2019年












世の中では、タピオカブームが起こり、消費税が10%になり、TT兄弟が流行し、PayPayが浸透、京都アニメーション放火事件が発生し、ジャニー喜多川社長が死去、平成が終了し、令和がスタートした。
















2019年、47歳の時、
















世界ピン芸人協会大賞で優勝し、世界の頂点に立った。
















 

しかし僕は、2019年初めぐらいから、ライブの出演本数を減らしていた。

 














以前までは月に10〜20本ぐらい出演していたのだが、月2、3本にしていたのだった。

 















それには理由があった。













 

2010年ぐらいから漫談をやり始め、色んなパターンの漫談を試していた。

 













最初の方は、まん☆だん太郎になって、ただライブでネタを出来るだけで幸せだった。













 

漫談を色々試行錯誤して考えて、少しずつウケるようになっていくのが楽しかった。

 













その中で自分の中でやりやすく、それなりにウケるパターンの漫談をメインにするようになった。

 













しかし、まだ何か爆発力や個性が足りないと感じていたし、もっとウケる漫談を作りたかった。

 













そんな中、徐々にR1という賞レースで勝ち上がって結果を出したいという気持ちが強くなって行った。

 











新しい事務所にも入ったが辞めてしまい、過去の炎上の事もあり、賞レースで結果を出すぐらいしか自分が何かを成し得るきっかけはないだろうと思っていた。












 

そこからより一層、メインでやっている漫談だけではなく、それと同時に自分なりの何かすごい発見というか発明のパッケージの漫談やネタを模索していた。












というのも、芸人がネタで世に出るには、いくつかのパターンがある。













代表的な2つの1つ目は、賞レースで優勝するか、爪痕を残す事だ。












賞レースで優勝という事を考えれば、知名度や人気のある芸人と戦っても勝ち切れるだけの圧倒的にウケるネタが2本必要だ。












そしてそのネタが、今まで見た事のないようなシステムのネタであれば尚良い。












では今の自分に誰と戦っても勝ち切れる圧倒的にウケるネタがあるかと言えば、ない。












そして、芸人が世に出るパターンの代表的な2つ目として、賞レース以外のネタ番組、例えばおもしろ荘とかあらびき団とかガキ使の山1とかに出て爪痕を残す事だ。













やす子とか夢屋まさるとかブルゾンちえみとかのパターンだ。













そういう番組のオーディションに受かって爪痕を残すには、圧倒的にウケるというよりかは、今まで見た事ないシステムとかパッケージのネタやキャラクターでインパクトを残す方が重要視される。














では自分にそういうネタがあるのかと言えば、ない。













じゃあ、そのどっちか作ればいいじゃん?と思うかもしれないが、そんな簡単に作れるものではないのだ。













一般の人はテレビでそういう芸人を観ているだけだから分からないと思うが、そういうネタが思いついて、テレビに出ていける芸人は、ほんの一握りの芸人なのだ。















99%以上の芸人が、一生そういうネタを作れずに終わって行く。











プロ野球選手全員が、大谷翔平のように活躍したいと思っているが、出来ないのと同じだ。













でも、そういうネタを作ろうと日々もがいているのだ。











そして僕もずっともがいていた。











でも出来ない。











じゃあ圧倒的にウケるネタや、インパクトあるパッケージのネタが思い浮かぶまで、新ネタ作りません!











なんて事は出来ない。










月に10-20本もライブに出ているし、それが思いつくまで新ネタ作らないなら、ずっと過去のネタばかりをする事になる。












お客さんも飽きるだろうし、あの人ずっと同じネタじゃん!となってしまう。











そしてなんとなく芸人の中では、最低でも月に1本は新ネタを作るというのが暗黙のルールみたいになっている部分がある。












それはだいたい事務所ライブが月1であるから、それに合わせて最低1本作るからだ。












だから結局圧倒的なネタや、インパクトあるネタが思いつかなくても、何かしら新ネタを作らないといけないから、自分ではこの程度の強さではダメだとか、インパクトないと分かりつつも、それなりにウケるであろうネタを妥協して毎月作っているというのが、芸人の現状なのだ。












だが、そうやってそれなりにウケるネタを毎月毎月何十本作っても、売れないのだ。











もちろんそれなりにウケるネタが沢山あるのは悪い事ではない。












持ちネタが多ければ、いずれネタ番組に何度も出演する事になった時にネタが枯渇せずに済むし、色んなライブに出演する時もネタに困らないし、色んな場面で必要な時がある。











だが、それなりにウケるネタ、インパクトのないパッケージのネタが100本あろうが売れないのだ。











それなりにウケるネタが1本しかなくても、圧倒的なネタが2本あるか、インパクトのあるパッケージのネタが1本あれば、売れる可能性がグンと上がるのだ。











それが現実なのだ。




 









でもなかなかそれは努力して思いつく物でもないし、難しい課題だった。









 

でも考えるしかない。













毎月毎月新ネタを作り続ける事によって、突然変異的に爆発的なネタが生まれるんじゃないかと信じてやるしかなかった。














僕はライブに出ながら、ウケたりスベッたりを繰り返し、試行錯誤していた。









 

だが、ある日、









 


「このままだとヤバいかもしれない」








 


と思った。










 

生活の為に日々のバイトに追われ、そんな中でネタを考え、ライブに沢山出て、

 










そうやってここ数年活動してきたが、全然ズバ抜けた何かを考えつかなかった。

 









結局ネタを量産したり新ネタをかなりの頻度で卸すというサイクルに必死で追いつくようにネタを考えていた事で、頭が凝り固まってしまって、無意識のうちにある程度ライブでウケそうなネタのパターンを覚えてて、それに似た感じのネタを作ってしまう脳みそになっていたのだ。

 











パッケージは違っても、何と言うか、想定の範囲内のネタというか、意外性のないネタというか、そういうネタになってしまっていたのだ。

 











そんな想定の範囲内のようなネタとか、それなりにライブでウケるようなネタをこのままずっと作り続けていいのか??

 










と思うようになった。











このままこれを続けているといつまで経っても圧倒的なネタやインパクトあるネタは作れないぞ?










 

それでいいのか?と思うようになった。

 










このままでは賞レースでも勝ち上がれないし、他の番組にも引っかからない。











何かもっと意外性のある、今の自分の想像の範疇を超えるネタを作る為には、この今の状況を変えないといけないと思った。

 









今のこのバイトとライブと新ネタに追われる毎日だと変えられないと思ったのだ。

 









幸い僕はフリーで、事務所に入ってないのだから、絶対に毎月新ネタを作らないといけない訳ではない。











だから僕は、一旦ライブを大幅に減らして、ネタも作らず、自分の頭の中を空っぽにして、固定概念とか凝り固まった脳みそを一旦真っさらにする時間が必要だと思った。

 


















毎月1年間新ネタ12本それなりにウケるネタを作ってどうなる?










2年で24本それなりにウケるネタのストックが出来たとして何か人生が変わるのか?













いやー、僕持ちネタ100本あるんですよー!













とか言っても自慢にもならないし、売れる訳ではない。











もしそれで満足していたらそこまでの芸人になってしまう。













それでは人生変わらない。












だったらその12本や24本や36本を捨てて、その1年や2年や3年で圧倒的な1本や、インパクトある1本を見つける事に賭けた方がいいと思った。













だが、そう思ったが、なかなか行動に移せないままライブに沢山出続ける日々が続いた。

 










なぜなら、売れてない芸人の固定概念というか、風潮があるからだ。

 










自分が急にライブにあまり出なくなったりしたら、

 











「まんさんは最近さぼってる」

とか、












「まんさんは芸人辞めるのかな?」

とか、

 











周りの人に思われるからだ。

 











売れてない芸人というのは、

 











「ライブに沢山出ていると、がんばってる人」


「新ネタを沢山作ってる人は、がんばってる人」


「ライブにあまり出てない芸人はがんばってない人」


「新ネタ作ってない人はがんばってない人」

 











と判断されてしまいがちなのだ。

 











もちろん本当にそれが当ってる場合もある。

 












だが、僕みたいに戦略的にそうしたとしても、周りはそんな風に思ってくれない。













まあもちろん多少サボりたい気持ちもあるのは確かだが(笑)

 











僕は周りの評価を気にしないようで気にするタイプだ(笑)

 











そんな風に思われたくないのだ(笑)

 











今まで僕はどちらかと言えば、ライブも沢山出て、新ネタも結構な頻度で作ってて、まんさんって偉いね!と思われていた方だと思うから、余計に悩んだ。(←自分で言うな(笑))











偉いと思われてたいし、褒められたいのだ(笑)












だからなかなか行動に移せなかった。

 










それだけではない、もし、行動に移したとしても、必ず凄いネタを思いつけるとは限らないからだ(笑)

いや、思いつかない可能性の方が断然高い。

 











だからすごく勇気のいる行動だった。





 







20代とかじゃなくて、この年齢でこれをやるというのは、かなりの賭けでもある。









でも、今やらないと、これからもっと歳を取ったら、余計に頭が凝り固まって、ネタも全然思いつかなくなるかもしれない。












そうなる前に行動に移さないといけないのだ。








 





ある意味年齢的にラストチャンスかもしれない。















その時47歳。















この10年が最後の勝負になる。















だったら凝り固まった頭のままコンスタントにそれなりのネタを10年量産するより、突然変異的な1本を考える賭けに出よう!
















そう思った。
















だが、このままじゃダメだと思って、1度頭を空っぽにしようと思ってライブ出なくなって、

 










その結果、結局何も思いつかなかったという事も全然あり得る。(←さっきも書いた)

 















むしろその可能性の方が高い。

 















そんな凄いネタなんて早々思いつく物ではない。

 















そうなったら、

 













「あの人何でライブ出てなかったの(笑)??」

 















となってしまう。

 














だから、わざわざ周りの芸人やお客さんに、

 

















「いや〜、凄いネタを思いつく為に一旦ライブ減らすんですよ〜!」

 















なんて誰にも言わなかった(笑)

 
















そんな宣言をわざわざするのもおかしいし。

 















そんな真面目な話をライブで言っても面白くないし、尺も長いし、誰も理解してくれないだろうし、ハードルも上がってしまう。

 
















思いつかなかったらそれはそれで、「ずっとゲームしてました!」とか言って笑いにすればいい。














それに、僕は芸人なのに、頑張ってるアピールをするのが嫌いというのもある(笑)

















最近は賞レースの影響もあり、芸人が平気で一生懸命頑張ってる感じとか努力してる感じをテレビや表に出している。











本当にアスリートみたいになっているのだ。















全然そういう芸人を悪いとは思わないが、自分はあまりやりたくない(笑)














古い人間だからなのかもしれないが、自分の中では、芸人はお客さんとかには分からない所で、陰で努力したり頑張ったりするもので、それを表に出したり、自分で頑張ってるって言っちゃうのは、カッコ悪いなと思ってしまう。














なるべくなら、頑張ってる事は隠して、

「ネタなんて全然作ってません!」

「ライブに出てないのもサボりたいからです!」

とか言って、














あいつはどうしようもない奴だなー!と思われてなんぼだと思っているし、それが芸人としてカッコいいと思っている(笑)(←今回は自伝だからこういう事も書いている)

















学生時代にテスト前、「オレ、全然勉強してないよー」とか言ってたのに、良い点取って、実はめちゃくちゃ勉強してた奴っていたと思うが、僕はそういうタイプだ(笑)














やっててもやってないと言うし、本当にやってなくてもやってないと言う(笑)


















だから彼女以外には言わずに僕は勇気を持ってライブを減らす事にした。










 





 

絶対にとんでもないネタを思いついて驚かせてやる!!!

 















そう思った。









 






そしてそのとんでもないネタで世に出て、






 











いや〜実はあの時そういう一大決心をしてライブ減らしてたんですよ〜!とか言って、(←言うんかいっ(笑)!)

 

















そうなんですね??全然知らなかったですー!まさかそんな事考えてたんですね!まんさんすごいですねー!!

 














なんて言われたりして、














 

という未来を想像していた(笑)











 





これは、一大決心だったが、










 

実はライブに全然出なくなるというのはこれが初めてではなかった。











 

東京に出て来てフリーでコンビで活動していた時も、










 

ライブにも全然出てない時期があった。

 











コンビからグループになって演劇みたいな事をしていた時期も、ネタも何も考えずにバイトばかりしていた時期があった。

 










スパルタ教育になってシアターD辞めた後単独ライブメインにしていた時も、全然何も考えてない時期もあったし、ライブにも出てない時期はあった。

 











だから別に僕にとっては不思議な事ではない

 










そして、ライブに出てないからと言って、ネタを考えてないからと言って、芸人じゃないのかと言えばそんな事もない

 











僕はライブに全然出てない時期だろうがネタを作ってない時期だろうがずっと芸人だ。











以前も書いたが、ミュージジャンや小説家や漫画家が、新作を何ヶ月も何年も出さなかったとしても、ライブに出てなくても、その間はミュージジャンじゃないのか?小説家じゃないのか?














そんな事はないし、新作出してないからあいつはミュージジャンじゃない!とか小説家じゃない!とか言う人はいない。

 











なのになぜ芸人だけ、新ネタ作らなかったり、ライブに出なかったら芸人じゃない!と言われないといけないのか?










僕はそれはおかしいと思っていた。










だからライブ出なくても新ネタ作らなくても僕が芸人なのは変わらないと思っていた。











精神の問題なのだ。













だから別に今までと何も変わらない。

 










 

という事で、











 

僕はライブも減らし、一旦ネタも考えず、色んな物を吸収しようと思った。

 











僕は今まで時間がなくて観れなかったテレビやドラマや映画やアニメ、漫画を観まくった。

 











AmazonプライムやネットフリックスやYouTube、色々観た。

 









ゲームもした。











 

彼女とも遊びまくった。











 

何も考えずゴロゴロもした。

 










何かが降りてくるのを待った。

 









きっと、

 










きっと、

 











起死回生の、










 

何かとんでもないネタが降りて来る!!!!!

 

 









来い!!









来い!!










街裏ぴんくを超えるようなすごいパッケージのネタが!!漫談が!!!

 

 










漫談じゃなくても!!!!

 

 










何かとんでもないコントが!!!

 

 










コントとも言えない、

 











 

初めて観るような訳のわからない笑いのパッケージが!!!!

 

 










生れ落ちる!!!!

 

 










そして僕は、

 

 









そのネタを引っさげて、

 

 









一気にスターダムにのし上がり、

 

 









奇跡の人生大逆転劇を見せる!!!!!

 

 









やっぱりあの時休んでよかったな!!!!

 

 










ライブ減らしてよかった!!!!

 

 









あの判断は間違ってなかったな!!!

 

 









そう思える日が来る!!!

 

 










と思っていた

 

 

 

 

 









が、

 

 

 

 

 














全然何も思いつかなかったのだった(笑)

 

 

 

 

 

 


そんな2019年夢屋まさるが、「パンケーキ食べたい」でブレイクした。

 





そういうネタを思いつきたかったのにー!!!