肉体の悪魔(Diavolo in corpo / Devil in the Flesh) | CAHIER DE CHOCOLAT

肉体の悪魔(Diavolo in corpo / Devil in the Flesh)

IMG_3663.JPG
高校生のアンドレアが、偶然目にした美しい女性、ジュリアに恋をした。でも、彼女には婚約者と精神疾患があって……というお話。舞台はイタリアだけど、まず最初のカットで映る瓦屋根の建物の光景に日本を思わせるものが少しあって、一瞬「あれ?」となる。教室内の机とイスも日本の学校のものとほぼ同じつくりのもので、はるか遠いまったく違う文化の場所の物語なのに少しノスタルジー。心の中に涼やかな風が吹き抜けていくような印象が残ったのは、学校で始まって、学校で終わるということもきっと関係している。アンドレアとジュリアはめちゃくちゃな、いわゆるみだらな関係になっていくのだけれども、その情事と学校の光景の対比が奇妙な感覚を起こす。ふたつの乖離した状況を行ったりきたりしているときは、どちらかにいるともう一方に現実味がなくなる。どちらが現実なのかはたぶんほんとうはわかっている。それに逆らって変えるか、それを受け入れるかを決めるのも自分。アンドレアを演じているフェデリコ・ピッツァリスがいい。変に大人びているわけでもなく、若い暑苦しさがあるわけでもなく、バランスが絶妙。しかもジャン=ピエール・レオに似ているんですよね。レオに少し影と落ち着きを足した感じ。でも、なんとこれ1作しか出演作がないもよう……残念! ジュリア役は『カルメンという名の女』にも出ているマルーシュカ・デートメルス。あの作品もかなりだったけど、こちらはさらに刹那的で、まぶしいほどに美しい。たくさん笑う笑顔も可憐で、思わず引き込まれるのも無理ないという魔力のようなものがある。ただ、その笑いには一歩間違えたら狂気という匂いもある。赤いガウンを着てハサミを手にするところは、『愛のコリーダ』を思い出さずにはいられなかった(実際どうなのかちょっと気になる)。風に吹かれるアンドレアの前髪、当たり前のように出入りする窓、白い教室、白いシャツ。ひと夏の物語だけど、汗がまとわりつくような感じはまったくなくて、最後までさらっとしているところが私はすごく好きだと思った。