フェリーニのアマルコルド(Amarcord) | CAHIER DE CHOCOLAT

フェリーニのアマルコルド(Amarcord)

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北イタリアの小さな港町、リミニに綿毛が舞い、冬の終わりと春の到来を告げる魔女焼き(かかしのような人形を燃やす行事。魔女というにはあまりにも可愛らしい人形でちょっと気の毒)が行なわれるところから、この映画は始まる。少年チッタとその家族や町の人々の日常を眺めつつ、時は流れていく。季節の行事、夜の外出、学校の授業、家庭でのあれこれ……どんな大きなことでもささいなことでも、どれもが等しく同じように流れていく。楽しいこともくだらないことも、理不尽なことも悲しいことも。人々の笑いがあふれる海の近くの町の美しい光景に軽やかな音楽、甘い幸福感に満たされる。タイトルの「アマルコルド(Amarcord)」は、イタリア語の「Mi ricordo」を、この映画の舞台であり、監督のフェデリコ・フェリーニの生まれ故郷でもあるリミニの方言で「A m'arcord」と言うところからだとか。意味は「私は覚えている」。映画は、リミニが再び綿毛の季節を迎えたところで幕を閉じる。映画は終わるけれども、この人たちの日常はこのまま続いていくのだろうと感じさせながら。そしてそこには、「Al paradiso(パラダイスへ)」の文字が見えている。