ウィッチ(The Witch) | CAHIER DE CHOCOLAT

ウィッチ(The Witch)

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昔。子どもの頃。夜はもっと暗かった。井戸をのぞき込むと中は真っ暗だった。闇をじっと見ていると吸い込まれてしまいそうな気がしてきて、見つめるのをやめた。外国のおとぎ話の本には恐い感じがするものがあった。選んで読んだ回数はそういうお話のほうが多い。古い英語の辞書の“witch”のところに描かれた、ほうきにまたがって空を飛ぶ魔女の小さな挿し絵を何度も開いては眺めた。裏が透けそうなほど薄い紙のページの何が書いてあるかまったくわからないその本は、魔術の本なのではないかとほんの少し思っていた。『ウィッチ』を観ながら、色々なことがあいまいで、確認するすべもなくて、どこかにほのかな不安や恐怖を感じていた幼い日々の光景を思い出した。そして、何かを、誰かを信じるというのは確かだと感じるかもしれないけれど、すべてが反転するようにひっくり返ることもあるのだ、ということも。





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主人公のトマシン(アニャ・テイラー=ジョイ)にはふたごの弟ジョナスと妹マーシーがいて、ふたごはまだ小さいのだけれども、当時の子どもは大人と同じような服装をしていたから、マーシーは小さいおばさんのように見えることもある(エガース監督もコメンタリーで言っていました。ほんとうにそんな感じ)。大声で騒ぎ立てるマーシーとどこまでもピュアで感情や欲を抑えに抑えたトマシンとのコントラストがまた良い。
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