チョコレートがやめられない
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妄想の世界はこちらも同じ

チョコレートがやめられない-未設定

画像とってみました。
名所で記念写真とる気分。
これもまた妄想。

おとなになって

ある日友人たちとカラオケに行った。
久しぶりのカラオケで、盛り上がった。
遅れてきたKが、ケイタイをいじりながら、大音響の中やってきた。
大音響の中でケイタイをいじりながら、挨拶もそこそこに入り口から一番近いソファにどっかりと座った。

私はKがあまりスキではない。
得体がしれないからだ。
少々メタボにさしかかった体をそれほど気にしないのも嫌だし、のっそりのっそり歩く姿も嫌だし、なによりも時々嘘をつくのが許せない。
透明に見えて不透明な黒目の奥で、仲間をいつもあざ笑っている本当の姿を私は知っている。

たとえばKは人を試す。
会話のはしばしに、まことしやかな嘘の情報をちりばめて、相手の反応を楽しんでいる。
うっかり知ったかぶりでもしようものなら、それはKの思うツボなのだ。
上司がうっかりしったかぶりをしたときの、何となく不安定な目の動きをつぶさに観察し、そして新たな嘘の情報をなげかけ、それに乗ってくるのを待ち構える。
そんなやり取りを、デスクから遠目に何度も見た。
それは違うよ、馬鹿、とののしってやりたい。
しかし、ののしってもヤツの思うツボなのだ。
そう言うときは、うってかわって、へえーーそうなんですかーーーー?はい、自分は馬鹿でした、正してくれてサンキュー、みたいなへりくだった態度をとる。
それは本心ではない。試金石にうまく反応した自分よりも馬鹿な人をあぶり出す作戦なのだ。

酔いも回っていい気持ちで歌う周囲の中で、ケイタイをいじるK。
そんなKに、誰かが勝手に曲を入れて、歌うように指示した。

馬鹿、相手にしなければ良いのに。

ええーー?とか良いながらのっそり立ち上がってマイクを握ったK。
そこからまた試金石が投げられた。

わざと音程がわからないふりをして歌い始めた。
あれ?どんなんだっけ?とか時折周りに助けを求めながら、「ラララー♪だよ。」とKの狼狽ぶりをからかうように旋律を教えてやる馬鹿。
お前がからかわれていることに気がつけ。

イライラしながらジンジャーエールを飲んだ。
あまったるい金色の泡の向こう側でまた試金石が投げられ、ぽちゃんと音を立てた。

「ここのとこわかんないんで、一緒にうたってくださいよ~。」

私にふるんじゃない、K。

ジンジャーエールを飲みながら左手を降って無言で拒否した。

また馬鹿がもう一つのマイクを持ち上げて一緒に熱唱しだした。

途中からKはにやにやしながら、マイクを口から遠ざけて、歌い出した馬鹿の隣で手拍子を始めた。
そのまま馬鹿に最後まで歌わせて、最後に盛大に拍手。
Kの思うがままに操られた馬鹿は、どうだ、お前のかわりにチョーもりあげてやったぞ!という出し切った!感の顔でKと笑っていた。
Kははにかんだような笑顔で、いやー、うまいっすね!と拍手を続ける。

馬鹿馬鹿馬鹿。
気持ち悪い。

グラスの底にはもう泡立つ気力もないジンジャーエールが数センチ残った。






ご飯

おかあさんは毎日毎日ご飯をたくさん作っていた。
お父さんはお酒を飲みながら時間をかけてご飯をたくさん食べる。

ある日おかあさんが泣いているのをみた。
お父さんはむっつりしておかあさんを見てた。

ご飯がたくさんならんだちゃぶ台をはさんで。

てっちゃんち

幼稚園でおんなじ星組のてっちゃん。
あまり運動は得意でなかった。鉄棒の前でがまの油みたいに、
じっとして動かなくなってだらだらと汗をかいていた。
そんなてっちゃんはお家にたくさん本をもっていた。
ある日てっちゃんちに遊びにいった私は、てっちゃんの本を読ませてもらった。
洋室とも和室ともつかない奇妙な内装で、畳が敷いてあるのに、応接セットがおいてあり、
本棚にはしゃれた洋風の装飾が施されていた。
ぐねぐねとしたからくさのような植物の形をなぞっていくと、だんだん真ん中にたどりついて、
スポッと指が穴にはまる。
その本棚にはたくさんのてっちゃんの本が並んでいた。
きれいな絵本もあった。
私は夢中になってその本を読んだ。
畳の上に足をくずして座って、てっちゃんはそのかたわらで、何かしていた。
何かしていたとしか記憶がないくらい、私はその本に夢中になっていた。
てっちゃんはきっと退屈していたに違いない。
視界のはしっこで座っていたり、ごろんところがっていたり、立ってぶらぶらしていた。
その時、時計が正午をしらせる鐘をならした。

「お昼だから、もう帰ったら?」

「うん。」

「ねえ、もうお昼だよ、おうちに帰らないといけないよ。」

「うん。」

私は本が読みたくて、生返事で時間を稼いだ。
視界のはしっこのてっちゃんはちょっとイライラしているようだった。

そのイライラが頂点に達したような気配がしたその瞬間。
私はてっちゃんに背中から抱きしめられていた。
あまりのことに、振り払おうと思ったけれども、座っている体制だったためもあり、
思うようにてっちゃんを振り払えなかった。
そのまま背中からぎゅーっと抱きつかれ、身動きがとれなくなった。

季節はいつごろだっただろうか。正午の気温はじりじりと高くなった太陽のせいで、
湿り気を帯びた熱をもっていたと思う。
私はじわじわと汗がでてきた。
暑い。でもこれは冷や汗かもしれない。
いや、暑い。離して。

てっちゃんはみしみしと竹竿に絡み付く蔓草のように、両手を絡ませて離れない。
そのうち胸元の隙間にてっちゃんの指さきがすこしずつすこしずつ、蠕動しながら忍び寄ってきた。

私はてっちゃんの指先を握り、素肌に食い込むのを阻止した。
てっちゃんは力をゆるめることなく、均一に指先に力を込めて、少しずつ少しずつ、
なんの膨らみもない私の素肌にくいこんできた。

「離して。」

「。。。。。」

「離して。」

「。。。。。」

熱くてくらくらしてきた。
何も知識のないはずの私でも、これがなんだか恥ずかしいことは感じていた。
お願いだから離してください。そこはまだ触れてもなにもありません。

「帰る。」

暑さでもうろうとしている私はとっさにその一言をつぶやいた。

その瞬間、絡み付いていたてっちゃんは静かに私を解放した。
たちあがって私を見下ろしている。

なにがおこったのか、一体何をされたのか。
理解できない行動をとるてっちゃんのその目が、とても怖かった。

ふらふらと立ち上がって、胸元をしっかり押さえて、私はてっちゃんのおかあさんに挨拶をして帰った。
てっちゃんは一言もしゃべらずに、ただじっとそのこわい目で私を家から押し出すように、廊下の奥に立っていた。

玄関を出て、つっかけをはいて、家に向かって、のろのろと歩きだした。

正午すぎの日差しは私を照りつけていたが、さきほどまでの湿った熱気よりも心地良く感じた。
帰り道、私の胸元を押さえた手は、少しずつ力が抜けていった。
握りしめたしわが2番目のボタンのところにたくさんできていた。

よれた胸元のボタンとボタンの間に、てっちゃんちの垣根の間からそよいだ風が忍び込むのを感じて、
私はまたすこし怖くなって胸元をぎゅっと抱きしめた。





ずっと忘れていた。

ブログなんて登録していたんだ。
2004年なんてずいぶんと昔に。
今思えばこの数年の間にも、ブログにでも記録しておけば良かった事が一杯あったはず。
だけどもう、思い出せない。
もっと昔のことはたくさん思い出せるのに、たった5年ほどの間の出来事は不鮮明な記憶。
相変わらずチョコレートは大好き。
でも、最近食べたチョコレートの味はなんだかうすぼんやりしてる。

子供の頃のチョコレートの味はいつまでもいつまでも鮮明なのにね。

それだけ今の自分は希薄な存在として他人からも自分自身からも忘れ去られようとしてるのかもしれないね。
またちょこっとだけ更新してみようと思うよ。


初恋はいつですか?
そんな質問をされたことはない。
が、もしされたならどれを初恋というのだろう。
父に対して抱いていた想いは恋ではないのだろうか。
私の過去の記憶の中の父はだれよりもいとおしい存在だった。
だれよりも抱きしめてほしかった。

母にはいつも父を盗られないように、
なにかにつけて用事をたのんだものだった。
そのたびに父はにこにこしながら
私のわがままを聞いてくれた。
母はその姿をみて「あーあ、あんたこの子には甘いんだから。
アタシが何かたのんだらあしざまにののしるくせに・・・。」
浅瀬に打ち上げられて生きるのをあきらめた鯨のような母の目が
私を憎らしげにとらえる。
父はその母をみてまた声を荒げる。
母は大きな体を起こして、6畳の茶の間の中央で、
髪の毛を振り乱して金切り声をあげる。
私はそっと台所に逃げ出し、いつでも外に出られるように勝手口で
つっかけを足に引っ掛け、ぶらぶらさせてその騒ぎが収まるのを待つのだ。

ポケットのなかで忘れられていた、ふにゃりと曲がったチョコレートバーが、私を誘惑する。
食べたい。でもこれはお楽しみでとっておきたい。
でも父の「怒りに我を忘れた形相」と「母の上に馬乗りになった姿」を見ると、なんだか切なくなって、口の中に何かを放り込みたくなる。
チョコレートの甘さを流し込んで甘いと感じる以外の感覚をふさいでしまいたい。
母の青あざを不憫に思いながらも、父のチョコレートが私を麻痺させていた。

りなちゃん

近所のりなちゃんはとても美人だった。
でもちょっと意地悪なところもあった。
それで、よく悪口も言いふらしてた。

「●●さんとこのお父さん、不倫してるんだって!」

そんな噂を学校で言いふらすなんて、とんでもないなあと
思いながら、●●さんのお父さんの顔を思い浮かべたりした。
興味本位というのは本当にたちが悪い。
それはよくないことだよとわかっていても、むくむくと大きくなって、
頭のなかの考える部分いっぱいに膨らんでいく。

りなちゃんはまた休み時間になったらその話題で●●さんを攻撃していた。
実は●●さんは先輩なんだけど、そんなことはりなちゃんには関係なかった。

それから2、3日して、りなちゃんは人が変わったようにおとなしくなった。
噂話もしなければ、普通に誰ともしゃべらなくなった。
ある日、ほかの噂好きな子からその原因を聞いた。
●●さんのお父さんの不倫の相手は、りなちゃんのおかあさんだった。

命令する男

近所の家に親戚だかなんだかわからないが子供が遊びに来ていた。
幼稚園くらいの年の男の子だ。
私はあそんであげてね、と言われて、とりあえず遊んであげていた。
古いパチンコ台が捨ててあったので、その台で遊んでみた。
銀色の玉をはじくとガラスのな中をあちこちに飛び回って、チューリップの中に入る。
ぱっくりと開くチューリップが、ぎこちない動きでこっけいだった。
しばらくしてその男の子は私に小声で言った。
「はだかになって川にはいれ。」
一瞬なんのことだかわからなかった。
「はだかになって川にはいれ。」
「・・・。」
「はだかになって川にはいれ。」
私は小学生だ。そんな恥ずかしいことを幼稚園児に命令されるなんて。
仮にも遊んであげているのだ。あ・げ・て・い・る・のだ。その事実をこの小さな煩悩の持ち主が何をどう立場を間違えたのか!
「やだよ。バーカ!!」
私は思いきり怒鳴った。
それ以上その男の子と遊んでやる義理などなかった。
パチンコの玉を投げつけ、蹴りをいれ、「ぎゃ!」とうめく男の子を置き去りにして帰った。
帰ってきて手を洗った。タイル張りの洗面所の目地が黒くなっている。そこに思い切りつばを吐いて、一気に蛇口をひねった。
透明な泡の塊みたいな私のつばは、アメーバーみたいに目地を這って、暗い排水溝の奥に落ちていった。

チョコレートを食べたときの幸福

父はパチンコに行くといつもチョコレートをお土産に持って帰ってくれた。
いつもは口にしないチョコレートをほおばるとき、とても甘くて濃くて幸せな気分になれた。
私は父がパチンコに行くたびに帰りが待ち遠しかった。
きっと今日はたくさんチョコレートを持って帰ってくれる。大事なものをしまう引き出しにはまだこの前のパチンコの戦利品がすこしだけ残してある。今日新しい戦利品が届いたら、その残りを一気に口の中に放り込み、溶けていく甘い塊を口のなかいっぱいに舌でねっとりと絡ませて楽しめる。私はわくわくして父の帰りを待っていた。

だけどその日、父は帰ってこなかった。
次の日も、その次の日も、父は帰ってこなかった。
とうとう5日目に、父の最期の戦利品を口の中でゆっくりと溶かした。
ねっとりと絡みついた甘い粘液がいつまでも口のなかでよどんでいた。
父の存在はその夜、完全に溶けて消えてしまった。