天才画家ダリ 愛と激情の青春(Little Ashes) | CAHIER DE CHOCOLAT

天才画家ダリ 愛と激情の青春(Little Ashes)

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小さいころ、父が持っていた画集が本棚に並んでいた。ひとりの画家につき1冊、全部で何冊あったかも覚えていない。でも、その正方形の分厚いボール紙のケースに入ったたくさんの画集の中でも、私が開いた回数が一番多いのは間違いなくダリだった。ただ眺めるのが好きなだけでダリ自身については、あの重力に逆らったヒゲが印象的な顔ぐらいしか知らなかった。これだけ色々なことが気になるタチなのに(気になるだけで調べたとしてもたいして知識にはなっていないけど)、なぜ今まで一度も調べてみようという気にすらならなかったのか。でもへたに知らなくてよかったと、この映画を観て思った。映画だから完全に事実に即しているとは限らないというのはわかっている。でも最後、私は号泣した。ワインを飲んでいたから酔っているというのもあるけど、それにしてもしばらく止まらないくらい泣いている。今も泣きながら書いている。mariconということばを私は知らなかった。誰が誰を好きになろうとそんなの自由じゃないか。なんなら誰でなくても何でもいい。悲しくて、やるせなくて、どうしようもない無力感に襲われる。涙が止まらないし、こんなの感想になっていない。でもちょっと感想っぽいことを書くとしたら、ハビエル・ベルトラン(フェデリコ・ガルシーア・ロルカ役)のせつなくも穏やかで意思の強い眼差しとロバート・パティンソン(サルバドール・ダリ役)の瑞々しさに尽きる。少しずつわかり合う距離感、ふたりで過ごす浜辺、それぞれが創作活動に励むひとつの空間。いわゆるダリの顔になったあともフェデリコとふたりになったときにはあの繊細な青年が瞳の中に見える。こんなに泣いていたら、明日はまぶたがはれているだろう。頭が痛いかもしれない。まあ休日だし、別にいい。またダリの画集を開こうと思う。