『アトマイザーの告白/art of Perfume』
11.wonder2 ⇒ マカロニ
何度かけても話中を告げる彼女の携帯電話に、ノチオは1人焦っていた。
今頃、彼女とユタカが話をしているかも知れない。
何事もユタカに先を越されてしまう自分が不甲斐なかった。
そう思うと、何度も何度もリダイアルをしてしまうのだった。
祈る想いでかけた何回目かのコールで、彼女の呼び出し音が鳴りつながってくれた。
「はい。」
初めて電話で聞く、彼女の声だった。
「あ~ちゃん?ノチオ。」
「あ。ノチオくん。こんばんは。」
彼女の声に、ノチオは緊張した。
「あの、あ~ちゃん。オレさ、あ~ちゃんに話さなきゃいけない事があるんだ。」
「あ。私も。。話したい事があるの。。」
ノチオは、戸惑った。
彼女の言う“話したい事”とは、きっとユタカとの事だ。
最悪、“彼氏ができたから・・・”という話かもしれない。
「あ~ちゃん、今、家だよね?これからそっちに行く!」
とにかく、会って話がしたかったノチオは彼女の家の近くまで行く事にした。
ノチオは、最近母親から聞いた告白の方法、
<アトマイザーに自分のお気に入りの香水を入れて彼女に渡す>
というのを実践するつもりだった。
自転車を限界まで早くこいで、ノチオは彼女の家までたどり着き電話で呼び出した。
しばらく待つと、彼女が出てきてくれた。
そして、近くの公園まで二人で並んで歩いた。
「ごめんね。あ~ちゃん。こんな夜に。」
「ううん。私も直接会って話したかったから。。」
彼女の表情は、いつもより硬かった。
ノチオが緊張のあまり、告白のタイミングをつかみかねているうちに、
彼女が話し始めた。
「あのね。今日私ね。。。樫尾先生に告白されたの。。」
「え・・」
いきなり彼女が核心の話を始めたので、ノチオは心臓をつかまれる程の衝撃を感じた。
「それでね、私、考えたの。どうしようって。。。一生懸命考えたの。。。」
ノチオは、黙って聞くよりほかなかった。
「そしたらね・・・。一生懸命、考えれば考えるほどね、ノチオくんの事が頭に浮かんじゃうの。」
「え?」
驚いてノチオは彼女を見つめた。
「私、こういう事に鈍感だから。。。こうして真剣に悩むまで、自分の気持ちにはっきり気がつかなかったの。」
「あ~ちゃん?」
「私。。。私ね。。。ノチオくんのこと好きです。。」
彼女はうつむいていた。
いつもの天真爛漫さは影をひそめていた。
精一杯の彼女の想いがノチオに伝わってきた。
ノチオは、自分が歩いてるのか浮いているのかわからなくなった。
夢じゃないか?と思った。
以前に、似たような状況で“冗談”で落とされた事が頭をかすめた。
「ノチオくん、いつも私を心配してくれるし、いつも優しいし、ノチオくんのそばにいると、私、元気になれるの。」
彼女の言葉が感動的な詩のように、ノチオの心に刻まれていった。
「考えてみればね、私、最初に会った時から、なんかノチオくんの事が気になってた。
なんか、懐かしいような…、前にどこかで会ったような…不思議な気分だったの。
ノチオくんが私の香水に気がついてくれた時、ドキドキしてた。」
「あ~ちゃん。」
「あのね、ノチオくんがよければ、これ持ってて欲しいの。」
恥ずかしそうに彼女がノチオに差し出したのは、アトマイザーだった。
「ノチオくんが褒めてくれた、私の香水。」
ノチオは、夢見心地のまま受け取った。
受け取る時、彼女の手に触れて自分が今しなければいけない事を思い出した。
「あ~ちゃん。オレもだよ!」
「え?」
彼女はノチオを見た。ノチオは彼女の目をしっかりと見て言った。
「オレも、あ~ちゃんのこと、大好きだ!」
ノチオの言葉に、彼女の表情は明るく華やいだ。
「ホント?」
「うん!うん!今日、オレ、それを言いに来たんだ!」
「ホント?うれしい!」
彼女は感激しているようだった。
二人にとって、最高に幸せな瞬間だった。
数秒間、見つめあって二人はその「幸せ」を確かめあった。その後、急にお互い照れてしまった。
その照れを隠すように、ノチオは言った。
「でさ、偶然なんだけど、オレもプレゼントにアトマイザーを持ってきたんだ。」
ノチオは自分が持ってきたアトマイザーを差し出した。
彼女は、恥ずかしそうにそれを受け取った。
「なんかさ、自分のお気に入りの香水を入れてプレゼントするのがいいらしいんだけど、オレそういうのよくわからないから、中身入ってないんだけど・・・」
嬉しそうに微笑んで、彼女はノチオに少し近づいてきた。
「じゃ、二人でさがそ。ノチオくんにぴったりの香り。」
そう言ってノチオを見上げる彼女の表情は、この世の何よりも美しい、とノチオは思った。
「あれ?」
ニコニコとアトマイザーを眺めていた彼女は、ふと不思議そうな表情を浮かべた。
「なに?え?なに?・・・またオレの事好きっていうのは“冗談よ”とか言うんじゃないよね?」
ノチオは過去のトラウマにおびえた。
「や~だ。冗談じゃないわよ。ノチオくん、ホントに好き。」
“きゃあ、2回も言わせないで~”と彼女は照れていた。
いつもの天真爛漫さが戻りつつあった。
そのあと、ノチオのプレゼントのアトマイザーを眺めて彼女は言った。
「すごい偶然よ。これ、私がプレゼントしたのと同じアトマイザー。」
「え?ほんとに?」
ノチオは、彼女からプレゼントされたアトマイザーを見直した。
そしてふたつを並べて比べると、デザインは同じだが、ゴールドとシルバーの色違いであることがわかった。
「不思議だね。でも、お揃いだし、嬉しい。」
二人は、初めて恋人の気持ちで笑い合った。
「ところで、あ~ちゃんの香水の名前ってどういうの?」
「これ?オリジナルなんだ。名前は“love the world”」
この心地よい香りの彼女を、何があっても守っていく!
そんな想いを胸に、初めて手と手をつないだ。
ちょっと恥ずかしくて、そっと深呼吸をする二人だった。
~つづく~
*この物語の登場人物は、Perfume3人をイメージしていますが、架空の人物です。
*ストーリーは、ツアー「GAME」の連続ドラマを元にしていますが、同じではありません。
ご了承くださいませ。
補足
「wonder2/マカロニ」
両方ともPerfumeにはめずらしいミドルテンポの曲です。
「wonder2」はライブでは一番最後の曲の定番ですね。
メロディの切なさと、ライブが終わる淋しさが重なって
たまらない気持ちになります。
GAMEツアー最終日横浜BLIZでの「感動」もこの曲でしたね。
この曲の詞が良くて、特に
”キミだけは他と何かが違う不思議な存在なんだよ”
っていうところが大好きです。
「マカロニ」
実は、Perfumeの曲の中で一番好きです。
詞のドキドキ感とアレンジが絶妙です。
僕の理想の恋愛感です。
それに何と言ってもダンスが最高!
ちょっと遊び心があって、めちゃめちゃ可愛くて
とってもスウィートです。
多分、一生聴き続ける歌だと思います。