戦慄の絆(Dead Ringers) | CAHIER DE CHOCOLAT

戦慄の絆(Dead Ringers)

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双子、特に一卵性双生児には不思議なものを感じずにはいられない。双子の片方がけがをすると、なんでもないのにもうひとりも同じところが痛くなると聞いたこともある。本人たちにとっては、そういうお決まりのイメージはめんどうだったり、アイデンティティに悩んだりすることもあるのかもしれないとも思う。今まで双子当人(たち)にそういう質問をしたことはない。ぶしつけに聞くようなことはしたくなかったし、なんとなく聞きそびれた。『戦慄の絆』の原題は『Dead Ringers』。「そっくりなものや人」とか「替え玉」の意味。子どもの頃に読んだ一卵性の双子が主人公のいくつかのマンガでも、彼ら、彼女らはやっぱり間違えられたり、入れ替わったりしていた。この映画の双子は外向的な兄・エリオットと内向的な弟・ビバリー。演じるのはどちらもジェレミー・アイアンズで一人二役。『ロリータ』でも繊細な演技がとても好きだと思ったけど、この作品でも兄のエリオットと弟のビバリー、性格の違うふたりの演じ分けが見事だった。双子が長い間かけてふたりで作ってきた絶妙なバランスを崩すことになる女性、クレアを演じるのはジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド。『まぼろしの市街戦』でコクリコだった女優さんだとあとで知って驚く。全編西洋医学が関わってくる物語だけど、逆にそういったものでは割り切れない、説明しきれないものを感じないではいられなかった。