それは突然起こった。







僕は朝から普通にバイトをしていた。









そして、お昼休憩の時にふと携帯電話を見たら、着信とメールが何十件もあった。









留守番電話も何件か入っていた。








???








どういう事だ??








最初は何が起こっているのか全く分からなかった。









メールや留守電の内容は、とにかく怒っている。








それも、僕のネタに対してだ。








僕は急いで色々調べたら、僕のネタがネットで炎上していたのだった。







シアターDを辞めた後、僕はスパルタ教育HPを作成した。







そこにプロフィールや、今後の予定等の情報を載せ、そしてグッズ販売もしていた。








そして、僕のライブに普段来て下さっているお客さんや、来れないお客さんが観れるように、自分のネタの動画をYouTubeにアップして、それをHPにリンクさせていた。








ポップなネタもヤバいネタもである。









その当時はまだ今程YouTubeも広まっていなくて、しかもSNSもなかった。








もちろんライブ配信等もなかったので、お客さんにいつでも観てもらえるようにするには、そうするのがいいのかなという気持ちでアップしていた。







それと、このネタ動画がネットで広まり、2ちゃんねらーなどで話題になり、批判もあるだろうが、熱狂的なファンを獲得し、集客を増やすきっかけになればいいなと思っていた。









だが、HPを作成してから約2年、何もなかった。









しかし、誰かがたまたま僕のネタのYouTubeに辿り着いて、








「これは不謹慎なネタだ!!!」








「拡散したれ!!!」








と思って、有名掲示板に貼付けたのだ。










するとそれがどんどん拡散して行って、不特定多数の目に止まり、大炎上したのである。








僕の思惑はハズれた。







あれ???








おかしいな??









ネットで話題になって、逆に熱狂的なファンが増える予定だったのにな??









思った以上に批判が多いぞ???








待って待って待って!!!








こんなはずじゃない!!








タンマタンマ!!!








なしなし!!








あのネタなし!!








見たの忘れて(笑)!!








その時は、過激なネタが好きそうなネット民よりも、より普通の一般人の目に多くとまった。








あんなネタを普通の一般の不特定多数の人が観たら、そりゃ怒るだろと思った。









動画のコメント欄にも、有名掲示板でもボロクソ書かれていた。








それだけではなく、僕はHPに自分の携帯電話番号、メールアドレスを載せていた。








ライブのチケット予約や、グッズ販売の時の連絡の為だった。







なので、そこに沢山の電話がかかってきていたし、メールも来ていたのだった。







今でこそ、芸能人が炎上したとかいうのがポピュラーになっているけど、その当時はまだ炎上というのもたまにしか目にする事はなかった。









それが突然自分の身に起こったのである。








コメントには死ねとか殺すとか沢山書かれていた。








メールにも殺害予告が沢山来た。















留守電にも脅迫やイタズラ電話が沢山入っていた。








もちろん擁護するコメントも沢山あったし、応援や励ましのメールや電話も沢山来ていた。








だが、とにかくヤバいと思った。









僕はバイト終わりに急いでYouTubeの動画を削除したが、すぐにどこかの誰かが別のアカウントで僕の動画をアップしていた。









もう手遅れだった。









携帯電話の番号もアドレスもすぐに変更した。









予定されていた単独ライブも中止する事になった。








多分大丈夫だろうけど、これがきっかけでライブのスタッフの身に危害が及んでしまったら責任取れないし、親御さんに顔向け出来ないと思った。








もちろん自分が怖かったというのもあった。









そしてHPに謝罪文を掲載し、無期限活動自粛をした。








街を歩いていても全員が僕の炎上の事を知っていて、僕の事を狙っているんじゃないかと思うようになった。








でも実際はそんな事はない。








炎上したとはいえ、全国民のうちのほんの一握りの人しか知らないのだ。








でも、実際自分の身にそういう事が起こると、全員が敵みたいに思ってしまうほど、追いつめられるのだ。







ネットで炎上したり、誹謗中傷でタレントや芸能人が自殺したりするニュースがよくあるが、そうなる気持ちがよく分かる。









元相方にも相談しに行ったら笑っていた。








僕は家に帰るのも怖かった。







元相方の家に泊めてもらった。








実家の父親ビリーにも連絡をした。








もしかしたら実家にも危害が及ぶ可能性もあるからだ。








ちゃんと事情を話した。








お天気コーナー乱入事件で電話をしたばかりなのに、今度は炎上の電話だ。








しかも不謹慎なネタで。








自分の息子がそんなヤバいネタをやっているなんてきっと知らなかっただろう。








とりあえず今の家から引っ越しをした方がいいと言われ、すぐに引っ越しをする事になった。








そして引っ越し代もまた出してもらった。








情けない話だ。







母親マチルダにも電話して事情を説明したら怒られた。








他にも、僕がまだシアターDに所属していると思っている人達が、苦情の電話をシアターDに掛けまくっているという話が耳に入って来た。







迷惑を掛けないように事務所を辞めたのに、こんな形で事務所に迷惑を掛ける事になるなんて。。









僕は急いで社長に電話をして謝った。









突然事務所を辞めて、迷惑を掛けたこんな僕なのに、全然怒られなかった。







本当に申し訳なかった。








僕は今まで芸人を辞めようと思った事がなかった。









でも、この時初めてそれが頭をよぎった。








もう表舞台に出ない方がいいのではないだろうか?








1度ネットで拡散されてしまった物は、今後一生付きまとう。








もし今後炎上が収まって、僕がまともなネタで売れたとしても、きっとこの過去の炎上したネタが蒸し返されて、再び炎上し、テレビに出れなくなるだろう。







自分の面白いと思った事、お客さんをただ笑わせたいと思ってやった事でこんな事になるなんて。







僕が見て来たたけしさんや爆笑問題さんは不謹慎なネタをやっていた。







それを見て僕は、ライブでは不謹慎ネタだろうがなんだろうが、笑わせればいいんだと学んだし共感した。






所詮はお笑いで、所詮はネタなのだ。






そして、劇場とテレビでネタも使い分けて売れている。






自分も使い分けてやっていけばいいと思っていた。







だが、僕は炎上し、不謹慎ネタを劇場でやる事も全否定された。







その場にいるお客さんが笑っていたとしてもだ。






それを否定するという事は、たけしさんも爆笑問題さんがやってきた事も否定する事になる。







今回僕を否定して来た人達は、たけしさんや爆笑問題さんにも同じ事を言えるのだろうか?






彼らは売れているからいいという事なら、売れているか売れていないかで対応を変えるのはそれこそ差別ではないのだろうか?








僕は悔しかった。








たけしさんや爆笑問題さんも否定されているみたいな気持ちになった。








もちろんネタのクオリティや実力が全然違うのは分かっている。







その炎上したネタも、今思えばそんなに面白いとは思わない。







だが、そもそもお金を払って観に来てくれているお客さんを笑わす為にやって、お客さんも笑っているし、それで成立しているのに、お金も払ってなくて、拡散された動画をタダで見てる人に文句を言う権利があるのだろうか??







不快に感じた人もいるかもしれないが、それと同時に、僕のネタを見て笑って幸せな気持ちになっている人も沢山いる。







今回不快に思った人が炎上させた事によって、僕のHPからネタ動画は観れなくなり、単独ライブも中止に追い込まれた。








僕の動画や単独ライブを楽しみにしていた人達から楽しみを奪っているのだ。







自分が不快だからと言って炎上させて、楽しみにしていた人達から楽しみを奪っていいのだろうか?





僕のネタを見て不快に感じたと正義感を振りかざしている人によって、僕のネタを楽しみにしていた人達の事を不快にさせている事には気づいていないのだろうか?







僕のネタを面白いと思って笑ってくれている人にとっては、僕が正義なのだ。





そして炎上させている人の方が悪なのだ。






そういう色んな感情、悔しさと腹立たしさと怒り、申し訳なさが入り交じっていた。






だが、それ以上に恐怖と失望が上回っていた。








全員が敵に見えてしまう恐怖。








そして、僕が信じて憧れていた芸人達から学び共感した事を吸収し、僕はお客さんを笑わす為に、必死にがんばってきた。







なのにそれを全否定された世の中に対する失望もあった。






さっきも書いたが、炎上したネタは自分ではそんなに面白いとは思わない。






だが、確実に不謹慎ネタやブラックなネタが好きなお客さんや視聴者は一定数存在する。







僕もその1人だ。







だが、そういう笑いがどんどん許容されなくなっていっている現実への失望。








表現の自由とはいったい何なのだろうか?








ていうか、所詮ただのお笑い芸人のネタだ。







たかがお笑い芸人が言う事をそんなに真面目に聞いて間に受けて怒ってどうするのだ??






たけしさんもよくそう言っていたが、その気持ちがよく分かる。









つまんない世の中だ。








20歳で東京に出て来てお笑い芸人を目指した時のあのキラキラした世界はもうなくなっていた。








そんなお笑い界でもまだ本当にお笑いをやりたいのだろうか?







まだテレビに出たいのだろうか?








まだ続けたいのだろうか?







正直だるい。










でも、普通の仕事なんて僕は出来る人間ではないというのは分かっている。







ただただフリーターとしてバイトをして一生行きて行くしかないのだろうか?






そして1人の視聴者、客として、自分の好きな笑い、芸人を観て楽しむしかないのだろうか?






それとも裏方として作家とか、ライターとか、漫画家とかそういう事で何か笑いを表現したり携わっていくしかないのだろうか?







でもそういう仕事もそんな簡単に出来るものではないだろうし。






どうしたらいいか分からなかった。







このままのたれ死んで行くのだろうか。。。?







いったい僕は何しに東京に来たのだろう。。。?








答えは出なかった。








芸人仲間や友達に相談した。







すると、







「スパさん売れましたね(笑)!!!やったじゃないですか!謝る必要ないですよ!このままやっちゃいましょう!」

と言われた(笑)










そう言ってくれる芸人がほとんどだった。







そう、今回の事は、芸人はもちろん、ミュージシャン、映画、漫画、演劇、色んな事を表現している活動をしている者にとって重要な問題なのだ。









表現者が自由に表現をする自由を奪われているのだから。







きっと僕も、自分じゃなくて、仲の良い芸人が炎上してたら、同じ事を言っていたと思う。








「そのまま今まで通りやり続けましょうよ!!!」

と言っているだろう。








そのままやり続ければ、テレビは出れないだろうけど、炎上した事によって知名度も上がるし、それをネタにも出来るし、こういう不謹慎ネタが好きなお客さんも増えて、集客アップするかもしれない。







もしかしたらそういう動画ばかりをアップしていたら、ユーチューバーとして生活出来ていたのかもしれないし、鳥肌実さんのように、単独ライブだけで食べていけていたかもしれない。








でも、いざ自分の身に起こったら、それは出来なかった。








ただただ怖かったのだ(笑)









僕は、怖いのはイヤだ(笑)









そうなのだ、僕は情けない人間なのだ(笑)









ヤバい芸風の大先輩で活躍されている、鳥肌実さんや、GO!ヒロミ'44さんみたいにはなれないのだ。









多分そういう芸人さん達は、ちゃんとポリシーがあって、炎上しようが殺害予告が来ようがヤバい芸風を貫いてやるという確固たる意志があるのだと思う。








でも僕には全くないのだ(笑)









ヤバいネタだけでずっとやって行こうなんてさらさら思ってなかった。








ただウケるからやっていただけなのだ(笑)








その時面白いと思って作ったネタがたまたまウケて、ウケたからそのネタを量産した。







それがたまたまヤバいネタだった。








ただそれだけなのだ。









だからこそシアターDに入った後、すぐにポップなネタをするようになった。








それはポップなネタの方がそこのお客さんにウケるからだ。








僕は、ただ、自分が面白いと思ったネタで、ウケたい。







それだけなのだ。







炎上して殺害予告まで来て、そんな怖い思いまでして不謹慎なネタをやりたくないのである(笑)








僕は平和主義なのだ。








楽しく芸人生活を送りたいし、楽しくライブに出たいし、毎日ビクビクして生活するなんてイヤなのだ。








だから怒られたらすぐに謝るのだ(笑)








そして、こんなに炎上してしまうようなネタはもうやりたくない(笑)







もしかしたらスパルタ教育という芸人を応援してくれていたお客さんとか芸人の中には、ガッカリした人もいるかもしれない。








どこがスパルタ教育やねん(笑)!








と思ってるかもしれない。









スパルタ教育を貫いて、ヤバいネタをやり続けてほしいと思っていた人もいるかもしれない。








でも、それが僕なのだ。









スパルタ教育は、かっこよくないのだ。








スパルタ教育は、ダサいのだ(笑)









それがスパルタ教育なのだ。









怒る人の気持ちも分かる。






そりゃ怒る。







僕個人としては、あの動画を観て不愉快な思いをしてしまったり傷ついた人達には本当に申し訳なかったなとも思っている。








僕は人に嫌われたくない人間なのだ。







だから普段僕は、わざわざ人に嫌われるような事をしない。






今回のネタも、ライブに来ているお客さんを笑わせる為、喜ばせる為のネタなのだ。






だから、あのネタを拡散して不特定多数の人に見せる人も僕は悪いと思っている。






僕のあのネタは、そういう不謹慎なネタが好きなお客さんを笑わせる為のネタなのだから。







そういうネタを観たいお客さんがわざわざお金を払ってくれて、そして僕がネタをして笑わせる。








それで成立しているのだ。







ストリップ劇場とかAVとか深夜番組と同じなのだ。








こっそりとそれを観たい人が来て観るものなのだ。









それを不特定多数に観せたらそれは怒るだろう。








まあ、最初にYouTubeにアップしてしまった自分にも問題はあるが。









ただ、この炎上で、不謹慎ネタをやるという事そのものを否定する意見が多かったのだが、そこに関しては色々と思う事があった。







僕はもうやらないにしても、これからもそういうネタをやり続けて行く芸人は沢山いるし、芸人だけじゃなく、漫画や映画や演劇や色んな表現でそういう笑いの表現をする人もいるだろう。








そういう人達の表現の自由との戦いは続いて行くんだろうなと思った。









もちろん否定する意見が多いのは当たり前だと思う。








でも、お笑いというのは色んなジャンルがあるのだ。








万人ウケするネタもあれば、ダジャレもあれば、誰も傷つけない笑いもあれば、下ネタもあれば、不謹慎なネタもある。








人それぞれに面白いと思うネタは違うし、好みも違う。








もちろん万人ウケのネタなんて嫌いで、不謹慎なネタが好きという人もいるのだ。







お笑いだけに限らず、映画やドラマ、小説、マンガ、演劇、落語、音楽、色んな表現方法がある中で、その中でも万人ウケの物もあれば不謹慎な内容だったりエログロな内容、マニアックな物もある。







いわゆるサブカルチャーと言われる部類だ。








その人の趣味趣向によって好みが違うのだ。








その、個人個人の趣味趣向を否定していいのだろうか?









その人が好きで楽しんでいるのならそれを否定してはいけないのではないだろうか?








自分の趣味と違うのなら、その人は観なければいいだけなのだ。







「サザエさん」のような平和なアニメが好きな人ばかりではない。








「漫☆画太郎」のマンガのようにすぐに人が死にまくるマンガが好きな人もいるのだ。








人の趣味趣向、しかも普通に比べたらきっとファンが少ない、そんな少数派のジャンルを否定していいのだろうか?









それが実は1番の弱いものイジメなのではないだろうか?







まさに弱者イジメではないだろうか?







少数派、マイノリティを迫害しているのではないだろうか?








多様性の時代多様性の時代とここ最近言われているけど、まさにこれはお笑いの多様性を否定されているのではないのだろうか?







なぜお笑いの多様性は認められないのか?








多様性を認める社会にするのなら、笑いの多様性も認めるべきじゃないのだろうか?







自分では理解出来ないお笑いだからと言って、否定していいのだろうか?








お互いがお互いの好きな趣味嗜好を尊重するべきなのではなだろうか?







それも多様性じゃないのだろうか?








僕の不謹慎なネタを観て、ただただ、否定していいのだろうか?








そのネタをお金を払って観に来てくれているお客さんも否定する事になる。








そのお客さんに失礼ではないだろうか?








果たしてそれは多様性のある社会と言えるのだろうか?








僕はそこが問題だと思った。








あと、誤解している人も多いのだが、僕が弱者イジメネタしかやってないと思っている人がいるが、それは違う。







僕は面白いと思ったネタ、ウケるネタなら何でもしてきた。







政治ネタ宗教ネタ皇室ネタ差別ネタ下ネタポップなネタ、色んなネタ。







今回炎上したのはその中の1つである。








なので、強者に対するネタもやっていたし、弱者に対するネタもやっていた。








ある意味平等なので、ある意味差別をしていないのだ。







「このネタはやっちゃダメだ!」と言う事こそ差別ではないのだろうか?







そして、弱者ネタや差別ネタをやっているからと言って、普段から弱者イジメをしていると勘違いしている人もいるが、そんな事はない。








あくまでネタはネタなのだ。







しかもフィクションだ。







それは来てるお客さんも分かっている。








僕は世の中が平和になればいいと思っているし、差別のない世の中になればいいと思っている。









時々笑いとか冗談ではなく、ガチで差別的な事を言っている人とかがいると、引く(笑)









まあ頭がおかしい部分やイタイ部分もあるとは思うが、自分で言うのもなんだが、僕が普段優しくて常識人なのは周りの芸人も友達も知っている(笑)








だから、ネタが不謹慎だからと言って、その人が普段もそういう人間なんだと判断するのは、余りにも短絡的過ぎる。











あくまでもヤバい事を言うキャラクターを演じているのだ。










たけしさんが昔不謹慎なネタをやっていた時、すごいバッシングを受けていたが、今はどうだろう?








たけしさんは理想の上司1位とかになっているし、良いイメージを持っている人が多いと思う。








まさかあんなネタをやっていた人が本当は優しくて常識人だなんてその時は思っていなかったのだろう。








それだけ人というのは見た目や芸風で短絡的に人を判断し過ぎているのだ。









上辺だけで人をバッシングしたり炎上させたりする前に、もう少しその人の事を考える事も必要だと思う。








安易にバッシングや誹謗中傷して炎上をさせたり叩いている人間のコメントや発言の方がよっぽど不謹慎だったり差別的だったりする事も多い。









果たしてどっちがまともな人間なのだろうか?








そして、お客さんも、そのネタで笑っているからと言って、差別主義者だという訳ではない。








ネタとして、お笑いとしてたしなんでいるのだ。








やたらと誹謗中傷する人間よりもよっぽど理性的で常識的な人間だ。








ネタをそのまま真に受けて怒られると、お笑いなんて成立しないのだ。








非常識な事を言うのがボケで、それを訂正するのがつっこみである。








なので、非常識な事だとちゃんと理解しているからこそ出来るネタなのだ。







ビートたけしさんのネタで、







「ノーモア広島!ワンモア長崎!」








というネタがある。






めちゃくちゃ不謹慎だ。







でもみんな笑っていたし、僕も面白いと思う。








だからと言って、本当にたけしさんがもう一度長崎に原爆を落としてほしいと思ってるのだろうか?








そんな訳はないし、お客さんもそんな事は望んでいない。








たけしさんが不謹慎な事を言うボケだと理解しているのだ。








そして、みんなお笑いとしてたしなんでいるから笑うのだ。







もちろん真に受けて怒ってる人もいるだろう。








そういう不謹慎なネタを許容出来る社会というのが、実は平和で健全な差別のない社会なのではないだろうか?







そもそも人間という生き物には、不謹慎な事で笑ってしまうという本質がある。







皆さんも1度はそういう事で笑ったり笑わせたりした事があると思う。








たけしさんのネタもそういう本質を突いたネタが多い。







芸人というのは、お客さんを笑わすのが仕事だ。







どんな手を使っても笑わすのだ。








笑わせ方は芸人の自由だ。







ダジャレで笑わす人もいればものまねで笑わす人もいれば下ネタで笑わす人もいる。







人間が不謹慎な事で笑うという本質があるのなら、その本質を突いて笑わすのも1つの芸なのだ。








そういう事で人間が笑わないのなら僕達芸人もそういうネタはやらないだろう。








でも、笑うのだ。








笑うのだから笑わせる、それだけだ。








でもそういうネタはダメだと否定するのなら、笑ってしまう人間の本質そのものを否定する事になる。








人間を否定しているのだ。








でも、そういう事で笑ってしまうのも人間なのは事実なのである。







例えば「跳んで埼玉」という映画がある。






完全なる差別映画だ(笑)








埼玉差別である。







でも、「住んでいる地域で人を差別するな!!」とか叫んでる人がいるだろうか?






いない。







少しはいるかもしれないが、もしいたら、







「いやいやいや、あれはああいう笑いじゃん(笑)」







って誰もが思うだろうし、怒ってる人がいたら、その怒ってる人の方がおかしいと思うだろう。






その跳んで埼玉の中では色んな差別的なセリフがある。






例えば、
「埼玉県人には、その辺の草でも喰わせておけ!」






というセリフ。

 





めちゃくちゃ差別だ。







でも誰も怒らないし問題にならない。






むしろ笑っている。







埼玉県人本人も、日本国民もそういう差別の笑いを許容しているのだ。







それってすごく僕は素敵だと思う。






でも、その「埼玉県人」の部分を「女性」に代えたらどうなるだろうか?







「女性にはその辺の草を喰わせておけ!」
になる。







こうなると絶対炎上するし、怒る人も沢山出て来るし、映画にも出来ないと思う。







「女性蔑視だ!!!」ってなる。







「埼玉県人」を「障◯者」に代えると、もっと炎上するだろうし、もっと怒るだろう。







でも、「埼玉県人」だと怒らないのに「女性」や「障◯者」になると怒るのはなぜだろう?






実はそれこそが差別なのではないだろうか?






埼玉県人は言われてもいいのに、女性とか障◯者はダメって、埼玉県人を差別してないだろうか?






僕は、この「埼玉県人」の部分を「女性」や「障◯者」に代えても怒る人がいなくて、それを観た女性や障◯者も笑える世の中が本当の平和で差別のない世の中なんじゃないかと思う。







もちろんなかなか難しいだろうとは思うが、そういう世の中に少しでも近づいたらみんなが過ごしやすい世の中なのではないだろうか?






これはイジっちゃダメとか、これは笑いにしちゃダメとか、ハゲやデブは笑いにしちゃダメとか、障◯者は笑いにしちゃダメとか、聖域みたいな物って、それはその人達を守ってるように見えて、実は疎外しているのではないだろうか?







腫れ物に触るみたいな扱いになっている訳で、それは逆にその人達を生き辛い世の中にしていないだろうか?






僕にはオカマや障◯者の友達もいた。







その人達は自分の事をネタにしていたし、僕もイジっていたし、彼らもそれを望んでいた。







腫れ物に触るように彼らと接する人たちよりも僕の方が彼らと本音で話せる関係だった。







果たしてどっちが彼らにとっていいのだろうか?






どっちが優しいのだろうか?







時には罵倒したり悪口言ったりイジったりネタにする事の方が実は最大の優しさだったりする事もある。






僕も車いす生活の時代があったが、もちろんネタにしていたし、イジってくれていた。






芸人の中にも障◯者はいる。






ホーキング青山さんとか脳性マヒブラザーズとか、自分の事もネタにして笑いにしているし、他の人の事もネタにする。






僕はそういう人達を観て、すごく活き活きしていると思う。






でも人によっては、痛々しい目で見る人もいるだろうし、笑いのネタにしていいのかと思う人もいるだろう。






でもそういう痛々しい目で見たりする事自体が差別だし、笑いにしてはいけないという固定概念や窮屈さを押し付けている気がするのだ。 






もちろん中にはいじられたくない人や笑いにされたくない人もいるとは思うし、それも理解している。






欧米では不謹慎ネタなんて当たり前差別ネタなんて当たり前だ。






何でもかんでも欧米が正しいとは僕は思わないが、お笑いとか表現の世界の部分では日本というのはもっと許容出来るような人が増えればいいのになと思う。





その辺はまだ日本は発展途上だと思う。






この時の炎上によって、そういう色んな事を僕は考えさせられた。






僕がそんなどん底に落ちている2007年、








鳥居みゆきがブレイクした。



2007年ドラマ「花より男子2」スタート