予測不可能であり続けるためにロバート・パティンソンがやることは? | CAHIER DE CHOCOLAT

予測不可能であり続けるためにロバート・パティンソンがやることは?

[ORIGINAL]
What Can Robert Pattinson Do to Keep You Guessing?
By Kyle Buchanan Oct. 17, 2019
https://www.nytimes.com/2019/10/17/movies/robert-pattinson-the-lighthouse.html



予測不可能であり続けるためにロバート・パティンソンがやることは?


“トワイライト”後、パティンソンはアートハウス映画で自分自身を再構築してきた。『The Lighthouse』でこれまでで一番激しい役を演じ、これから彼はどうなっていくのだろうか? それに加えて、もうひとつ別の方向性の変化もある。彼はバットマンを演じるのだ。



大作への出演にともなうスポットライトはもう心配していないと彼は言う。「僕はもうそういう歳でもないし、おもしろくないよ。腹筋の線が出てるのも、まあ、年に2週間くらいだし」 Ryan Pfluger for The New York Times


ロバート・パティンソンは、中世を描く壮大なNetflix作品『キング』の敵役、フランス軍を率いるドーファンを演じる契約にサインしたとき、これがおいしい役だとわかっていた。ティモシー・シャラメを挑発して、いらいらさせるという楽しみがあるのだから。それでも、自身の演じるキャラクターについてははっきりと決めていなかった。王室の純粋な娘を演じるリリー=ローズ・デップのヘアメイクの写真を見るまでは。

「『僕もプリンセスをやりたい』みたいになった」とパティンソンは言う。

ヘアスタイリストは降参して、長いはちみつ色のウィッグを彼に渡した。しかし、パティンソンはもうひとつ驚きを隠し持っていたのだ。撮影現場で、彼は素晴らしいフレンチアクセントを披露した。彼の登場シーンが、これ以上奇抜でこっけいにはなり得ないほどの衝撃だった。最初は「ちょっとわからなかった。これはばかばかしいかな?とか思った」とパティンソンはその時のことを思い出して言う。けれども、最初のテイクのあと、共演のジョエル・エドガートンはおなかがよじれるほど大笑いした。「それで、思ったんだ。『これはいい! これは最高だ!』って」

現在33歳のパティンソンにとって、予想を裏切ることより好きなことはあまりない。メガヒット作の“トワイライト”シリーズが2012年に終了したあとは、多くの予想や期待が彼にかけられた。しかしそれ以降の彼は、監督のミューズとして自分自身を再構築してきた。ちょっと変わったことをやってみようという精神やゾクゾクするようなポップカルチャー的なスリルを、クレール・ドニ、デヴィッド・クローネンバーグサフディ兄弟といった監督たちのアートハウス映画に加えてきた。

彼の常識にとらわれない直感は今も変わらない。それが最も表われているのが、『The Lighthouse(原題)』だ。ロバート・エガース監督(『ウィッチ』)の新作映画となる狂気のダークコメディで、パティンソンは19世紀の灯台守を演じ、ウィレム・デフォーを相手に、酒を飲み、口論し、叫び、さらに、抱き合う。ノバスコシアでの撮影は骨の折れる仕事だった。パティンソンのふつうとは言えないアプローチ(テイクの前、気持ちを高めるためにのどをつまらせたり、自分で自分の顔をなぐったりする)がエガースやデフォーを驚かせることも多かった。



それでも、パティンソンはその緊張感が役に立つと思った。「たとえ感じているのが怒りだとしても、退屈よりはおもしろい。その怒りを使えるからね」とパティンソンは先日、ウェスト・ハリウッドのホテルで話していた。そこは、『The Lighthouse』が各賞の投票を行なう人々を前に上映された場所だった。

ここ数年間、インディペンデント映画に出演してきたパティンソンだが、今後はまた違った方向転換をすることになる。現在はクリストファー・ノーラン監督の夏の超大作、『TENET テネット』の撮影中で、さらに『ザ・バットマン』の主役にもキャスティングされたところだ。バットマン最新作は2021年公開予定となっている。「これまでやってきた映画とはまったく違う経験だよ」とパティンソンは言う。「ふつう撮影は6週間のところ、今のは6ヶ月だからね!」

ここからは、彼との会話の一部をお届けしよう。



パティンソンはバットマンを演じることにナーバスになってはいないと言うが、「撮影までまだ何ヶ月かある。パニックアタックを起こす時間はまだたくさんあるよ!」と加えている。 Ryan Pfluger for The New York Times


- あなたはエキセントリックな役に魅かれるといってもいいのでしょうか?

いつも思うのが、いい人を演じていたいと思うのは、自分が現実世界でやってることをどうしようもなく恥じてるっていうだけだから。逆に、かなりふつうの人間だったら、映画でやるのに一番楽しいのは、自分の中のもっとグロテスクだったり、ちょっと悪いことしたいっていうような側面を、ある程度安全な環境の中で、探ってみられるっていう役。そこにいる人たちに衝撃を与えられたら、絶対もっと楽しい。おもしろみがないことになったら、それは最低最悪だね。

- 以前はおもしろみがなかったと思いますか?

いつでも、自分で自分をつまらなくすることもできてしまうんだよ! 『The Lighthouse』では、17テイクのうち2テイクはふつうにやって、それ以外のは、あさっての方向にサイコロを転がすみたいにしてやってた。でもそのほうがおもしろい、計画を立てて、それに合わせてやろうとするよりも」

- 『The Lighthouse』の撮影初日はどういった感じでしたか?

えーと、最初の撮影は、あの激しいマスターベーションのシーンだった。撮影初日はいつもものすごいのをやるのがいいんだよ。最初のテイクでほんとに激しいのをやった。リハーサルでやったのとぜんぜん、180度違ってて、そのあとロバート(・エガース)がちょっとショック状態になってるのが見えた。でも僕は、「オーケー、いいね、ストップって言われなかったよね、だからこの方向性でいこう」みたいな感じだった。あれをやったあとすぐに、進む方向が見えてきたような気がした。



『The Lighthouse』撮影現場でのパティンソンと監督のロバート・エガース。 A24


- リハーサルでは役を解放することができないと感じるのはなぜですか?

毎回違うやり方でやりたいんだ。30回リハーサルをやるんなら、30通りのやり方を考えないといけない。もし最初のやり方がベストだったとしてもね。2回目のテイクを1回目のテイクとまったくおんなじようにやるのがとにかく嫌いなんだ。クビになっても仕方がないかもしれないけど。

- 同じようにやるのは、あなたにとっては何か間違っている気がするということですか?

単におもしろくないからだよ! だって、リハーサルが大好きなとてもいい俳優の人たちもたくさん見てきたし、だから、いい部分もある。でも、撮影をしているときには全力で取り組むっていうことにも何かがある。やるのか、死ぬのかっていうときだから。そうすると、もっと自由になれる。それか、たぶん僕が単になまけもので、撮影の日までやりたくないだけかもしれない。

- 『The Lighthouse』を最初、コメディだと感じましたか?

脚本を読んだときは、めちゃくちゃおかしいと思ったけど、『ハイ・ライフ』(受刑者たちがブラックホールに送られるという、宇宙を舞台にした作品)のときもそういう感じだった。クレール・ドニと一緒に完成した映画を観て、笑いすぎてちびってしまいそうなぐらいだったよ。正気じゃない、あの映画は。でも、『ハイ・ライフ』の初上映のとき、観てるみんなは死んだみたいに静かだった。僕は、「ええっ、誰もこれがばかげてるって思ってないんだ」みたいになってたよ。

- みんなアートハウス映画だから、おかしいはずがないと思っているのでしょうね。

だから心配してたよ。もし『The Lighthouse』がコメディだって言われなかったら、笑って観たらいけないってみんな思ってるのかもしれないって。前は映画をやるのはテストを受けるみたいなものだって思ってて、ちゃんとやらないとっていうプレッシャーがすごかった。でも今は、その反対側にふり切れちゃってる。すごく楽しくなるはず、って。そういうふうにやれば、もっと楽しめるし、最終的にうまくいくんだよね。楽しくするっていうのが、ほんとにすべてを変える。



パテインソンは、『キング』で共演したリリー=ローズ・デップのヘアメイク写真を見るまでは、自分の役をどう演じたいかはっきりしていなかったという。(見たあとは)「『僕もプリンセスをやりたい』みたいになった」 Ryan Pfluger for The New York Times


- 現在は、クリストファー・ノーラン監督の次回作を撮影中で、そのあとは『ザ・バットマン』の撮影も始まります。アートハウス映画から大きなスタジオのブロックバスターへの移行をどのように感じていますか?

でも、『ダンケルク』はアートハウス映画みたいなものだよ! クリス・ノーランは文字通り、まさに数億ドルの予算でアートハウス映画を作れる監督だから、スタジオものって感じはあんまりしてない。『ザ・バットマン』は、何年か前だったら、ものすごいナーバスになってたと思う。でも、まだ撮影まで数ヶ月あるから。パニックアタックを起こす時間はまだたくさんあるよ!

- 以前は、スーパーヒーローをやりたい俳優は疑わってみるべきだと言っていましたが、今回、バットマンをやることになっていますね。

バットマンはスーパーヒーローじゃないけどね。彼は複雑なキャラクターだよ。ほんとうの意味でのヒーローができるなんて思ってない。絶対何かかちょっと違う感じになってしまう。僕は片方の目がもう一方のより小さいからだと思う。

- バットマンで楽しみなことはなんですか?

監督のマット・リーヴスが大好きなんだ。それに、バットマンはドープなキャラクターだし。彼のモラルはちょっと外れてる。ほかのコミックスのほとんどのキャラクターみたいな人気者とは違う。彼の世界観はシンプルだけど、なんか奇妙なところがあって、それがキャラクターに考える余地を与えてる。

- 今、何か言いかけて止めましたね。

単に『ザ・バットマン』について何か言うのが恐いんだよね。オンラインの人たちが「それってどういうこと?」みたいになるから。知らないよ! 前は自分で自分の言うことを検閲するのがかなりうまかったけど、ここ何年かはすごくたくさんばかみたいなことを言ってる。だから、こういう映画のプロモーションをやるときは、何回わけがわからないことにしてしまうんだろうって思う。どの公開される映画にも、僕が言ったひとことがくっついてくるんだよ。「どのようにして、どういった種類の体外離脱体験が、あのナンセンスな叫びになるのか?」みたいな。

- バットマンとしてキャスティングされたあと、オンライン上の辛らつな反応は予想していたと言っていましたね。

たぶん、暴言みたいなものにもう慣れてしまったんだと思う。少なくとも、今回は死の恐怖は感じてないし。それはいいことだよ! “トワイライト”にみんなものすごく怒ってたのがおかしい。僕はあんまり理解できなかったけど。



パティンソンはエキセントリックな役を好む。「いい人を演じていたいと思うのは、自分が現実世界でやってることをどうしようもなく恥じてるっていうだけだから』 Ryan Pfluger for The New York Times


- 女性向けに制作されたシリーズの主演俳優に怒りを向ける男性もいますね、「僕のガールフレンドがあいつを好きだから、僕は嫌いだ」といったように。

なんでそういうふうに感じるのかを考えたほうがいい。きっと、深く自己分析するときなんだよ。「理解できないことをなぜ恐れるのか?」って。でもまあ、すごい奇妙だよ。“トワイライト”関連のことはぜんぶ奇妙だった。通りを歩いてても誰にも気づかれなかったのが、あの4年間で変わってしまった。

- また大作に出演するのは心配ですか? あのときのようなみんなから見られる生活を再び人生に招き入れることになるかもしれません。

僕はもうあの時みたいに若くないし、おんなじようにめちゃくちゃにはあんまりならないと思う。もっと若かったときは、パパラッチで頭がおかしくなりそうだった。どこかから出てきたら、みんな罵声を浴びせてくるんだ。でも、あの時のような感じに戻るとは思えない。みんなもうあんまり気にしてなくない? ゴシップマガジンもなんかなくなっちゃったよね、みんなInstagramとかそういうところに載せてるし。

- あなた以外のみんなはそうですね。

まあね、僕はもうそういう歳でもないし、おもしろくないよ。腹筋の線が出てるのも、まあ、年に2週間くらいだし。





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*リンク先、英文です。




『キング』の「プリンセスになりたい」やフレンチアクセント、ヘンリーとの対決シーンの話はこちらにあります。デヴィッド・ミショッド監督とフォルスタッフ役のジョエル・エドガートンが出ている下の動画では、監督がドーファンについて語っています。かんたんにですが、その部分だけ。「ロブは『奪還者』でのボールカットが嫌いだった。ドーファンはピンキーリングもつけていたし、その小指でロングヘアーを触る動作もキャラクターの一部だった。あのキャラクターで100%いいと思ったし、ロブが作り出したキャラクターをとても気に入っている。衣装やヘアメイクなども含めて色んな側面から考えられてる。ばかげたフレンチアクセントで『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』みたいになるんじゃないかっていう恐怖もあったけど、それと同時にある種、ドーファンはばかげたキャラクターにする必要もあった。彼は、へんな人でいるために、ティモシーをいじめるために、あの映画にいる。だから大げさなぐらいへんなのがよかった。その下に何かがあるみたいな必要もなくて、ただいらいらさせるためにいる」といったような話でした。監督、いいな。つき抜けてて。『キング』また観たくなってきました。





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