MCDE ON HUMAN NATURE AND MONEY VIRUSES | CAHIER DE CHOCOLAT

MCDE ON HUMAN NATURE AND MONEY VIRUSES

[ORIGINAL]
MOTOR CITY DRUM ENSEMBLE ON HUMAN NATURE AND MONEY VIRUSES
14 September 2015
http://blitzkickers.com/story/motor-city-drum-ensemble-on-human-nature-and-money-viruses



Motor City Drum Ensembleが語る、人間の本質、そして、お金というものの持つ毒について。


人は、時に「ほんとうにクリエイティブであるとは?」ということについての疑いやためらいにとらわれてしまいます。皆同じ人間であり、同じものを望んでいる一方で、それぞれを日々取り巻く現実は、どのような課題を抱えているか、どのような経験をするかなどによってさまざまです。

私たちは、Danilo Plessow aka Motor City Drum Ensembleと、個人的に抱える問題をどのようにして音楽製作やDJとしての仕事に反映し、昇華していくかについて、また、パワフルなエネルギーやビタースウィートな誘いで人々をどこかへ連れ去ろうとする、とらえどころのない夢のようなエレクトロミュージックシーンの中で完全にまともでなくなってしまわないために、まともでいようとすることのたいせつさなどについて話をしました。

― 世界のさまざまな場所で音楽をプレイすることは、新たな自分を発見する機会を多く与えてくれますが、ここ数年間で、ひんぱんに(住む)街や目にする景色が変わることを通して、自分自身の変化に気づいたことはありますか?

たくさん旅をしているし、いろんな街に引っ越しもしてる。僕は自分が育った場所に自分自身を重ねて見たことはあまりなくて。僕の出身地はドイツの南の方の田舎なんだけど、そこはドイツの他の場所とは違うし、世界中のほかのどの場所とも違ってる。ある時、僕は自分の住んでる街に興味がなくなって、ベルリンに引っ越しして、でもそのうちベルリンにも関心がなくなっていった。年を重ねるにつれて、自分はヨーロッパの人間だなあと感じるようになってきているけど、特にこれが自分、みたいなものは何も持ってない。ただ人間、ってだけ。旅をしている間に学んだ素晴らしいことは、僕たちはみんな人間で、みんな同じものを望んでるってこと。

― 現代社会が進むペースのために、伝統や言語など、文化的価値のあるものが統合されたり、失われたりしていることについてはどんな風に感じていますか?

英語は世界中の人たちを理解しやすくしてくれているとは思う。でも、グローバル化することで文化のたいせつな部分が失われるのは好きじゃない。商業的にうまくいきそうにないとか、そういった理由でね。文化があるから人間性があると思うし。ファーストフードレストランがひとつの例で、オランダではファーストフードレストランが急激に増えてる。ひとつレストランが成功したら、支店を出して、フランチャイズ化する。レストランをオープンしてお金もうけしたいだけだったら、おいしい料理は作れないよ。音楽も同じ。ひともうけすることだけが目的だったら、ほんとうに何かを愛することはできない。お金のためにそこそこのものを作ることはできるだろうけど、それは芸術的なものや充実したものにはならない。

― これまでのキャリアの中で、芸術的な部分とビジネス的な部分をわけて考えなければならない時がありましたか?

90年代の後半から2000年代の始めにそういう時期があったね。もっとjazzyでクラブっぽくないものを作ってたときで。ロンドンの西にそういった音楽シーンがあって、それでまあ生活していけてた。でもだんだんその盛り上がりが下火になってきて、終息してしまって、最後には僕はなんにもないところに立ってた。その時22歳で、何かの勉強をするか、ほかのことをやろうって真剣に考え始めたりした。MCDEプロジェクトを始めて、出すものが売れ始めたから、運が良かったけど。今いるところにたどりつけるなんて思ってもいなかった。ほんとうに運が良かった。

自分自身に正直でいれば、自分のやっていることで幸せになれると思う。僕はこれまでの人生の中でずっと音楽を作ってきたし、これからも音楽を作っていく、たとえスーパーマーケットで働くことになったとしてもね。音楽が、僕にとっては、自分の気持ちを注ぎ込むものだから。

いわゆるアンダーグラウンドのエレクトロミュージックシーンにどんどんお金がつぎ込まれて、1枚レコードを出したら、すぐにマネージメントがつくようになってきてる。そういう人たちはタダでもらった新しいシンセサイザーと一緒に写った超華やかな写真をfacebookにアップしたりしてるけど、すべてのうしろにはたくさんの産業があるし、正直そういうのをずっと続けることはできないと思う。その時は多少露出が多くなったりはするだろうけど、それは長続きするものじゃない。

僕は今でもマネージメントをつけてない。僕個人としては必要ないと思ってるから。自分のやっていることをほんとうに愛していて、それを信じているなら、お金を貯めたり、レコードをプレスしたりするための作業にいくらかの時間をさくことはできるよ。それが売れれば売るし、もし売れなくても、その時は少なくとも自分が誇れるものを物理的に手にすることができることになる。でも、ただ「ここにいますよ、準備オッケーですよ、さあやりましょう!」とか言えばいいってものでもないけど。それじゃほんとうの音楽を扱う仕事にはならないし、アーティストを広告塔に載せることはできないから。

― では、アーティストの可能性の扉を開くのは、運といくらか根気のいる作業だと?

運について話すのもいいけど、でも、僕がいつも心に留めているゴールデンルールがあって。「自分の作るものを完全にするには10,000時間の実践が必要」っていう。それは、画家でも、車の製造でも、音楽でも、なんでもそう。そういう実際にやる時間が必要。自分の作るものに打ち込んでいるときは、小さな輪の中を旅してるみたいな感じで、同じような種類の人たちに会ったりもする。もし自分がまったくのダメなやつでなければ、そういったことも役に立つ。全部積み重なっていくんだ。自分のやってることに正直で、いつわりがないようであれば、それは自分に返ってくるし、みんなもそういうふうに見てくれると思う。

― 素晴らしい音楽を作り、人々とつながれるけれども、徐々に仲間や観客に対して傲慢だったり、失礼だったりといった印象を与えるようになるDJやプロデューサーの人たちがいますが、そういうことについてはどう思いますか?

自分っていうものを強く持っていないと、持っていかれてしまう、みたいなことはたくさんあると思う。病みつきになるようなことや誘惑もいくらでもあるから。ほんのちょっとのコカインがもっといいプレイをするのを手伝ってくれるとか思ったら、そのループにはまってしまって、そこから幸運は逃げていってしまうよ。ドラッグを使ったりしなくても、どのショウでも、感じるエネルギーのレベルはとてもパワフルだし、(ドラッグを使ったら、そのあとの)ダウンもかなり極限的なものだろうと思うし。

僕にとっては、オープンで、気分良くいて、楽しく過ごすことはたいせつなことだけど、そうでない人もいる。僕の最高のヒーローたちの中にもそうでない人はいる。もはやプライベートな時間はなくて、それでも意味のある音楽を作りたいと思う、っていう現実と折り合いをつけていくのはたいへんなことだよ。だから、こう、静かにしていて、いくぶん愛想のないふるまいっていうのは、現実から逃れるためのひとつの形かもしれない。ストレスがたまってるだけだったり、気分が不安定だったり、疲れていたりっていうこともあるし、みんなにハイファイヴしたい気分じゃないんだよ、っていうこともある。でもそうしてると、ある日突然、傲慢なDJのひとりだってみんなに言われるようになってしまうんだよね。

― 傲慢であることは、ある意味、成功とは結びつかないことだと思いますか?

僕は、DJを始めた時の気持ちで、地に足をつけていたいと思う。数人の人たちのためにプレイして、プロモーターの人と食事をして。高級なホテルとかいらない。そうやって始めたし、今もそうしてる。そう、前よりお金をもらえるようにはなったよ。でも、クロアチアの小さなフェスでプレイするのに、ストレッチリムジンで迎えにきてもらって、400kmそれに乗っていった人の話なんか聞くと、ちょっと気分が悪くなるね。それはDJに限ったことではなくて、どの仕事の、どんな人にもそうだけど。

― 目に映る景色が急速に変わるのと同様に、クラブやフェスで感じるエネルギーは受け止めるにはかなりの量だと思います。まだいけると思うときや休息が必要だと思うときはどのようにして感知していますか?

それについては、数年前にResident Adviserで特集してもらっているんだけど、そこでは、DJとしてどんなふうに旅をしているのかっていうのを見せるだけじゃなくて、僕に影響を与えてきているものが何かということについて話をしたくて。DJたちの間ではタブー視されるようになっていた不安障害っていうものについて話したかった。あのレポートのあと、自分も同じ状況だとか同じ問題を抱えてるって連絡をしてきた人がたくさんいた。中には有名なDJの人もいたよ。

何かを使いでもしなかったら、ひとりホテルの部屋でいつまでも待っていないといけない、いつ終わるともわからないような時間には頭がおかしくなってしまいそうだよ。最初は、飛行機で隣に座った人に話しかけるだけでもわくわくしてたけど、だんだんフライトの前になると異常な精神状態になるようになってきて、ただただ待っていることにすっかり消耗してしまう。

僕はそんなに強いほうでもないし、メランコリックな人間だし、かんたんに感情に持っていかれてしまう。そういうのをやっていることに上手く反映させて、昇華させるとことができていればいいなとは思うけど。でも、こうやってマシンみたいに制御してるのがいい。それは、僕がほかの人たちみたいに上手くこなせていないっていうことかもしれないんだけど。例えば、Dixonがやっていることは僕にはできない。もし1年に200のショウをやらないといけなかったら、屋根から飛び降りてしまうね。だからそういう(Dixonのような)人たちはすごく尊敬してるけど、自分ではできないってわかってる。この不安障害っていう病気は現代病だと思う。みんな働きすぎで、極限状態に体を追い込んでいて、最終的には治療や休息が必要になっているから。でも、選択肢はあまりない。不満を言いたいわけじゃないよ、贅沢な人生だと思う。素晴らしい人たちと知り合ったり、世界を見たりできているわけだし。

ただ、DJの生活はいつも楽しいわけでもない、ってこと。毎週末パーティで、ファンと飲んで、セックスして、みたいなのばっかりじゃない。もちろん、そういうのもクラブシーンの現実の一部ではあるけど、でも、いつもいつもそうやってたら、しまいには完全に疲れ果ててしまう。

僕らはただの人間なわけで、でも、まともじゃなくならないために必死でまともでいようとしないといけないくらいのたくさんの狂気にさらされてる。燃え尽きたみたいにどうしようもなくなってしまったあと、お金じゃないって決めたんだ。月に14もショウをやって、4年後に死人みたいになってる、もうそんなふうにはなりたくない。ほんとうに気に入ったショウだけをやるようにして、気持ちをラクに持って、自分のやっていることに愛情を失わないでいる方がいい。

― どうなってしまうかわからないから休みをとれないという人もいます。そういう人たちは、しばらくの間立ち止まって、それですべてを失ってしまうのが怖いようです。

先へ進めば進むほど、自分でも驚くようなことをするのはなかなかできなくなるし、「あー、前のレコードの方が良かったなー!」っていう頭の中の小人を黙らせるのも難しくなる。でもいつかは、ある時点でなんとかしないといけない。音楽っていうものを信じていたくて、あまりたくさんリリースしなかったこともあったね。僕は一時的なことのためとか、もっとたくさんショウをするためとか、そういうことのためにレコードをリリースしたくはないから。






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「自分のやっていることを信じて、正直に、愛情を持ってやっていきたい」そういったことをことばを変えては何度もくり返しているこのインタビュー、とても切なくて、とても強くて、大好きです。でもそれは、自分が好きなことだけをやるようにするとか、とにかく無理はいっさいしないとかっていうことではないと私は思います。burnoutしてしまうほどがんばってきた時期があるダニロだからからこそ、だと。できれば極限状態になる前に気づいてほしい、そうならないように「やばいかも」と思ったらちょっと止まるのもアリだよ、というメッセージは含まれていると思いますが。彼の価値観、ほんとうに好き。先日観た舞台『No.9』じゃないけど「人としては最低だけど、作品は最高」というのは、私の場合はありません。その人自体も好きでなければ、その作品も好きになれないし、その人自体の人間性に触れて「ちょっと違うかも……」と思うことがあったら、作品とも距離を置きたくなる。ほんとうの意味での芸術鑑賞としては、作った人の人となりとか度外視して、純粋に作品だけを楽しんだ方がいいのかもしれないけれど、私にはそれはできないし、それでいいと思っています。だから、私は彼の作る音楽や選ぶ音楽が大好きだし、もっともっと知りたいと思う。あ~、たまんないな~。もうなんか愛しいなあ~。





“you need ten thousand hours of practice to master your craft”




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