Vermont: hard & soft, partnership & solo project | CAHIER DE CHOCOLAT

Vermont: hard & soft, partnership & solo project

[ORIGINAL]
Vermont on why hard is better than soft, and how their partnership contrasts with their solo projects
By Future Music a day agoTech
http://www.musicradar.com/news/vermont-on-why-hard-is-better-than-soft-and-how-their-partnership-contrasts-with-their-solo-projects


Vermont:なぜソフトよりハードが良いのか、そして、ふたりでの共同作業はソロプロジェクトとどれほど対照的なものなのか


エレクトロミュージックでよく知られているドイツのふたりが、ダウンテンポの贅沢な喜び『Vermont Ⅱ』を制作するために再始動する。


おそらく、DJ、あるいはプロデューサーとしてのそれぞれのスキルで、彼らはよりよく知られているだろう。――Marcus Worgullは、フロアで人気のアーティストが多く作品をリリースしているInnervisionレーベルで、Danilo Plessowは、もうひとりの彼ともいえるMotor City Drum Ensembleでのファンク色の濃いハウスで―― しかし、ふたりがVermontとしてひとつになったときは、テンポを落とし、ヴィンテージシンセのほこりが払われ、うっとりするような幻想が創り出される。

2014年、彼らのデビューアルバム『Vermont』は、多くの賞賛を得た。PlessowとWorgullはコラボレーションを楽しみ、続く『VermontⅡ』の制作を進めていった。1曲目の“Norderney”の物憂げなリフレインから、アナログのアルペジオや華やかなストリングシンセが素晴らしい“Chemtrail”や“Ufer”まで、『VermontⅡ』は、Tangerin Dreamのエコーや初期のドイツのシンセサイザーのパイオニアたちのコズミックミュージックと並んで、午前5時の至福の時間のようだ。

Music Raderでは、Marcus WorgullとDanilo Plessowに、専門的なことや『VermontⅡ』がどのようにして制作されたのかを聞く機会を得た。

――最初のコラボレーション『Vermont』は、Daniloのケルンのスタジオで制作、録音されたものでしたが、『VermontⅡ』も同じ場所で作られたのですか?

Danilo:いや、実は僕はアムステルダムに引っ越したから、今回のアルバムはそこのスタジオで。機材は全部同じではないけど、80%くらいは同じかな。Vermontの背景には、直接会ってコラボレーションするっていうコンセプトがあって。環境や考えをシェアできる場所でね。

――決まった役割というのはあるのですか? それとも、その時々によって、トラックごとに必要なことをそれぞれがやるといった感じなのでしょうか?

Marcus:特に決めてることとかそういうのはないね……ただ会って、始めて、シェアして、っていう。どういうふうなのがいいか、いつもすごく早く決まるよ。そんな感じでやってる。ほとんどのトラックはかなり時間がかからないでできる。メロディはシンプルだし、考えすぎることもないし。

――『VermontⅡ』はヴィンテージ機材が大集合したお祭りのようですが、その音楽の中には「少なければ少ないほど良い」という本物の感覚があり、また、ほっとひと息つける感じもあります。それは意識して決められたことなのですが?

Marcus:特に意識してることじゃないよ。――流れとか、どんな感じがするかで決めるんだ。いい感じだったら、進める。特別なコンセプトとかそういうのは、何もないんだよ。いい感じだと思ったことをやる、気に入ったことをやる、それだけだよ、ほんとに。

Danilo:それぞれのソロプロジェクトから自由になって、プレッシャーも、先入観も、期待もない。僕がMotor City Drum Ensembleで感じるような、ね。MCDEではいつも考えすぎてしまって。「これでいいのかな?」とか「違う音を使うほうがいいかな?」とか。Vermontは、そんな瞬間から離れて、すごく自然に出てくる感じ。そうい点ではすごく幸せなことだし、僕にとっては休暇みたいなものだね。

――Vermontは、スタジオでは民主主義ですか?

Danilo:ものすごく民主主義。でも、僕からひとつ言えるとしたら、最初のコードの構造とかトラックのメロディの基礎とかに関しては、Marcusはたぶん僕より信頼できるってこと。だから、そこで、僕はFender Rhodesを弾いたり、ひとりで何かプレイしたりしながらやってる。いつもそうってわけじゃないけど、60%くらいはそんな感じじゃないかな。

――ふたりともクラブのダンスフロアを人々でいっぱいにすることでよく知られていますが、Vermontはアフタークラブ市場も独占しようとするものなのでしょうか?

Marcus:そうかもしれない!(笑) それはいいアイデアだね。僕らふたりがソロでやってる音楽とは正反対だけど、だからこそ、僕たちは会って、こういうタイプの音楽を作るのが好きなんだと思う。――自分たちが欲しいと思う音楽を作る自由と、その場所を持つことがね。それと、Daniloが言ったように、いい気分だって思うときは、それがいいってことを受け入れられてるっていうことだしね。

Danilo:僕たちふたりがいいと思う共通のものがあるっていうことがおもしろいよね。それぞれがソロでリリースしてる音楽を聴いたらぜんぜん違ってるから。Marcusと一緒に作業するのが好きなのは、ふたりの間を取って決められて、それは僕らのソロのキャリアとはまったく関係がないんだけど、すごく自由だなって感じられるところ。

――確かに、エレクトロミュージックを制作することはとても孤独な時間を過ごすということでもあるでしょうから、誰かと一緒に顔を合わせて過ごす時間があれば、すごくいいですね。

Marcus:そのとおりだよ。ひとりで音楽を作るときに一番難しいことのひとつは、決定することなんだ。というのも、今は自分の音楽をすごく簡単にどうにでもできるからね。一緒にスタジオにいて、もしどちらかが「これはだめだよ」とか「あんまり良くない」って言えば、それはやらないでおけるし、逆に、ふたりのうちのひとりがもうひとりのやることをいいねって言ったら、それをやる。そういうのが、僕たちにとってはやりやすいんだ。

――アルバムの制作に使われたヴィンテージシンセサイザーとアウトボードのうらやましくなるようなコレクションについて教えてもらえますか?

Danilo:僕の機材をメインで使ったから、僕が答えようか。全部にたくさん使ってるメインのシンセサイザーはARP Odyssey。ふたりとも70年代のMKⅡ Odysseyを持っているんだけど、僕のはARPフィルターバージョンで、Marcusが持ってるのはMoogフィルターの。Odysseyは、生きてるサウンドっていうことに関しては、僕が聴いたことがある中では一番音がいいシンセサイザーだと思う。基本的に、10回同じ音をプレイしても、必ずびみょうな違いがある――まさに呼吸だね。もうひとつ、全曲を通して使ってるのはRoland Space Echo。これを通してOdysseyを聴いたら、もう魔法だよ。Space Echoを通したFender Rhodesも、――Rhodesを微調整できなかったとしても――すぐにVermontにほしいと思うサウンドになる。

――Moog Prodigyも素晴らしくて、気づいてしまいますね。

Danilo:MoogはだいぶあとになってMarcusが手に入れたから、1曲にしか使ってないんだけど、でも、そのトラックではもうすべてがザ・Prodigyって感じになってる。

Marcus:ある朝、ちょうど友だちからもらって、スタジオでプラグインしたんだ。その時にプレイした、ほんとにその音を使ったんだよ。

Danilo:それから、Space Echoを通したProdigyを70年代の古いEventite H910 Harmonizerにもプラグインしてみたんだけど、ものすごくいい音だった。

Moogと同じように、僕のRoland Jupiter-4もたくさん使ったよ。これもまたすごくいい音のシンセサイザーで、気に入ってるJupiterだね。Jupiter-6も持っていたし、Jupiter-8もたくさんプレイしたけど、Jupiter-4に8vioceあったら、ポリフォニクシンセサイザーのオールタイムベストのひとつになるんじゃないかなと思う。Juno-6もアルペジエーターとしてたくさん使ってる。1曲目の“Norderney”の、あのトラックの最初のところのアルペジエーターは、Roland 909を通したJuno-6。あと、YAMAHA CS-15を使ってる曲もいくつかある……

Marcus:……パッドの音に最適なRealostic/Moog MG-1 Concentrate synthもあるよ。

――ヴィンテージシンセサイザーのサウンドが魔法のようになるのはなぜだと思いますか?

Danilo:ヴィンテージシンセはアナログだから、その理由は電圧。つまり、さっきも言ったんだけど、同じ音を10回弾いてもまったく同じ音には絶対にならないってこと。ほんとうのところを言うと、Vermontは80年代のサウンドではなくて、もっと70年代寄りで、だから、80年代のVCO synthとか、そうだな、Juno-6とか、今でもすごくいきいきと鳴ってるものだとしても、そういうのとARP Odysseyや、僕が最近手に入れた完全にポリフォニックでセミモジュラーのKorg PS-3200みたいな70年代のマシンは比較できないんだよ。ちょっととんでもない音が出るから。何をやってもサウンドが生きてる! 後期VCOとか、そのほかのモダンシンセサイザーだと、そういう種類の音楽性がちょっと足りない……うまく言えないんだけど。

――pre-MIDIの機材はどのようにして駆動させていますか?

Marcus:ARPにはCV/gateを使ってるよ。主にそれでメロディを見つけるんだ。パターンのいくつかをくり返すのに、MIDIも使ってる。

Danilo:健全なミックスだよね、ほんと。僕のJuno-6はMIDIがついていなくて、808か909で駆動させてる。自分でMIDIをつけたJupiter-4とMoogとかYAMAHAとかのそのほかのアナログ機材はそのままプレイして、できるだけタイトにキープできるようにしてる……僕たちはドイツ人だから(笑)

――あなた方をエレクトロミュージックに向かわせる何かがドイツ人のDNAの中に確かにありそうだということですね?

Danilo:タイトさのことは、まあ、ただのじょうだんだけどね。ソロでやってる音楽はもっともっとアメリカンファンクやソウルの伝統に根づいたものだから、そういう音楽はもっとゆるくて、揺れ幅がある。でも、Vermontでは、HarmoniaやClusterやKraftwerk、それからthe Dusseldorf School、そういうクラウトロック全部を集めた感じにしたかった。ほんとにきっちりしたタイミング。僕はドラマーだから、タイミングに関してはもうめちゃくちゃ真剣になるよ。1,000分の1秒でも何かズレてたら聴けないから!

僕たちが作業してたJupiter-4のクレイジーなアルペジオが入ってるトラックがあったんだけど、1回も完璧にリズムが合ったことがなくて、パーフェクトになるまでアルペジオのパーツを動かすのに5時間くらいかかったよ! ある意味、僕はタイミング・ナチってことなんだろうね……ちゃんと合ってないと聴いてられない。

――華やかなアルペジオとシンセラインの中にRobertのギターがいい感じに加わっていますね。

Marcus:あれは、RobertがたまたまDaniloとアパートをシェアしてる友だちで、ギターが弾けるからっていうだけだったんだ。彼は別の部屋でコーヒーをいれてて、ギターを加えたら、また別の要素をそこに持ってこれるだろうなって僕たちは考えてた。

ギターは超タイトに演奏しても違うんだよ。ファーストアルバムでもやっぱりギタリストがいたけど、Robertと一緒にやった今回のはもっとたまたまこうなった感じで、特に何も考えていなかったんだ。ただ、彼が部屋に入ってきて、弾いただけ。

Danilo:セカンドアルバムに取り組み始めたとき、もっとたくさんアコースティックの楽器を取り入れたいっていう思いがあったんだけど、アステルダムのスタジオだとそれができなかった。今の僕のスタジオだったら、アコースティックの楽器のためのスペースがあるから、次のアルバムではもっとそれを探求していくっていうのが、僕が絶対やりたいって思ってること。

僕たちは「ほんとうに自分たちのやったことをくり返したいのかな? 同じシンセサイザーを使いたいのかな?」って最初は考えてた。でも、最終的に、僕たちがほんとうに好きなサウンドっていうのがあって、そのサウンドはみんながVermontらしいトラックだって言ってくれるようなものなんだなって感じたよ。

――すべての電子機器の間での、アルバムにある“間”の感覚の話に戻るのですが、そういった種類の制作は、1曲1曲をDAWに入れていく時など、大変な作業なのでしょうか? そうでもないですか?

Danilo:Marcusは「いや、同じパターンでもう32小節打ち込もう。トラックには呼吸したり、余裕を持たせたりする必要があるからね」っていつも言ってる人。最初、僕はいつも「まじかよ」みたいな感じだったけど、それを聴いて、やってみるようにしたら、すごくよくわかるようになった。

――あなた方が使えるヴィンテージのアナログギアを全部使ったとして、さらにソフトシンセを使うところは、Vermontにはありますか?

Danilo:ううん……Cubaseだけ。今回の新しいアルバムは、僕が持ってる80年代のアナログデスクトップを使ってやった。Neveとか、そういう高価なのじゃないよ。珍しいドイツのメーカーのだけど、特別高いものじゃない。でもすごくいい音が出る。もともとは、テープに録音することやイコライザーやエフェクトを使うことも含めて、このアルバムは100%アナログでやりたいと思ってたんだけど、最終的に、アムステルダムのそのスタジオでやるにはちょっと難しすぎる、めんどうすぎるなってことになって。次のアルバムでは、ほんとうにできることになると思うから、どんなふうな音になるのかなってすごく楽しみ。

――Vermont以外でもCubaseを使っていますか?

Marcus:家では違うね。家ではAbletonを使ってる。アルバム制作の最後で、Cubaseからのオーディオパーツをひとつにするときに、ほんの少しだけAbletonを使ったんだけど、もともとのプラグインはぜんぜん使わなかったから、そんなに大きな違いはないと思う。僕はオーディオ信号が良かったら、それでいいよ。

Danilo:Marcusが言ってることでだいたい合ってるけど、僕はちょっとだけ違うかな。Abletonのタイムストレッチは使うべきじゃないと思う。そうでないと、最終的にはその音でなくなってしまうから。それが、僕がAbletonに問題があるって一番感じるところ。

――アルバムで、そのほかにもハードウエア・アウトボードは使っていますか?

Danilo:EventideのSpaceリバーブペダルはたくさん使った。あと、Bossのペダルをふたつ、それから、RhodesにElectro-HarmonixのSmall Stoneを。高級品は何も――Mutron Bi-Phaseとか、そういうのは使ってないよ。例えば、Space Echoを使って僕たちがよくやるのは、Sendとして使うこと。Fender Rhodesから直にSpace Echoにいって、それからアンプにいく。こうやったら、ちょっと違った感じの音になるし、たいせつなのは、もういじりようながいものが手元に残るっていうこと。それがそのサウンドの鳴り方で、その一瞬だけのもので、ソフトウエアの中でずっと調整していられるものじゃないっていうことだから!

個人的には、みんなイコライザーとかエフェクトのようなソフトウエアをもっと使わないようにしたら、もっと良くなると思う。だから、もうイコライザーで調節してあったり、エフェクトがかけてある、最終的な音を持っておくのが大好きなんだよね。そうすれば、基本的にソフトウエアはテープレコーダーみたいに使うだけになるから。

――自由な発想で作業をしたことがない人々、ルーティングとシグナル・チェーンといったものの違いがわからないかもしれない人々、そういった人たちもあなた方のようなサウンドを作ることができると思いますか?

Danilo:それはできるよ。僕はギターアンプを使う作業をたくさんやって、シンセやHonor String Melodyのようなものをそこに通すのもおもしろいなって思った。――そういう楽器をただアンプに通すだけで、かなり良くなるから。それに、それが以前の楽器を演奏するやり方だったんだし。あと、そこそこのマイクを持ってたら、それでもうパーフェクトだよ。

――Vermontのライブは実現しそうでしょうか?

Marcus:やりたいと思ってるよ。もしライブをやるなら、どうやってやるのがいいか、どうやって“ラップトップ”みたいな感じにしないようにするかっていうことは、ずっと話してるんだ。難しそうではあるけど、解決策が見つかればいいなと思ってる。でも、今はまだ見つかってないんだよね。



『VermontⅡ』はKompactから発売中。さらに詳しい情報やライブ日程などは、Kompaktのウェブサイトで。(*元記事はリンク切れていたので、リンク先はKompaktのトップにしています)





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『VermontⅡ』がリリースされたのは今年の2月10日、この記事が出たのは4月17日、なので、すでに4ヶ月近く前ということになります。このとおり、機材の話がめちゃ多いです。短いものや早くやりたいものを先にやったりもしていたのもあって、結局ものすごく時間がかかってしまいました。それでも、専門的な話のところは合っているかどうか……「ここ違うよ」とかあったら、ぜひ教えて下さい。それ以外では、ダニロの、ちょっと細かいところがあったり、話しててテンション上がってるのがわかったりするのがおもしろかった。「タイミング・ナチ」て。そこはドイツ人ならではの表現ですよね、きっと。今、日本語だと「タイミング・ポリス」とか「タイミング警察」っていうところでしょうか。あと、しきりに高価なものは使ってないと言っていたり、工夫すればおもしろい音は作れるというようなことを話してたりするのが私はすごく好きです。予算や状況からできないことがあったとしても、それをどうしようかと考えるところから、何か新しいことが出てくるはず、と私は信じたい派です。しかし、タイプの違ったふたり、楽しそうでいいですねぇ。私は基本ひとりでやってる人が好きなほうなのですが、ひとりでやってる人の集まりというのは大好きです。音楽は、こういう別ユニットみたいなのとかB2Bとか、そういう機会があっていいなあと思います。文章だとなかなか難しいですね。まあ、往復書簡やリレー小説ぐらいならできるかな(小学生の交換日記みたいです)。先日発売になった雑誌『MONKEY』では、柴田元幸さんと村上春樹さんが同じ文章をそれぞれ訳すというのをやってらして、とても楽しそうだった。とはいえ、そういったことをやる相手もなかなかいるものではないので、やっぱりうらやましい。そうだ、インタビューの最後、超だいじなこと言ってますけども。Vermontのライブ! 実現したら、行けたら、最高じゃないですか! どなたか解決策を……!



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