007/ダイ・アナザー・デイ(Die Another Day) | CAHIER DE CHOCOLAT

007/ダイ・アナザー・デイ(Die Another Day)

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ピアース・ブロナンがボンドを演じるこの作品は、唯一ジョン・クリーズがQとして出演しているボンド映画でもある(前作の『ワールド・イズ・ノット・イナフ』にもジョンは出ているけれども、その時はQではなく後継者「R」)。ジョンはボンドより大きくて、デスモンド・リュウェリンのQとはまったく違うのに、前Qもどこか彼の一部としてそこにいるような感じがする。それでいて、ジョンらしい新しいQになっているところが好き。「voilà」のひとこととかいかにもジョンらしい。ボンドとQのやり取りはいちいちおかしすぎ。秘密兵器の説明をしているだけで、特におもしろいことを言ってるわけではないはずなんだけど。真顔で淡々と、かつ、いかにも誇らしげに(これは前Qと同じく)しゃべる姿にはじわじわくるおかしみがある。「You're cleverer than you look(見た目より頭いいんだな)」ってなめたボンドのセリフにも、いたってふつうに「Still better than looking cleverer than you are(実際より頭良さそうに見えるよりはいいだろう)」って答えるところも最高。ボンドのセリフには「She's only got a flesh wound(ほんのかすり傷だよ)」というのもある(パイソンズ好きは反応しないわけにはいかない)。ボンド&Q以外の部分でも、ハル・ベリー演じるジンクスは頭小さくてお人形みたいなスタイルに中身も可愛いという魅力的なボンドガールだし、悪役のグレーブスとザオはバイオ系ハイテク駆使の美しい見た目からなんともいえないいやらしさや不気味さがにじみ出てて良い。壮大な話の根底には親子の感情のもつれやせつない確執もある。でもそれが話を小さくしてしまっているのではなく、どんな大きなことを考えていても、どんなに強靭でも、人間というのはやはり感情の生き物……と感じられた。それで、ボンド映画に関して「なんでだろう」と自分の中でずっと腑に落ちなかったこともだいぶ解消できたと思う。