“バック・トゥ・ザ・フューチャー”トリロジー おまけなど | CAHIER DE CHOCOLAT

“バック・トゥ・ザ・フューチャー”トリロジー おまけなど

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“映画衣装の密かな愉しみ”第10回は“バック・トゥ・ザ・フューチャー”トリロジー。今回は前編・後編になっています。こちらでは、おまけ的なことや個人的に思ったことなどを書いていきます。もちろんネタバレです。前後編2回分なので長いです。

映画衣装の密かな愉しみ:第10回「バック・トゥ・ザ・フューチャー」その「時代考証は正しい」衣装から見えてくること(前編)
https://jp.ign.com/clothes-on-film/51531/feature/10

前半は3人のヒロインの衣装について。ロレインはもうめちゃくちゃ可愛い。まさにザ・50sファッション。登場するごとに全部違う衣装はどれもすごく可愛い服ばかり。ピーチピンクのドレスも可愛い。日本にはプロムとかああいうパーティの習慣がないし、基本的に高校生は車の運転もできないので、その辺の違いもありますが、高校生がスーツやタキシード、ドレスにハイヒールで出かけるというのは、どの映画で観てもいつもすごいなと思う。男の子のパーティファッションは、上下ブラックのタキシードに加えて、ジャケットがホワイトでパンツがブラックというスタイルも当時流行っていたそうです。ジョージも何気に流行のスタイルなんですね。

私が一番好きなのは1885年のクララのファッション。あれより前の時代だと舞踏会に行きそうなドレスかほっそりしたドレスで、1880年代後半〜1890年代になると肩が大きくふくらんだ砂時計シルエット(機関車で1985年にきたクララが着ていたような服)に流行が移ってしまうので、ジャケット風の上半身にボリューミィなスカートというスタイルは1880年代中頃独特のものだとか。クララの服の中でも、望遠鏡の修理を依頼しにドクのところにくるときのストライプの服が私はとても好きなのですが、襟やすその飾りなどのストライプが細かく全部違う向きになるように組み合わせてあって、ほんとにちょっとしか登場しない服なのにものすごく手が込んでいてびっくり……! そのほかもすべて細かいところまで手の込んだ服ばかりで、クララのおしゃれ具合と経済状況がすごい。

こうやって1950年代、1880年代、1890年代と見ていくと、1980年代のジェニファーの着ているもののがいかにカジュアルかというのもよくわかる。だんだん制約や慣習がなくなったり薄れたり、素材なども色々便利なものが出てきたりして、洋服はどんどんカジュアルになってきています。1950年代の女の子はふだんでもスカートの下にペチコートを履いていたりもするし、たぶん今ほどらくちんなかっこうではないはず。もちろん流行りというものある。快適なのはいいことでもある。でも、ラクなほうに流れたファッションばかりしていてはいかんなと改めて思ったりもしました(これは『クイーンズ・ギャンビット』のときも思った)。

映画衣装の密かな愉しみ:第10回「バック・トゥ・ザ・フューチャー」その「時代考証は正しい」衣装から見えてくること(後編)
https://jp.ign.com/clothes-on-film/51533/feature/10

後半はマーティとドクの衣装の話。私はそもそも西武劇スタイルが好きなので、PART3の衣装はすごく好きです(作品としてもPART3が一番好き)。PART3のドクはかっこよくて、そこもいい。マーティを助ける登場シーンはめちゃくちゃかっこいいし、あの時代になじんで生活しているというのもかっこいいと思う。マーティのPART3の衣装も好き(ド派手なのじゃないほう)。当然ながら、長身のドクとは違うタイプのマーティらしい西武劇ファッションでこれがまたいいです。ポンチョ姿可愛い〜。マーティの帽子はドクの「ホンブルグハット」ともシェイマスの「ボーラーハット」とも違う形で、てっぺんに凹みがあるいわゆる「カウボーイハット(テンガロンハット、ウエスタンハット)」ともちょっと違う「ポークパイ」という形。帽子の上の部分が平らになっているのが特徴の「カウボーイハット」の一種。『荒野の用心棒』のクリント・イーストウッドの帽子もこの「ポークパイ」だと思います。この帽子になった理由はそこにあるのかもしれませんが、これがワイルドすぎないマーティのスタイルに絶妙に合っているのもすごい。マッド・ドッグ・タネンのは「フロントピンチ」という手でつまんだような形状の「カウボーイハット」です。この形はちょっとワイルドな雰囲気があって、超絶ワイルドな彼にはぴったり。

マーティの衣装では1955年のスケートボードのシーンの服も好き。1955年の男の子の服、女の子以上に今はもはや定番になっているアイテムも多いので、あのかっこうで2021年にきてもたいして違和感ないのでは。「ズートスーツ」は、私は『トムとジェリー』のトムが着ていたのを鮮明に覚えているのですが、マーティのズートスーツはここまで極端ではないですね。



PART3の最後のあの再会シーンでは、お礼を言うマーティの目尻が一瞬光るという奇跡みたいなショットで毎回泣きそうになるけど、服の色に気づいたときはドクが現れた瞬間からもう勝手に高まって泣きそうになってしまった。あの最後のシーンは、PART2の最後の手紙のシーンと同じくらい感涙ポインツ。手紙も、1作目ではマーティがドクに書いて、2作目ではドクがマーティに書いてるというのもいい。まったく共通点のなさそうなふたりの友情、基本ふたりだけの関係性というのがまたいいのかもしれない。

何度観てもおもしろいし、まだまだ新しい発見がいくらでもできそうな“バック・トゥ・ザ・フューチャー”トリロジー(今回の記事には入れられなかったキャラクターとか2015年の服の話とか、ほんとにいくらでもありそう)。ディスクや配信でいつでも観られるのも嬉しいし、映画館で観られればそれはまた最高。観ると元気になれる映画でもある。大好きで愛おしくすらある作品です。今回、図らずも連載10回目というタイミングで、しかも全編・後編というボリュームで“バック・トゥ・ザ・フューチャー”トリロジーの記事を公開できたのは、とても幸せなことだと思います。今回の作品に限らずですが、記事を読んでまた観たいと思ってもらえたら嬉しいです。