あれはガンになって3年たった頃。


ガンの入院中にできた友達が、

再発して検査すると言うので、

会いに行くために私も病院に向かったの。


友達は電車で1時間くらいのところから、

妹と一緒に病院にきていて。

検査が終わって、

久々の再会でおしゃべりに夢中になってた。


そのとき。



グラグラグラ……


大きく病院が揺れた。

長い揺れだった。

吹き抜けのガラスの天井の下にいた私たちは、

ふらつきながら急いでそこを離れた。

院内放送が流れて、


外に出ないでください

院内の方が安全です


と繰り返された。



あまりの大きな揺れに、

驚きはしたものの、

呆然となってしまってた。


しばらく様子を見ていたら、

また院内放送が流れて、


公共交通機関が止まっています


とのこと。



電車が止まっちゃうと友達も帰れないし、


じゃあ、うちにくる?


と軽い気持ちで話しながら、

ワンセグで地震のニュースを観た。



なにこれ?



震源地に近い場所の映像が流れている。

映画のような大変な状況。

これは現実なの??



取り急ぎ家に向かうことにして、

院内のコンビニで買い物をしようとしたら。

店内が騒然としていて、

食料を夢中で買い漁る人々。


何してるの???


最初は意味がわからなかったけど、

何か大変なことが起きてるのはわかった。

そっか、

食料を確保しなきゃならない状況なのか。



なんとか人数分の飲み物とカップラを買って、

車に乗って道路に出たら。


信号は全て消えていて、

大きな通りは先が見えないくらいの大渋滞。


幸い我が家は病院からほぼ直線で10分の距離。


消えた信号に気をつけながら家に向かった。



家に戻ると停電していて、

部屋中のドアが空いて、

家具やテレビが10cmくらい移動してた。

倒れてなかったのが幸いだった。


まだ寒い時期だったので、

急いで反射式ストーブを出して灯油を入れて、

陽の光があるうちに、

友達と妹の分の布団を用意して。


落ち着いたところでまたワンセグを観たら。



津波の映像が流れてきました。




大変なことになってる




みんな為す術もなく、

とにかくロウソクやランプを用意して、

夜に備えました。



その夜は、

停電している部屋の中で、

ロウソクの光を囲みながら、

友達姉妹と私と旦那さんの4人で過ごしました。



その時間は、

私にとってかけがえのないものになりました。

この日から彼女は再発との戦いが始まり、

2年後に亡くなってしまったからです。



心細い夜を大好きな彼女と過ごした。

携帯の電池も少なくて、

ワンセグも観られなくて、

状況もまったく把握できない中。

ロウソクの灯りを見ながらいろんな話をした。



そのとき私たちはガンになって、

常に死を覚悟して暮らしていた。

そして震災では、

沢山の方が命を奪われた。



命の火は、

いつ消えるかわからないんだと、

しみじみと思った。



ある日突然、ガンを宣告される。

ある日突然、自然災害で命を奪われる。

ある日突然、なにが起こるかわからない。



だから毎日、

大切に生きなくてはいけない。


今のコロナ禍も同じことだ。


いつコロナで命を奪われるかわからない。



命はみんな平等だ。



命は脆いものだと実感したとき、

生きてる事の素晴らしさに気づく。




一生懸命に生きなくては!