ロバート・パティンソンがウィレム・デフォーに語る、「恐いと感じること」 | CAHIER DE CHOCOLAT

ロバート・パティンソンがウィレム・デフォーに語る、「恐いと感じること」

[ORIGINAL]
Robert Pattinson tells Willem
Dafoe what he’s terrified of
By Willem Dafoe, Photographed by Ryan McGinley, Styled by Mel Ottenberg November 2, 2018
https://www.interviewmagazine.com/film/high-life-star-robert-pattinson-tells-willem-dafoe-what-hes-terrified-of



ロバート・パティンソンがウィレム・デフォーに語る、「恐いと感じること」



シリーズのヒットで全世界的なアイドルとなった日々は過去となりつつあるが、ロバート・パティンソンの魅力は変わらず狂気に満ちていて、目が離せない。彼の顔の工業的に研ぎ澄まされた骨の構造の上には、人を混乱させる不朽の陰陽と淡い真剣さが乗せられている。ロンドンの郊外で育った時期を卒業し、まばゆいスターダムのきらめきを通り抜け、パティンソンのキャリアはかなりワイルドな世界に突入している。それは彼自身が作ってきたものだ。現在32歳のパティンソンは、デヴィッド・クローネンバーグ、ジェームズ・グレイといった監督のヘビーな映画でヘビーな役を演じてきた。その後、サフディ兄弟のパニックアクション映画『グッド・タイム』では、あごひげを生やし、クイーンズ・アクセントで話した。彼の最新の出演作は、クレール・ドニの初の英語作品『ハイ・ライフ』。このかなり野心的なプロジェクトは、パティンソンの低予算映画に対する真摯な思いに人々が抱く疑心を一掃した。フランス人監督、ドニの新作『ハイ・ライフ』はサイコセクシャルドラマで、パティンソンは宇宙にあるコロニー内に収容された囚人を演じる。そこにいる魔女のように魅惑的なジュリエット・ビノシュが、彼らを生殖させる(パティンソン演じる役は、彼女を『精子のシャーマン』と呼ぶ)。来年、パティンソンはA24のホラー映画『The Lighthouse(原題)』にウィレム・デフォーとともに出演する。デフォーはアートハウスの名作とサマーブロックバスター(*5月~8月の間で公開される大作映画)の間を巧みに行き来している。撮影現場では一言もことばを交わさなかった(男っぽい俳優的なことだ)ふたりが、有名人であることのありのままやそこから距離を置くことなどについて初めてじっくりと話す。 -NATHAN TAYLOR PEMBERTON

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ロバート・パティンソン:このインタビューがほんとに恐かったんだよ、1週間ずっとインタビューだったし。サン・セバスティアンでは、ジュリエット・ビノシュと一緒のインタビューだったんだけど、ずっと考えてたよ、「僕が話すことにみんな興味があるかどうかもわからない」って。

ウィレム・デフォー:僕が見たことがあるインタビューでは魅力的なように見えたよ。あれはパフォーマンスみたいなもの?

パティンソン:ハイになることも間違いなくあるけど。僕の中に小さいグレムリン(*機械などに入り込んで不調をもたらす想像上の小悪魔)がいて、それが「何かショッキングなことを言ってみろよ。数分しかここにいないんだから、何かとんでもないことを言えよ」って思うんだ。そういうのから得られる、ある種のひねくれた喜びみたいなものがある。でも、広報担当の人には何度も心臓発作を起こさせてるね。

ダフォー:なんでそんなに自信があるの?

パティンソン:自信の問題じゃないと思うんだ。それより、言える中でも最悪のことを言うっていうのがプレッシャーをなんとかする一番いい方法なんだと思う。僕は全部的を得るように話したり、映画を売り込んだりするのは絶対に得意じゃない。そういうのが得意な俳優の人たちもたくさんいると思うけど、僕はもう間違いなくそれはできなさそう。すごく恥ずかしく感じる、だって、観る人たちがその映画を気に入るかどうかもわからないんだから。自分が作ったものの話はできる、でももしそれを観た人が「そうだな、あれはだめだった」みたいな感じだったら、そんなことやっても仕方ないしね。



ダフォー:サン・セバスティアンの映画祭はどうだったの?

パティンソン:信じられないくらい小さくて、ものすごい頭蓋骨の魚を食べることになったんだよ。実際、今までで一番遠慮したいと思った食事のひとつだった。

ダフォー:いや、そこでの映画の試写会はどうだった?

パティンソン:それはすごく良かった。トロントでの最初の試写会のあと、ちょっと恐くなってたんだ。お客さんはどんな映画かあんまりわかってなかったんじゃないかと思う。巨大なホールで、お客さんが入ってきたら、ポッコーンを持って、楽しむ準備ばっちりって感じで座ってるのが見えた。それで僕はすぐに思った、「ああ、この人たちはもうすぐ電車にひかれるみたいになるんだ。みんな、悪魔の報いのオカルト映画だとは絶対思ってない」って。

デフォー:映画を作ってるときはどれぐらい観る人のことを考えてる?

パティンソン:映画を作ってるときは、誰が観るのかとか、ぜんぜん考えてない。みんなにもっと映画を観てもらえるようにしたいとは思ってるよ。それが、唯一僕が観る人のことを考えるとき。でもマーケティング術が好きっていうような部分も僕の中にはある。映画の宣伝的な側面のことは考えたくもない俳優も多いような気がするけど。

ダフォー:そうだね。

パティンソン:僕のお父さんは車のディーラーで、販売のテクニックについて話を聞くのがすごく好きだった。お客さんの心を読んで、どこに彼らを導きたいかを見るっていうパフォーマンスなんだよ。何かを売るっていうのは、かなり役を演じることに似てる……ある意味では。





ダフォー:誰もが好むようなものではない映画を作ってることもあるっていう事実にはどう対処してる? 人気作でなければ、映画として成功でないっていう考えが一般的にあるけど、僕はいつもそれに腹が立ってしかたがないんだよ。

パティンソン:あり得ないくらい個人的で独特でほかにはないものを作るとして、「あの映画がすごく好き」みたいに言ってくれる人がたったひとりだったとしても、それはもうちょっと深いレベルでつながってるっていうことで、「みんなに人気のあなたの映画を観たよ、すごく楽しかった」って言われるよりずっと意味があると思う。

ダフォー:それに関しては僕も同じだよ。おかしいね、『The Lighthouse』を一緒に撮ってたときは、状況がすごく厳しくて、シーンの中以外ではほとんどしゃべってなかったんだから。

パティンソン:僕はほぼ誰とも話してなかった。

ダフォー:君はずっと僕を当惑させてたっていうのは間違いないよ。

パティンソン:リハーサルをやってたときに、僕よりずっと脚本を理解してるっていうことがわかったから、それがばれないようにしたかったんだ。

ダフォー:あきらかにリハーサルに入り込んでなかったよね。役の性質でもあったかもしれないけど、常に飛び込みたい、理解したくないって思ってたような感じで。予備知識がないほうがもっとリアルに向き合えるとでもいうような。ダスティン・ホフマンとローレンス・オリヴィエの昔のことば「Go」を思い出してたよ。

パティンソン:『The Lighthouse』については、もし知能レベルで脚本をあまり理解できないんなら、身体的レベルで理解するようにしようって思ってた。でも、あんな超自然レベルのエネルギーを持ってる人はほかに会ったことがない、っていうのは言っておかないといけないな。演じるのを見ながら、「この人はどうやってこれをやってるんだろう?」って思ってたことを覚えてる。





ダフォー:それはお世辞だってことにしよう、でもそのことばは君にも返すよ。君のアプローチは恐ろしいほど激しかったからね。君は戦士だったよ。あの水をかけられて、つき刺さるように痛かったことを覚えてる? あの手のことは忘れられないよ。

パティンソン:あれは、もうちょっとで監督をなぐってしまいそうになるくらいだった。どれだけロバート(・エガース)のことが大好きでも、その前に海沿いを歩きながら5テイク撮ってて、そのしばらくあとには、「どうなってんだよ? ただホースで僕の顔に水を吹きかけてるだけじゃないか」みたいになってた。で、彼は「僕はホースで君の顔に水をかけてるんだよ」って感じだった。あれはある種の拷問のようだったよ。あのおもしろいエネルギーを作り出したのも、間違いなくあれだね(笑) 単に好奇心からなんだけど、あまり商業的でないものをやるって決めたときと、その反対に巨大なシリーズものをやるときで、役についての考え方は違う? そのアプローチは違ってる?

ダフォー:僕はずっとカンパニーで俳優として育ってきたから、自分を刺激してくれる人たちと一緒にやるのが一番だって感じてるんだ。僕は個人的な映画やクルーの人数が少ないのは好きだよ。柔軟性があるのがいい。大きい映画を撮ってるときには、精神面で違う。大きい映画だと、もっと責任や自信を持つようにしないといけない。その映画を作ってる人たちにも責任があるっていう、そのプレッシャーを感じてる。芸術に対する責任っていうのは死のようだね。

パティンソン:今までやったどの映画でも、何をやるのかぜんぜんわからないって、初日に監督に言っておかないといけないって感じてた。大きな企業構造の中にいると、そんなにうまく受け入れられないと思う。「ああ、僕は準備万端なプロの俳優だ、必要とされるどんなカラーでもストーリーを語ることができる」みたいに思えるようになろうとか思ったこともない。だって、できないって思うからこそ、まさにその映画をやるんだから。とにかくおぼれないように願うんだ。それから、おぼれなかったときには、泳ぎ方がわかればいいなと思う。



ダフォー:あのさ、君はうまくやっていってると思うよ。それに、僕は君の選択が好きだよ。“トワイライト”シリーズの映画であれだけ有名になって、僕はその有名なのを知らなかったけど、それで、今のようなリスクをおかすこともできるようになってるっていうのは、すごく賢いやり方だよ。

パティンソン:あなたも絶対に同じぐらい有名だよ。ハリファックスを歩いてるとき、自然食品の店であとを追いかけてる人たちを見たよ。

ダフォー:まあ、あれは僕のファンだね。





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*リンク先、英文です。
*(* )の部分は追加しています。




ダフォーさんがロブに質問をするという形式のインタビュー。途中で逆になったりもしていますが。リラックスした雰囲気が伝わってくるみたいでいいです。映画祭はどうだった?と聞かれて、まず魚料理の話をするところとか、おかしすぎる。きっとロブの中ではめちゃくちゃ印象的だったんでしょう。おもしろい。



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