『アトマイザーの告白/art of Perfume』
12.Perfume
西暦2033年。
日本武道館は熱く揺れていた。
その年、日本では25年周期で訪れるテクノブームに沸いていた。
進化したデジタルサウンドは3次元的に展開し、新たなアーティストを次々と生み出していた。
そんな中、前回のテクノブームの2008年において、その先駆者であり代表的存在であった「Perfume」にもスポットライトが当てられていた。
当時、もっとも成功したPerfumeは、2009年末の“かしゆか”の結婚で、ユニットとしての活動休止を余儀なくされた。
その後、ソロ活動を行なっていた、“あ~ちゃん”・“のっち”だったが、二人もまた相次いで結婚がきまり、Perfumeは無期限の休止状態に入った。
しかし、3人の強い意志とファンたちの絶対的な希望で、解散する事はなかった。
そして、今回訪れた2033年のテクノブームで、Perfumeの音楽は再評価され、再発売されたアルバム「GAME」はオリコン1位を獲得し、至上最長の1位返り咲きの記録を作った。
新旧ファンは、「Perfume」の登場を待った。
その声は日増しの大きくなっていった。
そしてついに、
『Perfume 1夜限りの復活ライブ at 日本武道館』が決定した。
子育ても落ち着いた3人は、急遽集合する事となった。
プライベートも含めて、3人が会うのは18年ぶりだった。
近況報告をする間もなく、ダンスレッスン・ボイストレーニング・企画進行確認・
インタビュー等々、ライブに向けて忙しい日々を過ごしていた。
もともとチームワークの良かった3人なので、そんなに時間を要さずに、18年前の3人に戻る事ができた。
そんな中で迎えた『日本武道館の復活ライブ』は、25年前を彷彿させる最高のステージとなった。
Perfume3人もファンも、感動の涙で幕を閉じた。
ライブが終了した楽屋では、やっと落ち着いて3人がそれぞれの近況の報告や、思い出話に花をさかせていた。(以下、“あ”=あ~ちゃん “の”=のっち “か”=かしゆか)
あ:「いや~、でも、あの時、急にかしゆかが結婚するって言い出した時はびっくりしたよ~」
の:「そうだよね。初めて仕事で外国に行ったあとだったっけ?」
か:「私自身びっくりしたもん。フランスでの運命的な出会い(笑)」
あ:「ちょっと焦ったもんね。先越された~って(笑)」
の:「でも、ちゃんと3人とも結婚できて良かったぁ。」
3人ともアイスのpinoをつまんでいた。
の:「うちの子、pino好きなんだぁ。」
か:「斗貴雄くん?もう大きくなったよね。」
あ:「そうか、かしゆかは会ってないんだよね。外国に行っちゃったもんね。」
か:「うん。あ~ちゃんの娘には生まれた直後に会ったけどね。愛子ちゃんだっけ。」
あ:「そう。大ファンのaikoさんの名前頂いちゃった☆」
そういうと急にaikoの歌を唄いだすあ~ちゃんだった。
相変わらずのあ~ちゃんの行動に、かしゆかとのっちは笑った。
の:「でもさぁ。あ~ちゃんのその香水、相変わらずいい香りだよね。」
か:「そうだよね~。愛子ちゃんが生まれた頃からつけてるんだっけ?確かダンナさんのオリジナルだよね。」
あ:「うん。主人が香水関係の会社の研究者だからね。愛子の誕生記念に作って、あんまりいい香りだったから、私もずっと使ってる。」
の:「確か、小さい愛子ちゃんを連れて、うちに遊びに来てくれた時もつけてたよね。」
あ:「うん。二人ともまだお座りするのがやっとの頃だったね。斗貴雄くん、よく泣いてたけど私が抱っこすると泣き止んで可愛かったの覚えてる。」
の:「そうそう!あれね、絶対あ~ちゃんの香水の効果だよ。」
か:「昔、うちに来てくれた時も、あ~ちゃん良い香りだったの覚えてるな~。」
の:「かし、聞いて。あ~ちゃんったらね、斗貴雄を抱っこしながら愛子ちゃんを見せて『将来この子をお嫁にもらってね。あなたを絶対幸せにするよ』って約束させてたんだよ!」
か:「え!うちの子には『この子はあなたの妹よ!守ってあげてね』って言ってたよ、あ~ちゃん。」
あ:「へへへ。かる~い冗談よ。半分本気だったけど・・」
3人は顔を見合わせて笑った。
の:「そう言えばさぁ。この間不思議な事があったんだ。」
か:「なに?」
の:「25年前の初めてのツアーの時に、アトマイザーの劇を3人でやったじゃない。“ノチオ”と“あ~ちゃん”と“ユタカ”の物語。」
あ:「わぁ。懐かしい!」
の:「でね、そのアトマイザー、私まだ持ってたの。」
か:「へぇ、よく持ってたね、のっち。」
の:「うん。それでね、この間、うちの斗貴雄が、好きな子に告白するって真剣に思いつめてたから、あのアトマイザーを渡して<これに自分の好きな香水を入れてプレゼントしたら上手くいく>ってアドバイスしたのよ。」
か:「わぁ。劇そのまんまじゃん。」
の:「そう!そうしたらね。上手くいったらしいのよ。だけどね、彼女からも同じようにアトマイザーをプレゼントされたらしいの。それが同じ「GAME」アトマイザーの色違い!」
か:「ええ!あれまだ持っていた人いるんだぁ!」
の:「そうなの!それにね、プレゼントされたアトマイザーに入ってたのが、あ~ちゃんの香水にそっくりの香り!不思議でしょう?
斗貴雄が言うには、その香りがなんか甘く涼しげで、なぜか懐かしい気持ちにさせてね、“幸せな約束”を思い出すんだって。」
話を聞いていたあ~ちゃんは不思議そうな表情をしていた。
かしゆかは、興味津津に聞き入っていたが、思い出したように言った。
か:「そう言えば、うちの子も懐かしい爽やかな香りがする妹ができた、って言ってた。」
の:「かしゆかの息子って、何やってるんだっけ?」
か:「主人がフランスの大学の天文学の教授でしょ。だから後をついで天文学の講師。」
の:「確か、ダンナさん、ハーフだったよね。」
か:「そう、フランスと日本のね。だけど日本大好きな人だから、息子の名前も日本らしく“ユタカ”。」
の:「なんせ、苗字が“樫尾”だもんね。結婚しても“かしゆか”継続だもん。」
か:「のっちだって、苗字あんまり変わってないじゃん。“大本”が“大木”だし。」
の:「あぁ。結婚当初、よく書き間違えたもん。
あ、そうだ。あ~ちゃん、昔、斗貴雄の事を“ノチオくん”って呼んでたでしょ?
すっかりそれが刷り込まれちゃって、あの子、今でも周りの友達に自分の事“ノチオ”って呼ばせてるよ。」
か:「変わったあだ名だね。でも自分で言ってるなら仕方ないかぁ。」
の:「あ~ちゃんは愛子ちゃんの事、昔から“あ~ちゃん”って呼んでたよね。“ダブルあ~ちゃん”って思ってたもん。
でも、不思議でしょう?アトマイザーといい、あ~ちゃんとそっくりの香水といい。」
しばらく黙っていたあ~ちゃんが、真剣な顔をして話し始めた。
あ:「あのね、愛子もこの間、優しい彼氏と素敵なお兄さんができたって喜んでた。」
の:「え?」
あ:「それで、彼氏には、あの「GAME」アトマイザーに香水を入れてプレゼントしたって。」
の:「え~!?その香水って・・・」
あ:「私と同じ香水“love the world”。もともとはあの子の為に開発されたものだし・・」
の:「ほ、ほんとにぃ?」
あ:「それと、大学の天文観察学の講師が、お兄さんになってくれるって。」
か:「え?」
あ:「ねえ、ユタカくんが講師している大学ってどこ?」
か:「AX大学だけど・・・」
の:「え!斗貴雄もその大学!」
あ:「あ、愛子も同じ大学・・・!」
の:か:「ってことは、私たちの子供・・・?」
数秒後、3人の楽屋にはハイテンションで楽しそうな、
“うそー!”とか“しんじられないー!”とか
“今度親子連れで会おうよー!”とか。。
そんな会話が飛び交っていた。
それは、ひとつの香りから始まった物語。
そして、
それは、『Perfume』から始まった物語だった。
~Fin~
補足
「Perfume」
ライブではアンコール前の最後の曲。
「ジャンプ」に「掛声」に「振り手」に・・・
客席の運動量が一番多いですね。
この最後のブロックは踊れる曲が多いので
思いっきり盛り上がれます。
このブロックはいつも踵を床に付けずに動きまくってます。
「Perfume」らしいライブを思いっきり楽しめる曲です。