1998年












世の中は、「誘惑/GLAY」が161万枚の大ヒット、「夜空ノムコウ/SMAP」が157万枚の大ヒットを記録し、イラク戦争勃発、和歌山毒入りカレー事件発生、元X JAPANのギタリストhide死去、と激動のニュースが世間を騒がせた。












僕達の東京NSCでの1年は、あっという間に過ぎて行った。
 












長いようで短い、とても濃厚な時間だった。
 













入学式での横澤さんの挨拶から始まり、
 












自己紹介でのぶちかまし、











 
木曜の授業で怒られ、土曜で受け入れられ、
 












教室では暴力が乱れ飛び、










 
解散危機も乗り越え、











 
トーナメントやバトルライブで生き残りを掛けた戦いをし、











 
なんとか1年間生き延びた。












 
毎週毎週新ネタをやっていた僕達は、ネタの枯渇との戦い、鮮度との戦いで苦しんでいたが、なんとか1年間選抜クラスをキープしていた。
 












ネタの枯渇は僕達だけではなく、みんな同じだったのだ。
 













今思えば、こんなに毎日ネタを考えて、こんなハイペースで新ネタを披露し、他の芸人のネタを観まくり、生き残りを掛けたサバイバルをするというのはこの時が初めてだった。
 













この1年があったからこそ、毎日ネタを作るクセがついたり、ネタを量産していくリズムとかコツが身に付いていった気がする。














 
本当にすごく良い経験になったし、その後の芸人生活の血と肉になっているなと思う。













 
時が過ぎて行くと気になって来るのが、いったいこの中から何組が吉本に所属出来るのか?













 
全員所属出来るのか?













 
それとも限られた人数しか入れないのか?
 













という事だ。













 
入学当初から、その情報が全くなかったし、スタッフも誰も教えてくれなかった。














 
それはきっとNSCの意図があったからだというのを後々知る事になる。













 
選抜に残っているからと言って所属出来るとも限らない。
 












そんな不安を抱えたままひたすら毎日を過ごしていた中、卒業が近づいたある日、いよいよその詳細が発表された。
 












詳しくは覚えてないが、













 
5分ネタ枠、3分ネタ枠、1分ネタ枠、その中からそれぞれ好きな枠を選んでその枠の中の芸人で戦ってポイントを争うみたいな話をされた。













 
そのポイントと、卒業公演での講師の評価ポイントの合計の上位数組が吉本に所属出来て、それ以外は全員所属出来ない。との事だった。














 
確か上位10組だけが所属出来るという事だった気がする。













 
トータルテンボスはライバルの少ない5分枠を選んだ。
 











彼らはNSCではずっとコントをやっていた。
 












僕達は5分は長いから、3分枠にした。
 













そこから終盤戦の戦いが始まった。
 













そして自分達のポイントもよく分からないまま、卒業公演を迎えた。
 













卒業公演は、渋谷公園通り劇場で開催された。
 













一応生徒全員が出演出来る。
 













ネタのコーナーもあり、それ以外に新喜劇みたいなコーナーもあり、NSCの授業で習った事の集大成をお客さんの前で披露するという感じだった。
 












ネタの評価だけではなく、他のコーナーの演技の評価や、色んな評価のポイントがあったようだ。
 












だから、最後までいったい自分達がどれぐらいのポイントだったのか分からなかった。
 













その時のネタはみんな1分ネタだった。
 













お客さんも入っているというのもあり、ポイントを穫らないといけないというのもあって、僕達は普段やっていた毒舌漫才ではなく、コントのようなリズムネタのようなシュールなネタをやる事にした。
 












毒舌漫才ではお客さんが引く可能性が高かったからだ。
 












絶対にウケるぞ!












 
ウケて、













 
ポイントをゲットして、
 














絶対に生き残る!!













 
その為にがんばって来た。
 














生き残る為に毒舌漫才で目立って、なんとか選抜コースをキープして来たのだ。
 














ここでこのシュールなコントでウケる事によって、
  














マカナイXはこういうネタも出来るんだ、
 














ネタを使い分ける事も出来るんだという事を示す事も出来る。
 













生徒達はみんな自分の友達や家族、バイト仲間を呼んでいた。













 
僕達も友達やバイト仲間を沢山呼んだ。
 













養成所に入る前2人で一緒にバイトしてた時の仲間も来てくれていた。
 













自主ライブを手伝ってくれていた仲間も来てくれていた。
 












僕達が売れる事を願ってくれていた。
 











応援してくれていたみんなが観てくれている。
 














僕達の地獄の一年間での成長をここで見せつけるんだ。
 
 











そして、
 













 
マカナイXの出番が来た。
 













 
舞台上で2人が対決するような形で静止し、
 















「うなぎ喰わせろ!」






「ダメだ!!」






「うなぎ喰わせろ!」







「ダメだ!!」







「うなぎ喰わせろ!」







「ダメだ!!」







「うなぎ喰わせろ!」
 







「ダメだ!!」







「うなぎ喰わせろ!」







「ダメだ!!」







「牧瀬里穂!!」
 














意味が分からない(笑)
 















1分間そういうシュールなやり取りを繰り広げた。
 















もちろん授業で1度もやった事もなかったし、
 














客前で披露した事もないネタだった。
 














だが、養成所では時事ネタを毎週作って披露しつつ、こういう時の為に僕が密かに作って温めていたネタの1つだった。














 
今思えばかなりの冒険だったが、それなりにウケる事が出来た。
 














卒業公演も無事終わり、




 










数日後、
 














 
ついに、
 
 














吉本に所属出来る芸人10組が発表された。
 
 













その中に、
 
 













マカナイXの名前が、
 
 














入っていた。
 
 












よっしゃーーーーーー!!!!!


















僕達は、
 















1年間の厳しい戦いを経て、
 













解散危機も乗り越え、
 













先生に怒られながらも、
 














自分達の意志を貫き、
 













なんとか、吉本所属という結果を掴み取ったのであった。
 














 




生き残った10組には、
 
















トータルテンボス、
16オンス、
餃子会館、
 













などがいた気がする。















 
その時は、その10組は正式に吉本に所属となって、銀座七丁目劇場に出演する事になり、それ以外の生徒達は、さようならという話だった。
 
















だが、後日、結局その10組以外の生徒達も、銀座七丁目劇場に出演するチャンスを与えられる事になる。















 
もちろん優先順位としては後回しになるが、ちゃんとチャンスを与えてくれるのだ。
 


 











きっとそれをNSC在学中に言ってしまうと、















 
「どうせ七丁目劇場に全員出れるんだ」
 















と思ってしまって、生徒達ががんばらない可能性があるという事で、
 














「どうなるか分からない」状況を作って、奮起させるという意図があったのだろう。
 














学校としてもちゃんとそういう部分を考えているのだ。
 













そしていよいよ最後の授業の日、
 
















今まで暴力講師で恐れられていた先生の最後のお話があった。















 
「お前らはよくここまで頑張った。
 















これだけ厳しい毎日を耐え抜いたんだから、
 
















これからプロになって、どんな厳しい現場に行っても、お前らは大丈夫だ。」














 
そう言って、僕達を送り出してくれた。
 















その最後の話をした時の副校長は、
 














1年間で1度も見せた事のない優しい顔をしていた。
 














もしかしたら、僕達生徒の根性を鍛える為に、敢えて厳しくして、嫌われ役を演じていてくれたのかもしれない。














それがNSCなのだ。。。




 









いや。。。














でも。。。。
 














ただ単に本当に機嫌悪くて、殴ったりかかと落とししてた時もあると思うけどな。。(笑)















 
と僕は心のどこかで思った(笑)














 
そんなこんなで僕達マカナイXは、NSCを卒業し、
 














いよいよ、
















 
ロンドンブーツ1号2号さんや極楽とんぼさんがテレビにバンバン出始め、
 













あの、品川庄司さんやハローバイバイさんもいる、
 















「銀座七丁目劇場」





 











という次の猛者共が集まる巣窟へと向かう事になったのである。














そんな1998年ウッチャンナンチャン、ネプチューンのコント番組「笑う犬の生活」がスタートした。
 

1998年「号外!爆笑大問題」スタート