ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから(Mon inconnue) | CAHIER DE CHOCOLAT

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから(Mon inconnue)

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フランスの映画だけど、フランスが舞台のザ・ロマコメ。と思ったら、ユーゴ・ジェラン監督はハリウッド映画のようなロマコメをフレンチテイストで作りたかったのだそう。高校時代にひとめぼれしたふたりが結婚して10年。小説家志望だったラファエル(フランソワ・シビル)は人気作家に。オリヴィア(ジョセフィーヌ・ジャピ)はピアノ教師をしながらピアニストを志しているものの、コンクールになかなか入賞できずにいた。少しずつすれ違っていったふたりに、ある日ついに大きな亀裂が生じることになる。その夜、ラファエルは酔ってふて寝。ところが、翌朝ラファエルが目覚めると、そこはオリヴィアが人気ピアニストでラファエルが国語教師というパラレルワールドだった……この話をどうやって着地させるのかがまず気になった。細かい部分で若干甘いかなというところはありつつも、それでも、そこまでひとつずつ慎重に重ねてきたものを最後の最後で大きく動かす予想外の結末は良かった。ラファエルが作家でオリヴィアがピアニストを目指すピアノ教師の世界とオリヴィアがピアニストでラファエルが(作家志望だった)国語教師の世界。正解と間違いでもないし、ネガとポジでもない。そもそも「パラレル」というのは「平行」ということだから。雪のパリの夜は美しかった。

主人公のふたりも良かったけど、なんせ際立っていたのはバンジャマン・ラヴェルネ演じるラファエルの友人、フェリックス aka ジャン・ピエール(ジャン=ピエールではない。この名前に関するやり取りがまたおかしい)。どっちの世界にいても、言うことがいちいちおもしろいし、本気で困っているラファエルに対する返しがいつも絶妙。あと、ある意味すごいのが卓球の試合会場でのラファエル・フェリックスペア。とうとつにサッカーの日本代表風のジャージで登場、試合では『キャプテン翼』の南葛中ユニフォーム風のTシャツ&短パンに。なぜ? その後もこの衣装についての説明は何もなし。どういうことなんだ。破壊力ありすぎた。でもこのフェリックス、意外とデキルやつだったり、ひょうひょうとした調子で的を得たことを言ったりもする。軽やかで柔軟、それでいて時に繊細さも垣間見せる。ラファエルとフェリックスとのバディムービーとしての要素は、この映画で私が一番好きなところだった。


日本代表ジャージと南葛中ユニフォームのシーンもありのフランス版の予告編。