昔、今よりずっと昔、「死にたい」って言いながら生きた人がいた
その人をいつも、見てた人がいた
その人が見ていたものが知りたくて、何て名前なのか知りたくて
捕まえられないその人の心が、何処にあるのか知りたくて

いつの間にか旅人になったその人
だから見ていた人も旅人になった
そして、ただずっと見ていた
何も言わず、何もせず、ただどうすればその人の心を捕らえられるのか、考え続けていた
でも、遂に尋ねちゃった
「貴方は何処に心を置いてきたの?」
そしたらその人、こう答えた
「何処だか忘れちゃうくらい、遠いところだよ」

ある刻突然死んじゃうと気付いたその人
初めて見てた人をみた
「何故、みていたんですか?」
そしたら見ていた人、こう答えた
「“死にたい”って言いながら生きている貴方が、何を探し、見ていたのか知りたかったからだよ」
それを聞いたその人は、静かに目を閉じ微笑んだ
「そして、貴方の心を捕らえてみたかったからだよ」

「それは、怖いですね」

「捕らえられたんでしょうか?私は」
見ていた人は、微笑んだ
「いいえ、捕らえられなかったよ。私には」