幼子のような
無防備な寝顔を見つめながら
半刻前までの妖艶なウンスを
思い出していた
 
 
白く
輝く肌は
やわらかく
そして
あたたかい
 
 
艶やかな唇から
漏れた吐息は
ヨンを夢中にさせ
 
 
乱れた髪から広がる
ウンスの甘い香りに
ヨンは酔いしれた
 
 
ヨンに揺らされ
熱く
締めつけながら
喘ぐウンスは
恐ろしいほど
美しく
ヨンを魅了した
 
 
汗ばんで
吸いつく肌
甘く自分を呼び
縋りつくウンス
 
 
啼きながら
肢体を絡め
滑らかな曲線は
弧を描いて弾んだ
 
 
ウンスの中に
俺がいる
ウンスの情痴は
俺が与えた
その事実が
ヨンを昂めた
 
 
駄目だ 
溺れてしまう
もう 
この方なしでは生きられぬ
 
 
もしも再び
この方を失うことあらば
 
 
俺は狂ってしまうだろう
いや
死んだほうが楽やもしれぬ
 
 
どこまでも俺の心を捉えて
離さないウンス
 
四年前のあの夜も
 
 
 
***
 
 
 
キチョルに拐われたウンスを
追いかけ 救い出し
 
解毒が成功したと聞き
ようやく 安堵して
 
もう
これで離れなくてよい
ずっと側で生きていける
 
 
 


喜び 高揚し
病みあがりのウンスに甘え
夜明けを前に
妻にした
 
強引に迫った訳ではないが
今思えば
かなり無茶を強いたもんだ
 
俺は浮かれていた
冷静じゃなかった
 
そんな心の隙を
天門は見逃さなかった
 
やっと
この手に掴んだ希望を
最悪の状況で
あっさり奪われた
 
 
 
***
 
 
 
もうあの日と同じ轍は踏まない
大切だからこそ
無しでは生きていけぬからこそ
目を離さぬ
手を離さぬ
必ずや守りぬく
今度こそ
 
常に敵の先を読み
たとえそれが身内でも
たとえそれが主君でも
必ずや守りぬく
 
俺の女人
俺だけの天女
 
ぐっすり眠る
ウンスの体を清めた後
その腕に囲い込んで
額に口づけ
ヨンは目を閉じた
 
 
 
***
 
 
 

眩しさに目覚めると

すでに陽は高くなっていた
 
 
はぁ〜 
よく寝た
こんなに熟睡できたの
久しぶりだわ〜
 
 
寝返りをうって
伸びをしようとしたが
体が動かない
 
 
しかも
背中が温かい
 
 
項にあたる 生温い風
 
 
首の下から出た太い腕は
胸を包み込み
腰から回された腕は
腹をがっちりホールドしている
 
 
そして
 
 
何も身につけていない
自分の肩が見えた
 
 
ひゃあーーーーーっ!!
 
 
声にならない悲鳴をあげて
一瞬パニクった
 
 
昨日の
あれやこれやの記憶が
一気に甦る
 
 
理解できれば
一応
大人の対応ができる程度に
落ち着いたウンス
 
 
深呼吸すると
とりあえず
掛布を引き上げ
肩を隠して
恐る恐る
後ろを振り返った
 
 
 


ひゃあーーーーーっ!!!
 
 
今度は
あまりのヨンの甘い笑顔に
身悶えながら
心の中で絶叫をあげた
 
 
なんなの なんなの やだ
もう 逆に怖いんですけど
 
あれっ
もしかして夢?
これ 夢オチ?!
 
自分の願望が見せた夢にしたって
これは甘過ぎよ
欲張りすぎよ ウンス!
 
 
ぎゅっと目を閉じて
もう一度思い切り目を開け
パンパンと頬を叩いた
 
 
「何をするんです!」
 
 
腹をホールドしていた腕が外れ
頬を叩いた手を取られた
 
 
ぎゃーーーーーっ!!!!
 
 
本物よ!
やっぱり本物だわ!!
生チェ・ヨン!!
 
じゃあ
さっきの
甘々とろとろスマイルも本物??
 
 
嘘でしょーーーーーっ?!
 
 
あんな恐ろしい武器を
隠し持ってたなんて
反則だわ!
 
はは〜ん わかった!
 
夢じゃなくて
死んだのね私
 
天門を潜り過ぎて
きっと死んだんだわ!
 
ここは極楽浄土よ!!
 
さすが極楽よね〜!
早速 
こんなご褒美が待ってるんだから
 
たとえ死んでたって
結果オーライよ
 
これで輪廻転生の順番も
気持ちよく待てるわ ウンス!
 
 
あまりの照れ臭さに
一人で現実逃避しながら
百面相しているウンスの様子を
背中から覗き込んで見ていたヨンは
思わず吹き出した
 
 
「ぷっ くっくっくっ
 
 さっきから
 どうしたのですか?
 イムジャ」
 
 
この甘々のバックハグが
間違いなく現実だと
しぶしぶ認めたウンスは
 
 
恥ずかしさと
バツの悪さを必死に隠して 
顎をつんとあげ
 
 
「おはよう ヨンァ
 
 えーっと 
 着替えたいんだけど
 私の服はどこにいったのかしら?」
 
 
精一杯の虚勢をはって
話しかけた
 
 
「こちらに」
 
 
ヨンが指差した寝台の横の椅子には
ウンスの服が
きちんと畳んで揃えてあった
 
 
NOーーーーーっ!!!!!
 
 
何度目かの脳内絶叫をし
慌てて下着をつけ始めた
 
 
それにしたって
彼氏に服も下着も畳んでもらう女ってどうよ
 
 
「ゆるりと休めましたか?」
 
 
「えっ? ええ
 百年前の寝具と比べれば
 極楽だったわ!」
 
 
「それはようございました」
 
 
「貴方はいつ起きたの?
 まさか寝てないの?」
 
 
「イムジャの寝顔を見ておりました
 本当に戻ってきてくださったのだと
 それだけで癒され 
 疲れもとれました」
 
 
もう!
ほんとになんなの?!
 
あの無口で 
いつも仏頂面の
チェ・ヨンはどこ行ったのよ?
 
キャラ全然違うし!
甘いこと
さらっと言っちゃうし!
 
もしかして
ピロートークか
これ ピロートークなのか!?
 
そういえば
昨夜はいつ眠ったんだっけ??
 
昨夜はヨンと
あーして
こーして
あーなって
 
あー  
そーだそーだ!
あそこで
ヨンが超セクシーになって
私も
うっかり気持ちよすぎてって…
 
 
いやーーーーーっ!!!!!!
 
 
ウンスは
顔から火が出た
脳内絶叫だけで
喉が渇れる思いだ
 
 
「イムジャ
 体は大丈夫ですか?
 腹は空きませんか?
 もう昼餉時になりますが」
 
 
「私は大丈夫だから
 貴方食べてきていいわよ」


  

 
その間に身支度しなきゃ
 
目ヤニはついてないでしょうね
ヨダレ垂らした顔とか
見られてたら最悪
その時は
夢オチの方がまだましだわ!
 
 
「イムジャが要らぬなら
 某も結構です
 昼餉よりも
 イムジャがよい
 
 体に障りないのなら 
 今一度
 手合わせ願えますか?」
 
 
あ〜お腹空いた!
 起きる! 起きます!
 今 起きるって…
 
 あれ?
 待って やだ 
 脚に力が入んない
 ちょっとヨンァ 
 何とかして!」
 
 
ヨンはまたも吹き出した
その笑顔は
常より随分若く見えた
 
 
 
***