☆気象さんBL小説です。ご注意ください。












「 F 」11





S×O











智side










暖炉の前で翔くんと2人で座っていた。












翔くんの顔が火に照らされて

オレンジ色になっていた。










どんな暖色灯にも叶わない

ゆらゆら揺れる火の暖かさが

翔くんとおいらをつつんでる。
















翔くんはいつになく優しい目をしてる。











「しょおくん...」






横から話しかけても

後ろから話しかけても

翔くんは黙って火をみつめてる。















「しょおくんってば!」














急に不安になって

大きな声を出した。













ちょっと大きすぎたかなって。


翔くん振り返ったら

驚かせてごめんって、

そう言おうと思ったのに...












翔くんは動かなくて...















翔くん、こっちむいてよ?

翔くん、怒ってるの?










翔くん、おいら....








おいらここにいるよ....








ねぇ






翔くん...








"バフっ"















振り向いて欲しくて



抱きついた背中.....



ふふっ



大きくて...あったかい...















でも抱きついたその瞬間...

火は消えて...

真っ暗になって

何も見えなくなったんだ...
















怖かった...
















でも...飛びついた背中は暖かかった...








真っ暗でもオレンジ色だってわかった。












翔くんの香り...







翔くん...


翔くん...


翔くん...

















おいらはいちばん年上。

だけど誇れるものなんて何もなくて。

兄さんじゃないのに、

みんなに兄さん、兄さんって呼ばれることが

ちょっと重荷になってた。
















でも翔くんは








さとやんって

さとしくんって

呼んでくれた














それをきくたびに

あぁしっかりしなくていいんだって

甘えていいんだって、肩の力が抜けた気がした。
















唯一、おいらがおいらでいられる

最高の場所だった。












そんな翔くんの口からたまに兄さんってきくと

翔くんの役に立ててるんじゃないかって

勝手に少しだけだけど、胸をはれた。












この暖かさに

すくわれてたんだ....
















翔くん...


そこにいるはずなのに遠くって

とたんに寂しくなった。























おいらは翔くんが好きなのに。


もっと近づきたいのに。


でも、本気で好きって言ったら

この関係も崩れてしまいそうな気がして

怖い...














怖いけど











自分にそんな勇気はないから

ありえないことだって

心のどこかで思ってる。














どうしたらいいの?










泣かない。










そう思ってるのに

涙がはりつめて盛り上がってきた












悲しくなんかないのに。







大好きなのに。










「さとしくん?」






暖かくて大きな背中を通して


懐かしい翔くんの声がした。











「翔くん...どこ?」








ダムが決壊したかのように

目に押し当てた拳の下から

大粒の涙が溢れてきた。









「しょおくん....」



どこまでも長い暗闇の中で

翔くんを呼んだ。










頬に暖かさを感じたと同時に









大好きな人の焦った顔が

視界に広がった






やっと....


やっと逢えた




ふふふ

嬉しい