Doctor in Trouble | CAHIER DE CHOCOLAT

Doctor in Trouble

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1970年のコメディ映画。1954年から続く“Doctor”シリーズの7作目にして最終作。始まりはロンドン、でも、物語の中心(というかほとんど)は地中海クルーズの豪華客船の船上。主人公のDr. バーク(レスリー・フィリップス)は、ガールフレンドのオフィーリアがモデルの仕事のために乗るその客船に意図せずして無賃乗船することになってしまう。そこから始まって、タイトルどおりに次から次へとトラブルが続いていく。意外と厚かましかったり、ひょうひょうとしていたりするDr. バークの医師らしからぬ軽さがおかしい。船には医療ドラマでドクターを演じている鼻持ちならない俳優バジル(Dr. バークの学生時代の知り合いでもある)、サッカーくじで大当たりしただけのにわか金持ちMr. ウェンドバー、娘をとにかくお金持ちと結婚させたいMrs. デイリー、彼女の娘でダンサーのドーン、気のいいインド人船員サタジーなど、個性的な面々だらけ。グレアムが演じているのはカメラマンのロディ。DVDのパッケージ(表)にも予告編にもグレアムの名前はなかったのでちょい役かと思っていたけど、結構あちこちで登場するキャラクターだった。『空飛ぶモンティ・パイソン』でもおなじみな感じのなよっとしたゲイ男性で、バジルのことがお気に入り。素直で明るくて、モデルの女の子たちと仲良しな、ちょっと抜けたところもあったりする可愛らしいキャラクターだった。Dr. バークはアメリカに移り住むことを考えていて、それでオフィーリアに結婚を申し込もうとしているのだけれども、「結婚をしていればとても良い仕事につける」と言っている。似たような話がパイソンズの自伝本にもあった。「基本的に、当時は結婚していないと医師になれなかった」とデイヴィッド・シャーロックさんが話していた。Dr. バークがこの話をするシーンでは、「なんで結婚したいんだ? “permissive society(寛容社会)”ってことばを聞いたことがないのか?」と同僚がさらっと言う(それに対してDr. バークは「知ってるよ。以前、チェアマンだった」とジョークで答えていたりする)。世の中が寛容的になってきていても、医学の世界という場所はまだまだそうではなかった、こうしてなにげなくコメディ映画に出てくるくらいには、みんなそういうものだと思っていたのだろうと思う。……もしもそういう暗黙の掟のようなものがなかったら、グレアムは医師になっていただろうか?