生まれたとき

赤ちゃんに自我はまだ、ない



赤ちゃんにとって

ママは自分の一部


別々の人間と理解するまでに
どれほど時間が必要だろうか



だから

小さい頃は
少なくとも私は

ママがすべてで、絶対だった



ママっていうのは本当に大事な役割で



世界の見方を教えてくれる


いや、むしろ

世界を与えてくれる
といったほうが近いかもしれない





だから私は

ママを心底恨んでいる



私に最初に与えられてきた世界
そこから抜け出せていないからだ


ここでいう世界は
私の中に備わって離れないもので

私を苦しめる




ママと暮らしていくうちに
どんどん私の世界は歪んでいった


だけど
いちばん苦しい原因は

私が生まれてからの10年間は
キラキラした世界だった


もちろん
おかしい点は色々あった

例をだしてみる



ママの左手首はしわしわになっていて

皮膚が、てかてかしていた



それから、毎日信じられないくらい
お酒をたくさん飲む

お酒を飲むとどうなるかというと

ずっと泣いている
そして、ババといつもケンカしてた


そのケンカもひどいもので

原因はなにかと私のせいになっていた


あんたのせいなんだからね!!



よく言われていた




ママの弟は中学生の頃亡くなったらしい
ビルの高いところから
自分から、落ちたらしい

酔っ払うといつも名前を呼んでいた



パパはいなかった


あ、
パパと呼ばせられていた人はいた



よく理不尽なことで怒られたりもした


それでも私にとっては
世界はキラキラしてた




ママは色んなとこに連れていってくれた

私が幼稚園の頃は
毎週旅行に行っていた


お部屋に温泉がついているとこ

一泊10万円するとこ

ステーキ、フォアグラ、キャビア

うに、あわび、かに

フカヒレ、トロ、ふぐ



好きなだけ食べて、好きなだけ遊べていた

 

洋服もとってもかわいい

そこらへんのお店に買ってる服は
着たことがなかった



メゾピアノ、シャーリーテンプル

シモネッタ、ビトン、


ありとあらゆるブランドものを
身にまとっていた



学校にも
運動靴なんて履いていかないので

フランスのお姫様が履くような靴。


それで体育をしていたら
ある日先生に叱られた


汚れてもいいんです!
走りやすいんです!

っていっても

みんなと同じようなの履きなさい!!


って言われた



ママは優しかった
私にとっては優しかった

女神様とかそういう部類だった


 
だから言うことはよく聞いていた

そのうち
毎日おつかいを頼まれるようになった



ママはお酒をよく飲むので
 
袋に入った氷や、お茶を買っていた


あとは、レンジでチンするごはん


 
これだけではなくて
他にも色々頼んだ


私はよくできない子だったので
お金を落としたり、買うものを忘れたり

その度にひどく叱られた



自分の失敗ではなく

ママを失望させてしまった、という
不安と絶望感から

よく私も泣いていた



ゴミ出しもよく頼まれた


それから、お皿洗いも頼まれた



洗濯も、ママはしなくなるようになったので

私は学校に来ていく服のために



仕方なく洗濯をした





そう、私が小学生四年生頃

どんどんキラキラしたら世界は
歪んでいった