切ってくれるとかされなかったので、何と自分の手術の過程の一部始終をとくとこの目で観察するハメになってしまったのである── まずメスが僕の右下腹に当てられて約5センチ程度切開される。その傷口にいくつもハサミ状の器具が引っかけられて傷口を大きく広げられる。そして、医師を始め助手の人たちが手際よく腹の中を探ったりガーゼで止血したりを繰り返す。やがて医師が僕の盲腸、虫垂部分をピンセットで引っ張り出して僕に指し示し「ほら、これがあんたの盲腸じゃ。赤う腫れとろう? もいどくけえのぉ」と言いながらメスで切除。そのあと引っ張り出した僕の腸を腹の中にしまい込んだ後、引っかけられたハサミ状の器具をはずしながら1箇所1箇所縫合…、それらの間、局部麻酔が効いてる僕は何の痛みも感じないまま、まるで自分の身体でないような感覚で観てたのであるが。時間にするとせいぜい20分かそこらだったのだろうけど、僕には何時間にも思えた“初めての手術体験・実況ライブ版”がこうして無事終了したのだった── この病院、先生は割と年齢が若めではあったが病院としての歴史は古いらしく、被爆前から原爆ドームのすぐ近くのその場所で開業しており、原爆資料館の写真にも被爆直後の姿を残している、ある意味国際的に有名な病院である。実は中1の時の同級生が、やはりこの病院で盲腸の手術を受けているのだが、彼の方は相当な重症で一度はもう手遅れだと言われながら、この先生のおかげで一命を取り留めている。だからウデは確かなのだろうが…、しかしいくら単なる盲腸の手術とはいえ、手術中の患者にその手術過程をライブで観せるというのは果たしてどうだったのかな? という気が今となってはしないでもない──もっとも当の僕自身は当時も今も「珍しいものを見させてもらったな」って感じでむしろラッキーと受け止めてたりするのですが(^^;)。皆さんは、自分の腹が切開されるとこって、観てみたいですか? |