抜粋しか知りませんでしたが、今回最後まで読んでみてよかった。感動しました。

トラざっくり言うとトラ
尊大な羞恥心の所為で虎になってしまった男の激白。

話と挿絵がマッチしている。
文体は漢文調ですが簡潔で読みやすいです。

私も内向的な性格なので、人と交わりたくなかったという李徴の気持ちがわかります。
誇れるものがない自分を人に知られるのが恥ずかしい。

でもこの性格のために損をしてきたことがたくさんあります。
始めたい趣味があるのに、仲間の輪に入れるか、自分がうまくできるのか、先にあれこれ考えてしまって尻込みしたり…

同じ志を持つ人から教わることは多いし、才能がなくても努力でどうにかなることが多いってことが書いてありました。

自分のために、印象に残った部分を記録しておきます。

己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。(中略)  人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。

  引用: 山月記

 


著者略歴も気になったので記録しておこう。

中島敦
明治42年(1909年)東京生まれ。東京帝国大学卒業後、教員生活を経てパラオ南洋庁への勤務をしながら執筆活動を行う。喘息のため33歳で病没。代表作に、『山月記』『光と風と夢』『李徴』などがある。

関連記事↓

山月記
中島敦,ねこ助
リットーミュージック/2020年04月17日頃
9784845634781
乙女の本棚シリーズ