MCDE: Looking for Light in the Nighttime | CAHIER DE CHOCOLAT

MCDE: Looking for Light in the Nighttime

[ORIGINAL]
Motor City Drum Ensemble: Looking for Light in the Nighttime
AURORA MITCHELL / 28.04.16
http://crackmagazine.net/article/music/motor-city-drum-ensemble-looking-light-nighttime/




Motor City Drum Ensemble:夜の中に光を探して


「社会が、ほんとにどうにもならないくらい超自己中心的で、ハイペースで、くだらない方向に進んでいってるような気がする。Donald Trumpみたいな人たちがそういうのの完璧なアイコンだと思う」 Danilo Plessowはそう言う。土曜日の夜、マインヘッドのバドリング・リゾートの混雑したレストランで、私はMotor City Drum Ensembleであるその人と同席し、クラブスペースや政治にも関連してくる強烈なリアリティについて話していた。

食事を終え、どこかもう少し人の少ないところで話をしようということになった。Bloc.weekenderでの今夜のセットに出演するための宿泊先として用意されたシャレー(バンガロー)に向かって、私たちは歩き出した。彼は、今住んでいるアムステルダムからのフライトでこの地に降り立ったばかりで、興味深そうに辺りを見回している。――そこにはファミリー向けの遊具やゲームがあり、フェスティバルへ行く人々でごった返していた。――そういった人たちの多くは、彼を見るとすぐに誰だかわかったようだった。

Danilo Plessowは、トレンドであることを気にしたり、期待に沿うように迎合しようとしたりするDJであったことは一度もない。彼がこれからプレイするイベントにテクノが多いことについて私が触れると、彼は笑顔で言った。「関係ないよ、僕はゆっくりやっていこうと思ってる」彼はプレイ前の準備として、シャレーの中でラップトップを見返しながら、至福のelectroであるJames Stinsonの“The Other People Place to Hafi Deo”から、ピークタイムには欠かせない、人気のアフリカのシンガーソングライターTabu Ley Rochereauまでに及ぶトラックたちについてじっくり考えていた。

彼はすでに10年以上プレイしてきているが、そのセットは常に観客を音楽の旅へと連れていってくれる。soul、disco、houseから、jazz、そしてzouk(はねるようなビートが中心の音楽。80年代のカリブ海の島々にその起源がある)までも。「プレイしないといけないって感じるひとつのジャンルとかスタイルは、僕にはない」と彼はあっさり言う。「音楽を発見することは、僕にとって、いつもランダムなもの。レコードストアに行って、全部ごちゃまぜになってるレコードの箱とか棚とかがある、みたいな。そうすれば、どのジャンルからでも好きなものを選べるし、それがDJセットでもキープしようとしてること」

「いわゆるヒットと呼ばれるものに対して、抵抗とか何もないよ」 彼のDJのセレクションの中でよく知られている曲についても、はっきりと言っている。「どのDJも、エンドレスにショウでかけられる、頼れるレコードっていうのを持っているし、そういう曲はいつもパーティを救ってくれるものだから。もちろん、それを認めることを恥ずかしいとも思わない。ダンスフロアを救出するような、そういう一箱は絶対にあるし」

ここ数年で、いくつかのトラックがMotor City Drum Ensembleと強く結びつけられるようになってきている。――そして、そのためにそういったレコードはさらにレアになっている。そのひとつが、Gwen McCraeの大人気のdiscoレコード“Keep The Fire Burning”だ。BOILER ROOMでのMotor City Drum Ensembleの最初のセットでプレイされて以来、このレコードの価格は急上昇している。その影響は彼にかなりの衝撃を与えた。「最近、オーストラリアでプレイしたんだけど、その時、ひとりの女の子がやってきて、言われたよ。『あなたのせいでこのレコードが50ポンドもするレコードになっちゃたじゃないの、もう買えないし!』って」



クラッシックでレアなレコードについて話していると、リプレス文化とDiscogsインフレの話題になっていった。前者に関しては、彼は肯定的に見ている。しかし、後者については、あまり好ましいことだとは思っていない。「レコードレーベルとして、レコードの枚数を限定することはディーラーの都合のいいようになるだけだから」と彼は厳しく言った。「音楽は、手段がなくても、それでも所有したいと思う人たちがアクセスできるものでなければならないと僕は思うし……だから、それをもったいぶっていたいとか、リプレスしたがらないっていうのは、なんでなんだろうって思う」

3月、Danilo PlessowがPablo Valentinoと共に運営するMCDE Recordingsは初のリプレス盤、City People / 20 Belowの『It’s All In The Groove』をリリースした。1996年(最初にリリースされた年)以来ずっと、この心地良いdeep houseのレコードは彼のお気に入りだ。「彼(Irfain Rainy)のことはだいぶ前から知ってた」と彼は説明する。「UKから出た中で一番いいhouseレコードの1枚を彼が作ったっていうこともたまたまで、それで、両方のレーベル(Rainy City MusicとMCDE Recordings)をつなげようってことになって」 運良く、すべてがまとまった。City People / 20 Belowの条件と完璧にうまくまとまったのだ。――マスタリングから、パッケージング、リリースのタイミングまで。「こういう音楽にこんな大きな市場があるってわかるっていうことが、ほんとうに前向きなこと。20年前のレコードでさえも、ほんとにフレッシュで、ぜんぜん古くなっていないんだから」

彼自身の作品のリリースは、ここ数年あと回しになっている。そして、彼は「日々のことでいっぱいいっぱいだった」と認めている。彼は現在パリでアパートを探している。10年間で5つの都市に住んだ。どうやら、結束の強いところにずっといることで、閉所恐怖症のようになるのがあまり好きではないみたいだ。――彼は、シュヴェービッシュ・グミュントというドイツの街で育った。「僕の最大のヒットといえるレコードは全部、同じような趣味嗜好のプロデューサーや音楽に夢中な人たちの途切れることのない流れみたいなものにさらされていなかった頃にできたものなんだよね」

「独特の環境の中で作られたと感じられないものはリリースしたくない」と彼は続ける。「すべてのめんどうなことから離れて、スイッチをオフにして、ただ音楽だけをやる、そういう洞窟のようなものを作る必要がある、ヨガをやるみたいに――とても精神的なこと」

精神的なことといえば、Danilo PlessowはDekmantelのSelectorsシリーズの1枚目のコンピレーションアルバムを監修したのだが、その中にReverend Raphael Greenという牧師の作品が収録されており、そこにはリリースの許可を得るため、ミッソーリ州のセントルイスにある教会を訪れなければならなかった、という過程も含まれている。MCDEのセットをよく知る人々は、彼はStevie WonderやMarvin GayeやJohn Coltraneを聴いて育ったり、長い間、宗教的な知識の入った音楽を聴いてきたりしたのだろうと思っていることだろう。「ナイトライフで行なわれているすべての快楽主義的なことから今では切り離されている、とてもスピリチュアルでディープなこういう音楽をプレイするのはすごく奇妙にも感じる」と彼は語る。「でもそこで、博愛とか神の許しっていうようなメッセージや、そういったすべてのポジティヴさをダンスフロアに送り出すことができて、みんながそこからそのメッセージを聞いてくれたら、『みんなケタミンでハイ』とか言ってるトラックをプレイするのとは対照的に、ある意味もっといい場所を作り出せると思う」

DJのライフスタイル、深夜にはつきものの不摂生、幸福感などについて話すとき、彼はこう説明する。「それは常に背後にあることだけど、それ以上のことで――ドラッグをやって愚かになることもある、でも、ドラッグをやっても、ある価値はたいせつにするような、まともな人でいることもあるし」

3年前、Danilo PlessowはResident Advisorの動画を通じて、DJのライフスタイルの果てしなく華やかなイメージを公然と打ち砕いた。不安神経症であるということについてくわしく語り、それは、見る人々の多くを驚かせた。――また、そういった問題を抱えているのは自分たちだけではないと気づかせた。動画が公開されたあと、多くの人が彼にメールを送ったり、自分自身の話をしに直接彼に会いにきたり、話してくれたことに感謝したりした。「こういった種類の病気の人たちは、友だちに話すことができなくて。恥ずかしかったり、かっこ悪かったり、そういう思いをしたくないからね。もし支持してる人たちを持つ人物が思い切ってそのことについて話をしたら、自分の両親にも言えなかったような人たち、とても多くの人たちにダイレクトな影響があると思う」と彼は言う。会話の最後に、自分もかつては同じように感じていた、と彼は打ち明けた。「何年もの間、両親にもそのことを隠してたよ」

Danilo Plessowは現在はより良い状態になっており、ファミリー的な雰囲気のMCDE Recordingsの作業に集中したり、彼自身の新しい作品に取り組んだりしている。彼の次のリリースは、ある意味、出発だといえるだろう。“Raw Cuts”シリーズの作風を持つ最新作になる予定で、MPCやSP-12サンプラーをオープンリール式のカセットにのせる作業をしている、と彼は明かしてくれている。「ほんとにベーシックなhouseミュージック。そんなのが大好きで」と彼はにっこり笑って私のほうを見た。「もしうまくいったら、自分でもすごく気に入るものになると思う」


Motor City Drum EnsembleのSelectors001コンピレーションは5月23日、Dekmantelからリリースされる。

6月11日、12日、ロンドンのヴィクトリアパークで行なわれるField Dayに出演。





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このCrack Magazineの記事はサイトでリリースされる前に写真だけ先に見かけていて、楽しみにしていました。は~、めちゃめちゃかっこ良い~。紙媒体で入手したい、でもちょっと難しそう。ま、仕方ないか。内容としてはそこまで目新しいことはなかったですが、ずっと制作中と言っていた作品の姿が見えてきているのが嬉しいし、話を聞く感じだとサウンド的にもすごく楽しみ。City People / 20 Belowのリプレスの交渉に1年かかったという話は前にも出てましたけど、知り合い?友だち?だったとは! まあたとえ友だちとはいえ、それぞれみんな考え方とか違うし、そういうこともあって当然なのかも。友だちや知り合いだからといって、お互い100パーセント好みや考えが合うわけでもなく(そうだとむしろ気持ち悪い)、その辺難しい時もある。でも、自分に正直にいるのが一番なのだろうな、とか思ったり。周りに音楽関係者があまりいないときに作った、みたいに言ってるのは“Raw Cuts”のことですよね。確かに、これはわかる気がする。誰もいないから気にせず作れるというか。恐れるものもないというか。独特な環境のもたらすものっていうのもあると思う。都市と地方でも違ってくるし、もちろん国によっても違う。ダニロ自身のことばではないけれども、「結束の強いところにずっといることで、閉所恐怖症のようになるのがあまり好きではない」……ものすごくわかる。ああ、変わった環境が良かったら、日本どうですか、日本! ウエルカムですよ。(またこんなことを言っている) あ、そんなふざけたこと(いや、ふざけてませんけどもね)言ってたら、DEKMANTELから「Selectors発送したよ」のメールがきた! わーい。楽しみだ~!



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