ロバート・パティンソン:Male Gaze、サイコパスを演じること、今後予定のアートハウス映画 | CAHIER DE CHOCOLAT

ロバート・パティンソン:Male Gaze、サイコパスを演じること、今後予定のアートハウス映画

[ORIGINAL]
Robert Pattinson on the Male Gaze, Playing a Psychopath, and the Status of His Many Upcoming Arthouse Movies
Eric Kohn Jun 22, 2018 1:04 pm
https://www.indiewire.com/2018/06/robert-pattinson-interview-damsel-mia-wasichowska-1201977644/



ロバート・パティンソン インタビュー:Male Gaze、サイコパスを演じること、今後出演予定のアートハウス映画

どんなものになるのかまったくわからなかったというゼルナー兄弟の変わった西部劇は、実際彼がここのところやっているようなものだったとロバート・パティンソンはIndieWireに語った。


『Damsel』

デヴィッド・ゼルナーとネイサン・ゼルナーの『Damsel(原題)』は、ふたりの関係性を発展させるつもりなどないと思っている女性の愛を、色々とゆがんだ求婚者が一方的に求めるという、一風変わった、あべこべな西部劇。ロバート・パティンソンはその脚本を最初に受け取ったとき、出演を考えていなかった。「制作費を確保できそうにないもののひとつなんじゃないかと思えたんだ。だから、そんなに印象に残ってなかった」と彼は言う。

数週間後、パティンソンは映画館で『トレジャーハンター・クミコ』を観た。それが『Damsel』と同じゼルナー兄弟制作の映画だとは知らなかった。彼はエージェントに電話をかけて、この映画を作った人にどうしても会いたいと言った。

「彼(エージェント)は、『ああ、新しい映画の役のオファーをもらっていたけど、彼らには会わなかったでしょう』って」とパティンソンはその時のことを思い出しながら言う。それを聞いて、彼は『Damsel』のことを思い出した。“トワイライト”シリーズからデヴィッド・クローネンバーグの『コズモポリス』やサフディ兄弟の『グッド・タイム』まで、表情を見せない役への嗜好を進化させてきた彼にとって、それはまた奇妙な領域へと足をふみいれることになりそうな作品だった。主人公のサミュエル・アラバスターは愚かなほど自信過剰な開拓者で、ペネロピ(ミア・ワシコウスカ)を誘拐者から救おうを必死になっている。彼女は助けを必要としていないにもかかわらず、だ。そして、パティンソンは、思いがけずコメディタッチの役を演じることになった。

それは、彼が契約にサインした段階では予想していなかったことだった。ひとつには、『トレジャーハンター・クミコ』がメランコリックな映画だったためだ。この作品は、映画『ファーゴ』の物語が事実だと信じ込んでいる日本人女性、クミコがアメリカのネブラスカ州をさまようという物語で、まったく違った雰囲気の映画となっている。「『トレジャーハンター・クミコ』は今まで観た中でも一番奇妙な映画のひとつ」とパティンソンは言っている。「あんなへんな映画なのに、筋が通ってて、かつ、心に響くようなものになってる。作品の世界観はすごくエレガントで、クールでもある。同時にたくさんのことが存在してる。あの映画と『Damsel』の脚本を結びつけるのは、ちょっとムリな気がした」

『Damsel』の脚本を読んだとき、彼は「これは必ずしもストレートなコメディじゃない。とにかくほんとにへんな感じがする」と思った。撮影が終わったあとも、この映画をなんと言ったらいいのかまだ考えている。彼はゼルナー兄弟のこれまでの作品を調べて、『Kid-Thing(原題)』を観た。井戸の底から響く声が聞こえる少女のダークで詩的な物語だ。ゼルナー兄弟が初めて比較的予算をかけて制作した映画の『トレジャーハンター・クミコ』とは違い、『Kid-Thing』は無表情の中ににじむオフビートなユーモアがある作品だということがはっきりとわかった。『トレジャーハンター・クミコ』は「大きな屋敷のような風格」がある感じがするが、ゼルナー兄弟のそのほかの作品は「壊れそうな小屋のようにぐらぐらした」感じのものだった、とパティンソンはわかった。

しかし、『Damsel』でパティンソンがロマンティックコメディという新しいフェーズに入ったということではない。この映画の物語はすべてサミュエルの行動から始まるのだが、夢にまで見た女性を見つけるという彼の妄想をまじめに演じる必要があった。「この男は完全にサイコパスだから」とパティンソンは言う。「人をいらつかせることしかしないけど、妄想の範囲がある種、恐ろしいほど広い。彼はドジでばかなやつじゃない。彼の行動は事前にじっくり考えられてる。彼は深く、深く、狂ってるんだよ。そういうアプローチでやることにした」

映画の中の印象的なシーンに、サミュエルがアコースティックギターを弾きながら、ペネロピのために作った曲を歌うシーンがある。自分が撮影している映画をどんなものだと言えばいいのか探りつつ、パティンソンはクルーを笑わせようともしていた。「誰も笑ってないシーンがいくつかあったんだ」とパティンソンは言う。「僕は、みんなからの反応を引き出そうとしてた。あの曲で、やっと集音マイクを持った人が笑ってるのを見て、ものすごくほっとしたよ」





完成した映画がどうなるのかよくわからなかった、ともパティンソンは言っている。物語では、サミュエルと不器用な牧師のパーソン(デヴィッド・ゼルナー)が荒野をうろうろ進んでいき、ふたりはペネロピと出会うが、そこから映画の文脈はまったく予想もしなかった方向へと進んでいく。「撮影が半分ぐらい進んだところで、まったく物語を見失っちゃって、どうなってるのかわかってなかった」とパティンソンは言う。サンダンス映画祭のプレミアで、彼は安心した。「何かがわかるたびに驚いた」と彼は言う。「誰かがちゃんと管理してたんだってわかったから」

『Damsel』は男性的な西部劇が崩壊して新たに構築され直し、フェミニスト的な傾向の物語へと進んでいく。#MeToo時代の影響も加わっているだろう。このムーブメントは映画の撮影終了からかなりあとに登場したものではあるが。

「報われない愛の物語がぜんぜん違うものに変わるっていうのは、いつもおもしろいなって思う」とパティンソンは言う。「ふつうにいけば、かなり悲劇的な物語として表現されるんだよ。でも、もし自分が報われない愛の対象だとしたら、実際ほんとにいらいらさせられるよね、特に、相手がそれを止める気がないときは。それについては男性でも女性でも罪なことだと思う」

けれども、パティンソンはプロジェクトを選ぶとき、訴えている内容やポリティカルコレクトネスを基準にするようなことはしないという。「映画の中の典型は好きじゃない」と彼は言う。「そういうのはつまらないと思う」 彼は「男性の視点(Male Gaze)で語られる典型的な物語の流れ」を見るのはもういいだろうと感じてはいるが、「男性のキャラクターと女性のキャラクターを入れ替えただけの映画もたくさんある」ことには気をつけなければならないとも言う。

彼はこう説明している。「こういうことのポイントが何になるのかはよくわからないけど、僕は、すべての登場人物に複数の側面があって、オリジナルな脚本をいつも探してる。どんなものよりもまず新しいものを楽しみにしてるんだ。自分の世界観をただ補強するだけのものを見つけたいとは思わない」

“トワイライト”後のパティンソンのキャリアは、こういった判断に裏づけされている。この6年間で、彼は異色のプロジェクトに幅広く出演してきた。どの作品をとっても似たものはない。デヴィッド・クローネンバーグの2作品、デヴィッド・ミショッドの一風変わったポストアポカリプス西部劇『奪還者』、ヴェルナー・ヘルッォークの『アラビアの女王 愛と宿命の日々』、ブラディ・コーベットの『シークレット・オブ・リトル・モンスター』、ジェームズ・グレイのジャングルアドベンチャー『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』、そして、サフディ兄弟の『グッド・タイム』。彼は、さまよう人、愚かな者、犯罪者、プレイボーイなどを演じてきた。彼はまだ始まったばかりだ。


ロバート・パティンソン James Gourley/REX/Shutterstock

今年、パティンソンはクレール・ドニの『ハイ・ライフ』に出演する。
ベテランのフランス人監督が初めてSFの分野に挑む、野心的なプロジェクトで、芸術的な宇宙の旅だ。「こないだラフカットを観たんだけど、すごいと思った。すごくへん」と彼は言う。「みんながどう思うか、すごく楽しみ」

また彼は、『The Lighthouse(原題)』の撮影を終えたところだ。ニューイングランドを舞台としたホラー映画『ウィッチ』の監督、ロバート・エガースの第2作目となる。撮影は、舞台となるアメリカ、メイン州の代わりに、カナダのノバスコシア州で行なわれ、白黒の16ミリのフィルムが使用された。20世紀初頭の灯台で起こる奇妙なできごとを描いた物語だ。「ほんとうにたいへんだった」とパティンソンは言う。「人生であんなに長い時間を雨の中で過ごしたことはなかった。そのシーンのあとのこのシーンのあともそのまた次のシーンも、とにかく2ヶ月ずっとずぶぬれだった」 彼は、工程の初期段階の映像のいくつかを見て、それを証明できたと思った。「かなり狂ってると思う」と彼は言う。「いくつかのシーンしか見てないけど、でもバスター・キートンの映画みたいな見た目だよ」

数週間後には英国を離れて、デヴィッド・ミショッドの最新作で再び彼と一緒に仕事をすることになっている。そのあとも、実現することを願っている進行中のプロジェクトがいくつかある。その中には、シルヴェスター・スタローンと共演の犯罪ドラマ、オリヴィエ・アサヤスの『Idol's Eye(原題)』もあるが、このプロジェクトは2年以上先だと伝えられている。

「6ヶ月とかそれぐらいごとに、復活しそうになるんだけど」とパティンソンは言っている。「この前オリヴィエに会って、この話をしたんだ。ちょっと予算がかかりそうなもののひとつだけど、でも素晴らしい脚本だよ。ほんとに壮大な、180ページぐらいあるみたいな」

新進の英国の監督、ジョアンナ・ホッグの二部編成の長編映画『The Souvenir(原題)』の第2部への出演も望んでいる。「これはとてもとても野心的なプロジェクトなんだよ」とパティンソンは言う。「1~2週間くらいのうちに第1部が観れるといいなと思ってる」

また彼は、友人で、BORDERLINE FILMSのアントニオ・カンポスとも『悪魔はいつもそこに』で初めて一緒に仕事をすることになっている。戦後数十年間にわたっての物語を描いたドラマで、「また違ったサイコパスの役」を演じることになるプロジェクトだと彼は言う。彼は笑って、「そういうのを演じるのは楽しそうだよ」と言った。




----
*リンク先、英文です。




確かに、『Damsel』と『トレジャーハンター・クミコ』は言われないと同じ監督の作品だとはわからないと思う。『トレジャーハンター・クミコ』もすごくへんでいい、これもまた妄想と狂気の映画でした。オリヴィエ・アサヤスはジャン=ピエール・レオの出演作品も撮っている監督。ヌーヴェルヴァーグとの接点にわくわくどきどきする……! 『Idol's Eye』、実現してほしいです。ジョアンナ・ホッグの『The Souvenir』の第2部への出演は実現しなかったんですね。『TENET テネット』の撮影スケジュールの関係だとか……でも、これが実現していたら、私はロブの演技に出会うこともなかったわけで……あー、タイミング!



----
No copyright infringement intended.