警察に次の日と言われた通り、再び警察へ。
せっかくバルセロナに到着したばかりの友達に悪いので
自分一人で警察に行き、友達2人とは後で合流することにした。
24時間やっている警察といっても、スペイン語が出来ない外国人は
通訳がいる12時からしか受付ができないので
時間ぴったりに警察に行った。するとすでに列ができていて
皆重たい空気だった。そんな空気の中、一人声を張り上げて
質問している人がいる。あれが通訳の人か。
あまりに声が大きいので、その場にいる人全員が聞こえてしまう。
そしてその態度がなんとまぁ感じの悪いこと
自分も同じように質問を受けるので、心構え出来るようしっかり聞いておく。
『English? Italian? 』,『Why are you here? 』から始まり、『Lost or stolen? This is VERY important!!! OK?』
どうやら盗難なのか、無くしたのかで発行する書類が違うらしい。
自分の前に並んでる人はすべて盗難被害で警察に来ていて
盗られたものは、iPhone、Ipod、カメラ、 etc...と
Apple製品がもっぱら盗難界では目玉らしい。
盗難被害に遭った人にそんな言い方しなくてもいいじゃん・・・
っていう対応で、並んでいる人はみんなで目を合わせ、
目でぐるっと一回りしてやってらんないっていうジェスチャーを
しながら、それでもじっと自分の番まで待つしかない。
警察や通訳にとっちゃあ、毎日数ある犯罪の一つに過ぎなくて
私一人がiPhone盗られたところで、何でもないんだなって感じた。
お役所仕事ってどんなに対応が悪くても、みんな必要だからそこに行く訳で
ずっと耐えるしかない。精神的ケアなんて全くない。
自分の番になって、出来るだけ質問に的確に簡潔に答えるよう努めた。
すでに質問されることは聞いていたのでスムーズに進んだ。
iPhoneのSIMカードはベルギーで買ったプリペイドだったので
その時に通訳の人が『ボクはベルギー出身なんだよ』とポロッと言った。
『そうなの？ベルギーにも行ったよ。ロックフェスにも行ったし。』
と言って腕にまだつけていたロックフェスのバンドを見せる。
すると『本当に？ボクはベルギーのルーベン出身なんだよ！』
ちょっと親近感が湧く。そして事務的だった彼の仕事ぶりが
気持ち柔らかくなった。そうか・・・彼も結局は人間なんだ。
”繋がり”も何もないとああいう対応だけど、ちゃんと心持った人間。
無事手続きが済み、書類が出来るまでしばらく待つ。すると
今まで抑えていた感情が一気に吹き出し、涙が止まらなくなった。
なんでこんな目に遭わなきゃ？
パソコンに加えiPhoneを無くしたことで失ったデータは痛い。
お金を出せば物はまた買えるけど、お金で買えない大切な物を
失ったことは非常に痛い。
10分程度で盗難届の書類が出来上がり、
ひとまず海外保険はこれで大丈夫そうだ。
買い物している友達と合流し、遅めのランチへ。
私の気分は落ち込んでいて、正直楽しくご飯を食べられなかった。
無くなった物はもう戻ってこないので、あとは気持ちを切り替えるしか
ないのはわかってても、なかなか上手く切り替えられない。
『なんか悪いことしたかなぁ・・・』と自分を責める。
するとベルギーの友達に、『それってすごく仏教的な考えだよね』
と言われる。仏教
仏教というか宗教を意識したこともない私。『悪い奴は悪い奴。自分を責めなくいいよ。』
そこからは宗教の話になり、欧米人はキリスト教を信仰してる人が多いけど、日本人はあまり信仰心は無い。なのに、日常での考え方は、仏教に通ずることが多い。
言われてみればそうかも・・・と自分では意識してなかったことに
新たな発見をし、面白いなと思う。
バチが当たるとか情けは人のためならずとか、巡り巡って自分に戻ってくるみたいな考え方。
本当の悪ってなんだろうとか、難しい話題へ。
人の物を盗って利益を得ようなんて、許しがたい。盗る奴が悪いのか？盗られる奴が悪いのか？犯罪しない人は、罰が怖いからやらないだけなのか？例えば罰がなければ、もっと犯罪は増えるはず。生きるか死ぬかで犯罪を犯さざる得ない環境なら？
色々考えて訳わかんないけど、これだけは言える。
私は絶対悪人にはなりたくない
続く。
ベリ
