[Time Out London] ロバート・パティンソンはほんとうに楽しい人 | CAHIER DE CHOCOLAT

[Time Out London] ロバート・パティンソンはほんとうに楽しい人

[ORIGINAL]
Oddball? Goth? Robert Pattinson is actually a laugh
By Isabelle Aron Posted: Thursday January 23 2020
https://www.timeout.com/london/film/oddball-goth-robert-pattinson-is-actually-a-laugh



オッドボール? ゴス? ロバート・パティンソンはほんとうに楽しい人

元ヴァンパイアで、次のバットマンで、『The Lighthouse』の主演のロバート・パティンソンと過ごすのは驚くほど楽しい。



ロバート・パティンソンはあらゆる点で期待を裏切らないくらいすごい。にぎった手の上にあの角ばったあごを乗せ、私がたずねた質問について考える。「どうやってあのすごいマスのシーンをやったのですか?」 彼は少し考えてから言う。「賞をもらったマス?」

ロンドン生まれのパティンソンは、最新作『The Lighthouse(原題)』での忘れられないエピソードについて語ってくれた。それは、彼いわく、「どう猛なマスターベーションのシーン」。さらにみょうな感じにするために、そのシーンは初日に撮影された。「初日にあれをやるのは楽しかったよ」と彼は言う。「あれで緊張が解けた」

監督のロバート・エガースに強く印象づけたいという気持ちがどこかにあった? 「1週間リハーサルをやったけど、基本的に彼にはすべてを隠してたんだ」とパティンソンは言う。「初日に自分を証明して見せないといけないって感じてた。だから、一番極端でグロテスクにすることにした……グロテスクなものに」

それで、『賞をもらったマス』はどうやって作りだしたのか? 彼は私の目を見て、まじめな顔で言った。「自分で自分を吐かせる」

彼はこれについて少し考えて、「最終的にはそのテイクは使われなかったけど」と言う。「あれはちょっとやりすぎだった」



オーケー、マスターベーションのシーンで自分を吐かせることについては別として、彼はそんなに強烈な感じではない。実際、彼はよく笑う。
そのおかげで、彼に花びらを浴びせたり、大量の花を顔の周りに配置して撮影しようと決めた私たちは助かった。彼は私たちが提案したことのほとんどをやってくれた。彼がやらなかったのはひとつだけ。花を目のところでメガネのようにして持つ、というものだけだ。「そこは線引きがあるんだよ」と彼ははっきり言った。「それは、僕にはちょっと『Teen VOGUE』っぽすぎる」

“正しきものを招き入れよ”

彼の線引きは、演じる役に関してはもっと柔軟性があるのは明らかだ。ロンドン南西部のバーンズで生まれたパティンソンは、世界的な社会現象にまでなった“トワイライト”サーガのティーンアイドル、エドワード・カレンとして一躍有名になった。そのとき以降、彼は「あの“トワイライト”の」というイメージを払拭しようとしてきた。低予算のクライム映画『グッド・タイム』(2017年)の銀行強盗、狂気のSF映画『ハイ・ライフ』(2018年)の宇宙に送り込まれた死刑囚などを演じ、昨年は、ティモシー・シャラメ主演のNetflix映画『キング』で、かなりおかしなフレンチアクセントで話すフランスの王子、ドーファンを演じた。劇場公開映画の最新出演作は、『The Lighthouse』。アートハウスの空気を存分に感じられる白黒の衝撃作で、パティンソンとウィレム・デフォーが、ニューイングランド沖の島にある灯台の灯台守を演じる。

もちろん、この映画にはパティンソンが話していたどう猛な自慰以外にも多くのものがある。パティンソンとダフォーのゆっくりと狂気に落ちていく演技は素晴らしい。彼らは島に閉じ込められ、お互いをののしり合い、アルコールを飲みつくすと灯油を飲み始める(この役はパティンソンはメソッドではやっていない。「それだと何もわからなくなってしまうと思う」と彼は言う) この映画は「心理ホラー」とされているが、その中にはほんとうにおかしい部分もある。例えば、エフライム・ウィンズロウ(パティンソン)がトーマス・ウェイク(ダフォー)の気分を害そうとして、トーマスの料理が嫌いだと言うシーンがある。そこでトーマスは、「Yer fond of me lobster, aren’t ye?(わしのロブスターが好きだろう?)」と懇願する。まるで夫婦のような口論だ。



彼が好きなセリフは? 「ウィレムに『Don’t be such an old bitch(そんな年寄りのあばずれみたいなことはやめろ)』っていうのが好き。年上の男の人を『old bitch』って呼ぶのがかなりいいなと思うものがある」

パティンソンの演じる役は、映画の中ではずっと骨の折れることや汚いこと(文字通り、室内用便器を空にしなければならない)をやっている。カモメたちにバカにされたり、ダフォーに偉そうにされたりもする。こういう小さな作業の中で、何かパティンソンがやったものはあるだろうか? 「箱を積み上げるのはなんか楽しかった」と彼は言う。「最後には達成感が得られるってわかってるから」 彼は16歳のとき、ウェイターをやっていた。そのときのマネージャーが洗いものを速く終わらせるためにリバースサイコロジーを使っていたことを彼は思い出した。

「いつもそれが好きだったんだよ。『このお皿を全部間に合うようにきれいにする方法はない』って言われると、僕は『できる、できる!』みたいな感じだった」

“スネークバイトの日々”

そういった小さな作業をやる時間は、パティンソンにあまりなかったのは周知のことだ。彼のスクリーンデビューは18歳、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のセドリック・ディゴリー役だった。“トワイライト”へと進むことになる前、カナダのノバスコシア州の島でウィレム・デフォーやタコとやり合うことになるずっと前、彼はロンドンの平均的なティーンエイジャーだった、非の打ちどころがないほどの骨格にも関わらず。

現在、パティンソンは33歳。主にロサンゼルスに住んでいるが、彼自身は自分のことをノマドだと言う(「ひとつの場所には、4ヶ月とかそれぐらいしかいられない、どこかへ行きたくてうずうずしてくるんだ」と彼は言っている)。パティンソンという人物を形作ったロンドンで過ごした日々について、彼はどんなことを覚えているのか、私は興味を持った。ウエスト・エンドへ出かけたことだろうか? ナショナル・シアターで人生を変えるものを見たことだろうか? そうではなさそうだ。「僕にとって大きなことは、Tesco Metro(*スーパーマーケットTescoの小型店舗)がオープンしたことだね」とバーンで育ったことについて彼は言う。「あれは大きかった、それまでは、Tescoに行くにはハマースミス橋(*テムズ川を渡る橋)を渡らないといけなかったからね。たぶん20年ぐらい前だったと思う……」



スーパーマーケットはともかく、彼が地元で出かけるところといえば、バーンズ・コモン(*保護区に指定された森)(「あそこは金曜日の夜に行くスポットだった」と彼は言う)の大きな木、バーンエルム(*スポーツ施設として使われているオープンスペース)(「あそこではたくさんの時間を過ごした」)の走り幅跳びをする砂場、そして、Monzilというインド料理のテイクアウトの店(「若い子たちが集まる場所みたいになってた」)だった。地元のテイクアウトの店での私自身の経験から、そのインド料理の店に酔っ払って行ったことがあるかどうかをたずねたところ、彼は礼儀正しく「言うべきじゃないよね」と答えた。でもそこから、未成年のときにパブでスネークバイト(*ラガービールとシードルを半々に混ぜたドリンク)をオーダーした記憶が彼に蘇ってきた。「子どもの頃、12歳だったけど、パブに行って、出してもらえたんだ」と彼は言う。「スネークバイトにした。オーダーしながら、例えば、君は子どもだ、子どもがRibena(*カシスを使った清涼飲料水)にアルコールを入れたのをオーダーしてる。どう見ても明らかだろう、みたいな感じだった」

“バーンズの天才少年からバットマンへ”

子どもの頃にスネークバイトをすすったような淡い記憶と同様に、パティンソンが、地元の街に帰ってくるのがほんとうに好きだと感じるときがある。夏を過ごすために、常に晴れたロサンゼルスを離れて大西洋を超えて戻ってくることを彼は楽しそうに話す。「夏を過ごすには世界で一番いい場所だよ」

けれども、ロンドンで行くお気に入りの場所について聞くと、彼は一旦止まった。「うーん……それは言ってしまいたくないんだよね……(聞かれたら)もう行かない場所を考えるようにしてる」 パパラッチやファンに見つかるかもしれないことを考慮しなければならないというのは、彼には当然のことだろう。インディ映画やアートハウス映画で変わり者を数年間演じたのち、彼はブロックバスターの領域へと戻ってくることになっている。マイケル・キートン、ベン・アフレック、クリスチャン・ベールに続いて、バットマンを演じるのだ。いまだに信じられないそうだが、「最高のことだね」と彼は言う。



しかし、これがもう少しで実現しないことになりそうだった。パティンソンがオーデイションを受けるよりも前に、彼がバットマンになる可能性があるという情報がリークしたのだ。役を得られるチャンスがだめになってしまった、と彼は思った。「ほんとうにおかしくなってしまいそうだった。思ったよ。まじかよ? こんなことでこの役を失うのか? 何かを失うにしても一番むかつく状況じゃないか?って」 映画の公開予定は2021年とまだ先だが、すでにパティンソンに腹を立てている人々もいる。彼は先日、バットマンはスーパーパワーを持っていないから、スーパーヒーローではない、といったようなことを言った。これが大きな問題となった。「そういうことについては教育されてなかったんだよ」と、すべてのことに困惑しているように彼はジョークを言う。「あれにはみんなすごく怒ってた。奇妙だよ。僕はあの論争についてまだ理解できない。オーケー、彼はスーパーヒーローだ。悪かったよ!」 彼は自分のことについて三人称で語り始めた。「次のヘッドラインは、『パティンソンが発言撤回:バットマンは、まぎれもなく、スーパーヒーローだ。これまでの発言を取り消した』だね」

ジョークを言いつつも、パティンソンは、人々がどう思うかについて気にかけている。「(撮影が)終わったときは、みんなが気に入ってくれるかどうかだけを心配してる。今は、みんな自分が好きなように考えてくれたらいいと思う」

そして、少なくとも今のところは、騒ぎが起きていたとしても、パティンソンはロンドンの通りを気づかれずにまだ歩き回ることができている。その秘訣は? 「僕はすごく歩くのが速いんだよ」 “トワイライト”の熱狂の最中でさえ、彼はここではほとんど気づかれなかったという。でも忘れられないできごとがひとつある。「前に、写真を撮られたんだ」と彼は小声で話し始めた。そして、その硬いトーンを変えずに言った。「Marks & Spencer(*老舗デパート/スーパー)でパンツを買ってるところ。そういうのはいつもちょっと恥ずかしいって思う。何枚か無料のパンツをもらえたけどね」


『The Lighthouse』は1月31日劇場公開。撮影:Andy Parsons





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*リンク先、英文です。
*(* )の部分は追加しています。
*“正しきものを招き入れよ”のところは、原文では“Let the bright one in”です。これは、邦題が『ぼくのエリ 200歳の少女』となっているヴァンパイア映画のタイトル。その辺りからではないかと思います。「吸血鬼は招待されなければ人の家に入れないとされている」ということからのようです。



元記事の公開日は「2020年1月23日」となっています。ちょうど1年くらい前。出演作品についての話には特別目新しいものはありませんが、地元話など色々あっておもしろかったです。TimeOutならでは。バーンズはほんとうに自然の多いきれいな場所のようですね。昔ながらの個人店舗が多い地域でもあるそうなので、どこにでもあるスーパーTescoも昔はなかったのかも。私はロンドンに行ったら、チャイニーズのテイクアウトを買うことにしているのですが(おいしいので)、インド料理という発想はなかった……! 確かに間違いなくおいしいだろうと思う。色々と心配せずに旅行できるようになったときには、インド料理のテイクアウトも食べてみたい。



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