泥棒野郎(Take the Money and Run)
ウディ・アレン演じる主人公、ヴァージルの一生を追ったモキュメンタリー(架空のドキュメンタリー)のコメディ映画。これは前に観たことがあるはずなんだけど、こんなにおもしろかったっけ??っていうくらい笑った。最高。何が最高って、不条理っぷりがはんぱない。不器用でつい楽なほうへと流されがちなヴァージルが、何度つかまっても懲りもせずにひょうひょうと犯罪に手を染めていくうちに、どんどんとんでもないことになっていく。彼のガールフレンドのルイーズ(ジャネット・マーゴリン)がピュアでまっすぐで、ほんとに可愛い。彼女の美しさと透明感でシュールさが一気に増す。実際、そのために「ザ・ヒロイン」っていう感じの可愛らしい女優さんが選ばれたんじゃないかと思う。白いワンピース姿とかほんとうに純粋なお嬢さんそのもので、その見た目と言動のギャップがまたおかしすぎる。もうすべてが見事にずれていて、すべてがおもしろい。これはパイソンズと同じで、口で説明しようとすればするほど伝わらないというか。ヴァージルの人生を追う映像の途中で彼の両親(ヴィジュアルふざけすぎで素晴らしい)らの証言がはさまれたりするスタイルは、パイソンズのスケッチ“The Pirana Brothers(蛙のエセル)”を思い出さずにはいられない。この『泥棒野郎』は1969年8月公開のアメリカ作品。『空飛ぶモンティ・パイソン』が英国で放送開始されたのは1969年10月。海を隔てたふたつの場所で、同じようなセンスを持つ作品が同時に制作されていたということになる。そう思うと、ちょっとすごい。